シャローレンジの釣りでは、ルアーが泳ぐ・動くということを「目で見て」覚えることができました。
ディープレンジのボトムの釣りでは、ルアーがボトムに当たる「感触」を頼りにルアーの泳ぎを理解することができました。
では、ミドルレンジでは、どのようにルアーの泳ぐ・動きを把握してシーバスにアプローチすることができるのか?
このページではミドルレンジのシーバス攻略法についてご紹介します。
最近の釣りメディアでは、釣りに関する情報がメーカーのために中・上級者目線で発信されるようになりました。ナチュラルリリースでは、ビギナー目線で語られることが少なくなった「釣りに関する『キホンのキ』」をビギナー目線で発信しています。
ミドルレンジとは?
第8回の記事で、ミドルレンジとは一般的に水深1.5m~3mまでのレンジのことをいう…ということをご紹介しました。
シーバスアングラーに意外に軽視されがちな超重要ファクターが『レンジ』です。レンジの攻略なくしてシーバスを釣ることはできません。仮に、レンジをまったく気にせずに魚が釣れた場合、それは偶然の釣果といえるかもしれません。[…]
ただ、このページでご紹介する”ミドルレンジの釣り”というのは、3mより深いディープレンジであっても、ボトム以外のディープレンジすべてに当てはまります。
そこで、このページでご紹介する”ミドルレンジの釣り”が当てはまるレンジは「水深1.5m〜ボトム手前の深さまで」という前提で記事を書いています。
ミドルレンジは最難関レンジ!
ミドルレンジのシーバスを狙うことは、シャローやボトムのシーバスを狙うことに比べるとはるかに難易度が上がります。
その理由が「捕食の難しさ」と「レンジキープの難しさ」です。
ミドルレンジは捕食が難しい
これはシーバスにとってのお話。
シャローレンジは、『水面』という、ベイトにとっては逃げ場のない壁が存在しています。
そのため、シーバスがベイトを追い詰めやすい場所といえます。
同じくボトムにも、『ボトム』というベイトにとって逃げ場のない壁が存在しているので、ボトムはシーバスがベイトを追い詰めやすい場所といえます。
また、そもそもボトムに生息している底棲魚は上に向かって立体的に逃げ回ることは多くありません。
つまり、シャローもボトムも、シーバスにとってはベイトを捕食しやすい場所なのです。
じゃあ、ミドルレンジは?ということを考えたとき、ミドルレンジは水面やボトムのようなベイトを追い詰める壁がありません。
したがって、シャローやボトムに比べると、シーバスがベイトを捕食する難易度が上がります。
そのため、ミドルレンジでシーバスを狙う場合には、シーバスが捕食できる範囲にきっちりとルアーを通してやらないとシーバスがなかなか口を使ってくれないと説明されます。
レンジキープが難しい
これはアングラーにとってのお話。
ミドルレンジのシーバスを狙うためには、ルアーを泳がせるレンジをしっかりとキープして、シーバスの捕食範囲にきっちりとルアーを通してやる必要があります。
でも、中層は、表層のようにルアーの泳ぎが目で見えたり、底層のようにルアーが泳いでいるのが感触で把握できたり…ということがありません。
中層でのルアーの泳ぎはすべて、アングラーのリーリングスピード・感覚・想像にかかっています。
つまり、ミドルレンジでのルアーの泳ぎはすべてがアングラーの腕次第ということ。
1秒でどのくらいルアーが沈むかという「水深の把握」、そのルアーをどれくらいのスピードで巻くとレンジキープができるかという「感覚」、そしてミドルレンジでの「ルアーの泳ぎを想像」することでしかミドルレンジを攻略することはできません。
何の手掛かりのない場所で水深をキープしながら真っ直ぐルアーを引くという難しさこそ、ミドルレンジが最難関レンジといわれる由縁です。
ミドルレンジはシーバスがスレてない
これは僕の感覚的な問題ですが…
シャローで見えシーバスを狙ってみてもルアーを見るだけで食わなかったり、ボトムをどれだけ叩いてもバイトすら得られないときに、とりあえずミドルレンジを上の方からザックリとルアーを通してみたら呆気なく釣れた…という経験が少なくありません。
レンジの幅を考えてみても、水深1.5m〜からボトムよりちょっと上の範囲まで同じアプローチ方法が通用するということであれば、”ミドルレンジの釣り”というのは相当な広い範囲を狙うことができるということです。
そうだとすると、シーバスの個体数が一番多いのはこの水深1.5m〜からボトムよりちょっと上の範囲というのは疑いようがありません。
シーバスの個体数が多いレンジであれば、ルアーにスレていない個体というのも必ずいます。
