これまでの【ゼロから始める】シリーズで、超基本的な知識として「シーバスがベイトを捕食するときの目線」の話や「レンジの重要性」についてご紹介しました。
この点について、SNSで、ナチュラルリリースの記事と合わせて「とても参考になる動画があった」という情報提供をいただきました。
実は、この動画はけっこう前にyoutube上に公開された動画で、僕もかなりの回数を観たことがありました。
それはシーバスのなにげない捕食シーンを収めた映像です。
ただ、改めて見返してみると、ナチュラルリリースでご紹介したシーバスフィッシングの基本が、ナチュラルリリースよりはるかに分かりやすく映像化されています。
このページでは「シーバスの捕食」についてご紹介します。
まずは衝撃の捕食シーンからご覧ください
これはFunSeaさんという投稿者によって7年前にyoutube上に公開された映像です。
撮影時間帯は夜だと思われます。もしくは、ローライト時の水深の深い場所でのか…
いずれにしてもシーバスにライトを当てて撮影していることがわかります。
この動画は、シーバスアングラーにはとても有名な動画ですが、それと同時に、シーバスビギナーにとっては
「シーバスが実際にどのようにベイトを追い詰めて、どのように捕食しているか?」
ということが映像で理解することができます。
また、シーバスビギナーのみならず、おそらくすべてのシーバスアングラーにとって教科書の1つになるであろう、とても価値のある動画でもあります。
一度だけではなく、二度、三度、四度…
いえ、何度でも見直す価値のある動画です。
ちなみに僕も10回以上は観ています。
映像で見るシーバスの捕食方法
逃げるベイトをしつこく追いかける
FunSeaさんの映像によれば、シーバスは意外と(?)逃げていくベイトをしつこく追いかけていくということがわかります。
ベイトがシーバスからいったん離れても、シーバスはすぐにベイトの方へ向きを変えて追いかけていき、捕食のタイミングを見計らいます。
僕もけっこう色んな魚を飼って、飼育魚が水槽内のベイトを捕食する状況を見てきました。
ただ、僕が飼った魚は待ち伏せタイプの魚が多いためか、こんなにベイトを追い回す魚はいませんでした。
アクアリウム経験のない人からすると、フィッシュイーターがベイトを捕食するというのは、まさに映像のような状況を想像するかもしれませんが、僕の偏った飼育魚経験からするとかなり新鮮でした(笑
逃げるベイトにも機敏に反応する
シーバスのナイトゲームやローライト時間帯のゲームではタダ巻きが推奨されることがほとんどです。
大雑把にいえば
ナイトゲーム=タダ巻き
という大きな括りをされることが少なくありません。
確かに、「夜だとベイトの機敏な動きにシーバスが反応できないんじゃないの?」って想像してしまうことも理解できます。
だって僕らは人間だもの。
暗いと見えないよね、普通。
でも、映像からは、シーバスは機敏に逃げていくベイトをほとんど見失うことなく追いかけています。
追いかけるけど捕食成功率は高くない
意外にも積極的にベイトを追いかけていくシーバスですが、積極的に追いかけたとしても捕食が成功する確率はそれほど高くありません。
追いかけて追いかけて追いかけて捕食するよりも、むしろ、ボトム付近でボーッと浮いているベイトに、スーッと近づいて、狙いすまして「ズボッ!」と吸い込んだときに捕食が成功することが多いように見えます。
もちろん、ベイトを追いかけながら捕食しているシーンもあります。
ただ、ステイしているベイトにタイミングを見計らって襲い掛かっているシーンの方が多いようです。
いずれにしても、「シーバスは意外とベイトをよく追いかけるけど、食い切れないことも少なくないな」っていう印象です。
徹底してボトム付近にいるベイトを狙う
このあたりからビギナーが参考にしてほしい映像の内容です。
この映像では、シーバスはほぼ、ボトム付近をうろうろしているベイトに狙いを定めています。
シーバスは徹底してベイトの居るレンジに合わせて泳いでいるということもできます。
シーバスの目線がボトム付近を向いていることは明らかです。
おそらく、このボトムレンジから1mくらい上にベイトが逃げてしまうと、シーバスはほとんど反応しないでしょう。
シーバスが上下に少し反応するのは、捕食するときのわずかな瞬間だけです。この瞬間だけ、シーバスの身体の届く範囲内で上下にベイトを追いかけます。
ベイトの魚種は不明
この映像でシーバスのターゲットになっているベイトは、僕らが雑誌やテレビやYoutubeの番組でよく耳にするような有名なベイトではありません。
僕にはこのベイトが何なのかはわかりません。
少なくとも、カタクチイワシでもサッパでもヒイラギでもボラでもコノシロでもサヨリでもバチでもハゼでもキスでも鮎でもありません。
ネンブツダイかシマイサキかイシモチっぽくも見えますが、わかりません。
ただ、メディアなどでプロアングラーの口から語られるような類いの典型的なベイトでないことは確かです。
この映像からわかるのは、このベイトは普段アングラーが想定しているベイトではないということです。
ルアーの動きとベイトの挙動は別物
映像で観る限り、ベイトの挙動は本当に生命感に溢れています(当たり前)。
