最近はロッドの軽量化が進んだため、長めのロッドを薦められることが増えました。
その理由の一つとして「長いロッドの方がルアーが飛ぶ」ということが挙げられます。
ところで、長いロッドを使ったとしても、ルアーの飛距離が伸びるという実感を持てないアングラーも少なからずいるはずです。
このページでは、ロッドの長さと飛距離の関係についてご紹介します。
条件が同じならロッドが長い方がルアーが飛ぶ
一般論として、ルアーの飛距離にとって重要なのは
・ルアーの放出角度
です。
ルアーの初速とルアーの放出角度という条件がまったく同じであれば、(風速や風向等の条件を無視すれば)基本的には同じだけ飛びます。
じゃあ、「ルアーの初速等の条件がまったく同じであれば、ロッドの長さは飛距離に関係ないのか?」といえば、そうではありません。
たとえば、ルアーの初速とルアーの放出角度をまったく同じにして、リリースポイントだけを上下にずらしたのが下↓のイラストです。
2本のルアーの軌道は(コピペしたので)まったく同じものです。
しかし、軌道が同じだからといって、同じ地点にルアーが着水するわけではありません。
(なるべく自然に)この軌道を維持していくと、下のイラストのようになります。
リリースポイントが高い軌道の方が青色の矢印分だけもうひと伸びします。
つまり、まったく同じ軌道で飛んでいくのであれば、リリースポイントが高い方が、着水するまでにもうひと伸び分だけ飛びます。
長いロッドの問題点
一般論として、条件がまったく同じであれば、リリースポイントがより高い方がもうひと伸び分だけ飛びます。
しかし、ロッドは長ければ長い方がよく飛ぶ…といえない事情があります。
実は、ロッドが長くなればなるほどルアーの放出速度が遅くなる可能性があります。
ルアーを同じ初速、同じ角度で投げることができれば、ルアーは同じだけ飛びます。
そして、リリースポイントが高い方が、着水までの飛距離が少しだけ稼げます。
でも、通常、ロッドが長くなればなるほど、ルアーの放出速度が遅くなります。
そのため、「ロッドは長い方が飛ぶ」と一概にいえないのです。
ロッドが長くなるとルアーの放出速度が遅くなる理由
長いロッドは振り切れない
ロッドが長くなると、なぜ、ルアーの放出速度が遅くなるのか?
一つの理由として、ロッドが長くなればなるほど、ロッドをスムーズに振り切れなくなる、ということが挙げられます。
ロッドが長くなればなるほど、スイングするときにロッドに空気抵抗が生まれます。
この空気抵抗が、ロッドをスイングするときの邪魔になります。
また、ロッドが長くなると、その分ロッドが重くなります。
そのため、短いロッドに比べるとスムーズに振り切れず、ルアーの放出速度も遅くなります。
結果として、ルアーの飛距離が落ちることになります。
長いロッドは体力を消耗する
長いロッドのもう一つの問題点として、ロッドが長くなればなるほど、キャストを続けるのに体力が必要になる、ということが挙げられます。
9ft前後で100~150gくらいの長さ・重さのロッドを2時間も3時間も振り続けていると、どうしても体力を消耗します。
そして、ロッドが長くなればなるほど体力を消耗しやすくなります。
体力を消耗してスイングスピードが落ちてくると、ルアーの放出速度も遅くなります。
そうすると、ルアーの飛距離も徐々に落ちてきてしまいます。
釣行開始時には長いロッドで飛距離を稼げていても、釣行時の中盤から後半になると飛距離が落ちることは普通にあります。
このように、ロッドが長すぎるとルアーの放出速度が遅くなり、かえってルアーの飛距離が伸びなくなることがあります。
ルアーの飛距離に影響するその他の条件
人によっては
というアングラーもいます。
それはなぜか?