なので、”ミドルレンジの釣り”というのはシャローやボトムでシーバスが釣れないときに釣果をあげるための切り札になるアプローチ方法なのです。
ミドルレンジ攻略の3つのポイント
ミドルレンジはシャローレンジのようにルアーの泳ぎを目で確認したり、ボトムのように手に伝わる感覚を頼りにすることはできません。
ミドルレンジは目標物のほとんどないレンジなので、この3つのポイント↓をしっかりと意識して確実に実践できるようにする必要があります。
②ルアーの泳ぐ深さをキープする
③ルアーの泳ぎを想像する
以下ではこれらのポイントについてご紹介します。
ルアーの泳ぐ深さを把握する
“ミドルレンジの釣り”というのは、実際には水深1.5mくらいからボトムよりちょっと上までという、とても幅広いレンジに通用するアプローチ方法です。
その反面、1投ごとにルアーが泳いでいる深さを把握しておかないと、何らかの反応が得られたときに「どれくらいの深さで反応があったか?」ということがさっぱりわからなくなってしまいます。
そこで、”ミドルレンジの釣り”のときは、必ず1投ごとにルアーの着水から巻き始めまでのカウントを数えるようにします。
「何mくらいの深さ」というのを正確に把握する必要はありません。
「着水から15カウントのレンジで反応があった」という程度のことがわかればそれでいいです。
次のキャストで同じルアーを15カウント沈めてやればいいだけの話ですから。
「水深〇m付近でアタリがあった」ってことがわかるのであればそれが理想ですが、そこまで正確にわからなくても、「着水から15カウントのレンジで反応があった」という程度にわかれば、同じ水深を狙うことが可能になります。
ルアーの泳ぐ深さをキープする
ルアーの泳ぐレンジをキープするということは、”ミドルレンジの釣り”においてルアーの泳ぐ深さを把握することと並ぶ最重要事項です。
これは2つの理由から要求されます。
1つは、ルアーはまっすぐ横に引いてこないと魚が釣れないと一般的に言われています。
ルアーが斜め上に向かって浮き上がりながら泳いだり、斜め下に向かって沈みながら泳いでいるようではシーバスは釣れない…と昔から言われています。
…が、これは正直、僕にとっては半信半疑の情報です。
本当のところは魚に聞いてみなければわかりません。
「それはおかしい!」というわけではなく、あくまで「よくわからない」状態。
どちらかといえば、僕は2つめの理由が重要だと考えています。
ルアーのレンジキープが重要とされる2つめの理由はルアーのレンジをキープしていなければ反応が得られた水深がわからなくなってしまうということです。
どういうことかと言えば…
たとえば、着水後15カウントの深さでリールを巻き始めたとします。
レンジをキープしながらルアーが真っ直ぐ横に向かって泳いでいる場合には、アタリなどの何らかの反応があったときに「15カウントのレンジに反応あり」ということがわかります。
ところが、着水後15カウントの深さでリールを巻き始めたとしても、ルアーが泳ぐレンジがきちんとキープできず、浮き上がりながら泳いでいた場合、何らかの反応があっても「どのレンジで反応があったか?」ということがわからなくなってしまいます。
確かにリールを巻き始めたときは15カウントの水深だったけど、ルアーの泳ぐレンジをキープできなくて徐々にルアーが浮き上がっていたとすると、実際に反応があった水深は着水後10カウントくらいの水深かもしれません。
つまり、ルアーの泳ぐ深さがキープできていないと反応のあった深さがわからくなってしまうのです。
これらの理由から、”ミドルレンジの釣り”においてルアーの泳ぐ深さをキープするということは、ルアーの泳ぐ深さを把握することと並んで最重要事項といわれています。
ルアーの泳ぎを想像する
“ミドルレンジの釣り”では、実際にルアーの泳ぐ姿を目で確認したり、ボトムに当たる感触からルアーが泳いでいるのを把握する、ということができません。
ただ、シャローレンジであろうとミドルレンジであろうとディープレンジであろうと、ルアーが同じように泳がなけれシーバスを釣ることはできません。
そのため、”ミドルレンジの釣り”においては、ルアーが泳いでいる姿をしっかりと想像しながらリトリーブすることが求められます。
シャローレンジでは、どのくらいのスピードでリールを巻けばルアーがどのような泳ぎ・動きをするのか?ということを目で確認しました。
ディープレンジのボトムの釣りでは、手元に伝わる感触を頼りにルアーの泳ぎ・動きを把握しました。
“ミドルレンジの釣り”では、これまでに積み重ねてきた「見る」「感じる」という経験をベースにして、ルアーの泳ぎや動きを「想像する」ことが求められます。
Don’t look and feel, but imagine!