硬めのロッドの方が良い場合がある
たとえば、向かい風の状況で投げる場合。
10ftのMLロッドと9ftのMロッドでは、9ftのロッドの方が飛ぶことがあります。
それは、向かい風の状況では硬めのロッドの方が振り切りやすいという理由によるものです。
10ftのロッドだと、もともと空気抵抗を受けやすいうえに、MLクラスだと風を切り裂いて投げるのにやや心許ないです。
そのため、9ftのMクラスロッドの方がシャープに振り抜けてルアーの放出速度を上げやすい場合があります。
ミノー主体の場合は実感しにくい
ミノーというのは風の影響を受けやすいルアーです。
つまり、もともと投げにくいルアーです。
よほど上手なアングラーでなければ、そもそもルアーの飛距離にバラつきが生じます。
そのため、ミノー主体のアングラーは、ロッドの長さによる飛距離の違いを実感しにくいです。
逆に、(メタル系)バイブレーション主体のアングラーは、ロッドの長さによる飛距離の違いを実感しやすいでしょう。
このように、使うルアーによっても、ロッドの長さの恩恵を実感しやすいものと実感しにくいルアーがあります。
ロッドの最適な長さは体格とパワーで決まる
野球のバットやゴルフのクラブもそうですが…
人間が長尺物をスイングするとき、それを適正にスイングできる長さと重さというものがあります。
そして、適正な長さと重さというのはスイングする人の体格とパワーで異なります。
たとえば、投げ竿の場合、主流の長さは3.85m・4.05m・4.25mです。
この中で圧倒的にモデル数の多いのは4.05mです。
これは、日本人の平均身長やパワーを考えると、4.05mという長さが最も飛ばしやすいということを意味しています。
仮に、155cmくらいの人が4.25mの投げ竿で投げると、3.85mの竿よりも飛ばないということもあり得ます。
一般論として、「長いロッドの方がルアーが飛ぶ」というのは間違いではありません。
しかし、あくまで実釣においては、振り続けられる長さの範囲内でできるだけ長いロッドという意味にほかなりません。
最適なロッドの長さは、体格とパワーに合わせて選ぶ必要があります。
「長いロッドの方が飛ぶ」っていう実験動画を見たけど?
動画共有サイト全盛の昨今。
「ロッドの長さの違いよってルアーの飛距離は変わるのか?」的な実験動画を目にすることがあります。
これはこれで参考にして構いません。
ただ、参考にするにあたっていくつか注意点があります。
実験に使用するロッドの長さに注意する
まず一つが、実験に使用するロッドの長さです。
たとえば、6.0、6.5、7.0のロッドで比較する場合。あるいは、9.5、10.0、10.5のロッドで比較する場合。
短いロッドで比較した方が、飛距離に差が出やすくなる場合があります。
7.0ftくらいであれば、成人男性なら難なく振り切ることができます。
でも、10.5ftくらいになると人によってはシャープに振り抜きにくくなってきます。
振りにくいロッドでは、飛距離に関してはロッドの長さによる恩恵が小さくなります。
実験で比較しているロッドが短い場合には、実験結果を割り引いて考えましょう。
実験に使用するルアーに注意する
もう一つは、実験に使用するルアー(シンカー)です。
実験に使用するウエイトがメタルジグやただのシンカーの場合、風などの影響を受けにくくなります。
「ロッドの長さによる飛距離の違いを検証する」という意味では適切な方法といえます。
ただ、実釣時の状況とは異なります。
実釣においてはミノーやシンキングペンシルやトップウォーターも使用します。
これらのルアーは、もともと飛距離にバラつきが生じやすいため、ロッドの長さによる飛距離の違いを実感しにくいルアーといえます。
そこで、このような実験結果がそのまま実釣に反映されるわけではない、ということは押さえておきましょう。
実験時の体力に注意する
さらには、実験時の体力的な事情も問題になります。
すでに記載したとおり、長いロッドの方が飛距離は出ますが、短いロッドよりも振り抜くのに体力を要します。
そのため、実釣開始時と実釣開始2~3時間後では状況が異なります。
実釣開始直後であれば、長いロッドでもガンガン振り抜けます。飛びます。
でも、長いロッドは短いロッドよりも体力を消耗しやすく、実釣時間が長くなるほど飛ばしにくくなってきます。
この点においても、実験結果が実釣にそのまま反映されるわけではありません。
ロッドは長い方が飛ぶ! でも…
一般論として、ロッドの長さ以外の条件がまったく同じであれば、長いロッドの方がリリースポイントが高くなるので、その分の飛距離も稼げます。
でも、ロッドが長くなることによってシャープに振り切りにくくなるという問題点もあります。
ロッドをシャープに振り切れないと、ルアーの放出速度が遅くなります。
その結果、ルアーの飛距離もやや落ちます。
また、実釣においてはロッドの長さ以外の条件もルアーの飛距離に影響を与えます。
そのため、「長いロッドの方がルアーが飛ぶ」とは一概にいえません。
そもそも、ロッドの適正な長さは体格とパワーを考慮して選ぶ必要があります。
そして、最適な長さのロッドをシャープに振り切れてこそ、そのアングラーにとってもっとも飛距離を出しやすくなります。
最近はロッドの軽量化が進んだため、長めのロッドを薦められることが増えました。
しかし、ただ長ければいいわけではありません。
飛距離を目当てに長いロッドを検討するときは、
実釣中、シャープに振り続けられる範囲で長めのロッドを選ぶ
ということを押えておきましょう。