ここで注意しなければならないのは、アングラーに求められるのは”妄想”ではなく”想像”だということです。
ルアーに組み込まれた性能を何も知らない状態で水中でのルアーの動きをイメージするのは、”想像”というよりも”妄想”です。
いまキャストしているルアーが
「どれくらいのスピードで巻くときちんと泳ぎ始めるか?」とか
「巻きスピードをどれくらい速くすると浮き上がり始めるか?」とか
「巻きスピードをどれくらい遅くすると沈み始めるか?」とか…
このような、ルアーに組み込まれた性能を前提に、水中でのルアーの泳ぎを”想像“することこそがアングラーに求められるミドルレンジでのアプローチ方法です。
ミドルレンジ攻略のためのスキルをアップするには?
「ルアーのフォール速度をカウントする」とか「ルアーの泳ぐレンジをキープする」とか、言葉で説明するのは難しいことではありません。
ただ、これを実践しようと思うと、シーバスフィッシングの経験の長いアングラーでもそれほど簡単なことではありません。
そこで、これら”ミドルレンジの釣り”に求められるスキルをアップするためのちょっとしたコツをご紹介します。
ここでご紹介する方法をきっかけに、自分なりに意識的に継続して実践していくことが重要です。
フォールのカウントは一定のテンポで小刻みにする
「ルアーが沈むときのカウントを数えた方がいいよ」と伝えると、ほぼ100%の人が1秒1カウントで数えます。
1…2…3…って感じで。
これでも構いませんが、ルアーの種類によっては沈下速度が速く、1秒で1m近く沈むものもあります。
そうすると、カウントとカウントの間に幅ができてしまうと、1カウントのズレが大きな誤差になってしまいます。
この誤差を小さくするためにはカウントを小さく刻むことが有効です。
たとえば、1秒1カウントで数えていたのを1秒2カウントくらいの速さで刻んでみたり。
1秒何カウントでも構いませんが、カウントの刻み方がゆっくり過ぎると、レンジの把握がそれだけ難しくなってしまいます。
せめて1秒2カウントくらいは刻んだ方が、レンジを正確に把握することができます。
ちなみに僕の場合は1秒で3カウント近く刻んでいると思います。
1秒に引き直すと3カウント近く刻んでるんじゃないだろうか?という意味です。
レンジは〇mで把握する必要はない
シーバスの釣れたレンジやバイトが頻発するレンジを水深〇mくらいという感じで具体的に特定するアングラーもおられます。
それがある程度特定できるようになれば100点満点です。
でも、ビギナーの頃にレンジを「水深〇mくらい」として特定する必要はありません。
魚群探知機を見ながらシーバスがいるであろう水深を確認しているので「水深〇mくらい」というのを把握する必要がありますが、そうでない限りは
「シリテンバイブ73を沈めて16カウントくらいの深さでバイトが頻発する」
という感じでレンジの把握ができれば全然問題ありません。
ルアーごとの性能の違いを十分に理解する
実は、これが一番重要。
「ルアーの性能」と書いていますが、簡単にいえば、「ルアーがきちんと泳ぐ速度」や「ルアーが沈むスピード」をルアーごとにきちんと把握しましょう、ということです。
第〇回の記事で「ルアーに組み込まれた機能を駆使してシーバスのバイトを引き出す」ということをご紹介しました。
その「ルアーに組み込まれた機能」の最たる例が「ルアーがきちんと泳ぐスピード」と「ルアーが沈むスピード」です。
これをできる限り正確に把握することこそがミドルレンジを攻略するための鍵になります。
たとえば「シリテンバイブ73を16カウントほど沈めた深さでバイトが頻発する。だけどなかなかフッキングまで持ち込めない。」という状況で「じゃあ、今度はVJ-22でアプローチしてみよう」と考えたとき、VJ-22を何カウント沈めればいいのか?ということが問題になります。
シリテンバイブ73で16カウント沈めた深さと同じ深さまでVJ22を沈める必要があります。
でも、シリテンバイブ73とVJ-22では、そもそもどちらが沈む速度が速いのか?
重さはシリテンバイブ73が17gあるのに対して、VJ-22はデカカリシャッドと合わせて28gくらい。
明らかにVJ-22の方が重いけど、VJ-22にはデカカリシャッドが付いて水の抵抗も浮力も大きい。
そうすると、果たしてVJ-22の方が速く沈むのか?
…など、それぞれのルアーに組み込まれた機能をルアーごとになるべく正確に理解しておく必要があります。
そこで、ルアーがきちんと泳ぐスピードや、ルアーの沈むスピード、ルアーをレンジキープできる巻き速度をどうやって身につけるか、というこですが…
これは実際にルアーを泳がせる、沈める、動かすことでしか理解することはできません。
おすすめとしては、
①水深1~2mほどの岸壁
②ルアーをボトムまで沈める
③岸と平行にルアーをゆっくり引く
という方法でルアーの機能を理解することができます。
場所は、水深は1~2mほどでルアーがボトムまで落ちるのが目視できる場所で行います。
まず、ルアーをいったんボトムまで沈めます。このとき、ルアーがどのくらいの速度で落ちていくかをカウントします。
これをルアーごとに確認することで、「AルアーはBルアーの2倍くらいのスピードで沈む」とか「AルアーはCルアーより重いのに、沈むスピードはAルアーの方が遅い」というルアーごとの違いが明確になります。
そして、ボトムまで沈めたルアーをゆっくりとリトリーブします。
このとき、ルアーがガッツリとボトムにあたる感触がある場合には、そのスピードで巻くとそのルアーはどんどん沈んでいきます。
逆にルアーがボトムからすぐに離れて、それ以降ボトムに触れる感触がない場合には、そのスピードで巻くとルアーは徐々に浮いてきます。
ボトムに当たるか当たらないかの微妙な感触があるスピードで巻くことができるようになれば、そのルアーでレンジをキープすることができるようになります。
このようにしてルアーの機能を把握することができます。
古いルアーが好きなわけではない
最後に余談です。
僕がよく使うルアーを見た釣り友から
と誤解されたことがあります。
確かに、そのときの僕のタックルボックスに入っていたルアーは、20年近く前に発売されたルアーや、すでに廃盤になっているルアーが中心でした。
でも、決して古いルアーが好きなわけではありません笑
↑でご紹介したように、「ルアーの機能を理解して駆使する」ということを考えると、「知っているルアー」を使った方が圧倒的に有利だし、効率的です。
頻繁に新しいルアーを導入していると、いちいちルアーの機能を理解するところから始めないといけなくなって、釣りをする時間よりもルアーと戯れている時間の方が長くなってしまいます。
釣りで生活しているのであればそれでも構いませんが、そういうわけではないので、ルアーと戯れるよりもどうせならシーバスと戯れたいじゃん笑
もちろん、興味を惹かれたりアップデートできそうな気になるルアーがあれば使ってみますが、「とれあえず釣れるっぽいから使ってみた」的にルアーを試すことはあまりありません。
なので、結局のところ、手垢のついたよく知っているルアーに頼ってしまうので古いルアーがタックルボックスに入っている、というだけの話です。
くどいようですが、決して古いルアーが好きというわけではありません。
見る・感じるから想像の世界へ!
ミドルレンジの釣りでは、シャローレンジのようにルアーの泳ぎを実際に目で見たり、ボトムの釣りのようにルアーの泳ぎを感触によって把握するということができません。
そういう点では、ミドルレンジの釣りは、シャローレンジやボトムの釣りに比べると難易度がはるかに高いといえます。
その反面、ミドルレンジの釣りを覚えると、水深1.5mからボトムのちょっと上までという、とてつもなく幅の広いレンジでシーバスにアプローチをすることが可能になります。
水深が3mであろうと5mであろうと10mであろうと、シャローレンジとボトム以外にはすべて”ミドルレンジの釣り”のアプローチ方法が応用できます。
また、これだけ幅のあるレンジなので、イージーにルアーに反応するスレていないシーバスもたくさんいます。
シャローレンジでもボトムでも釣れないときの切り札と”ミドルレンジの釣り”でアプローチすることもあれば、積極的にミドルレンジでスレていないシーバスを狙いにいくのも面白いでしょう。
「見えないルアーの泳ぎを想像しながら操作することによってシーバスにアプローチをする」ということの醍醐味をぜひ体感してみてください。