この生命感溢れる挙動がルアーで演出できるか?といわれると、まず真似することは不可能でしょう。
ジャーキングなどによって、瞬間的・突発的にベイトに似たような動きができたとしても、瞬間的な逃走後のベイトの自然な挙動をルアーで演出するのは難しいでしょう。
ジョイントルアーを使おうとソフトベイトを使おうと、少なくとも、タダ巻きによるルアーの動きで映像のような本物のベイトの生命感を出すことは困難です。
ベイトの動きと比べると、タダ巻きによるルアーは明らかに生命感が欠如していて不自然です。
映像から釣りへのフィードバック
レンジの重要性
この映像からは多くのことが学べますが、その中でも特に意識して観てもらえたら、と思うのがシーバスの目線です。
この映像では、シーバスはほぼ、ボトム付近にいる単独のベイトに狙いを定めています。
徹底してボトム付近を回遊しています。
シーバスがこのような行動をするとき、シーバスが意識しているレンジよりも上のレンジにルアーを通しても、おそらくルアーに見向きもしないでしょう。
動画のコメント欄にも
こんな時トップでやってても無駄すぎる。
という内容のコメントがありました。
もちろん、その逆も同じです。
ミドルレンジやシャローレンジなど、上のタナを意識しているシーバスに対してボトムでアプローチしたところで、シーバスがそのボトムのルアーを追いかけて行くのはちょっと想像できません。
もちろん、アングラーからはシーバスがどこのレンジに居るかなんてのはわからないので、釣り場から得られる様々な情報を頼りにいろんなアプローチを試みるしかありません。
ただ言えるのは、常に全レンジでアプローチできるような準備をしておくことと実際に幅広いレンジでアプローチを仕掛けてみることがとても重要です。
タダ巻きだけがすべてではない
最近はルアーをプロデュースした当のアングラーが
という宣伝をすることが多いので、フルキャスト→タダ巻き…の繰り返しという「待ちの釣り」が主流です。
実際に、僕の場合も釣果の6~7割はタダ巻きです。
でも、映像を観る限り、シーバスは、クイックなベイトの動きにも普通に反応して追尾しています。
少なくとも「ナイトゲーム=タダ巻き」という図式はかなり雑なくくり方であることがわかります。
食わせの間も必要
映像を観る限りでは、ベイトがクイックに逃げてもシーバスは普通に反応して追尾します。でも、最終的にシーバスが捕食するタイミングというのはベイトがステイしているときが多いです。
もしくは、ベイトが止まっているときにそーっと近づいて、ベイトが逃げようとした瞬間に強烈な勢いで吸い込むという捕食方法です。
いずれにしても、シーバスの”間”(タイミング)があることがわかります。
鬼ごっこのように、どんどん逃げていくベイトを追いかけて襲い掛かっているわけではありません。
また、いったん捕食に失敗すると同じ小魚に対して深追いすることもありますが、すぐにあきらめることもあります。
そこで、アングラーとしては、ルアーを動かし続けてシーバスに口を使わせるというよりも、
↓
シーバスに捕食のタイミングを与える
というアクションが有効であるということができそうです。
なお、この点についてSNSで
という質問を受けました。
確かにこの↓の記事で、僕は「ボトムではスピードやアクションの変化でシーバスを惹きつけるよりもタダ巻きの方がいいですよ」という趣旨で書いています。
ディープレンジは、シーバスを狙ううえでシャローレンジの次にビギナーが攻略すべきレンジです。でも、ビギナーにとってディープレンジはできれば狙いたくないレンジNo.1のレンジでもあります。このページではディープレンジを[…]
結論からいえば、質問者様のご指摘のとおりだと僕は考えています。
それでも僕がビギナーにボトムでのタダ巻きをおすすめするのは、アクションやスピードの変化でシーバスに口を使わせることよりも「レンジを外さないこと」を重視しているからです。
ボトムでの感覚が身についていないうちは、「こういうロッドワークをすれば、ボトム付近ではルアーがこう動く」ってのがわからないことが普通です。むしろ、ボトム付近でのルアーのアクションが感覚でわかるレベルであれば全然ビギナーレベルではありません。
僕は釣りウマではないので、自分ではボトム付近でアクションさせてたつもりなのに、思った以上にルアーが浮いてきてた…って経験もかなりあります。ボトムでのルアーのアクションって僕にはそんなにはわかりません。
だったら
「不安定なアクションやスピードの変化に頼るよりも、基本に忠実にボトムレンジをきっちりキープしつつ、たまにストップを混ぜる程度のタダ巻きに頼った方が釣果が安定する」
という趣旨のことが、昔の(教科書的な)釣り雑誌には書いてあったので、僕の場合はできないことをするよりも、基本が忠実に実践できるように心掛けています。
なので、僕は今でもボトム付近ではシーバスの目線を外さないようにレンジをキープすることを最優先に考えて釣りをしています。
聞き慣れたベイトに固執しない
シーバスフィッシングを始めた頃は、「ベイトを探そう」と思ったとき、メディアに文字の踊るようなベイト(カタクチイワシとかサッパとかイナッコとかバチとかサヨリとかヒイラギとか…)ばかりを探そうと思ってしまいがちです。
そして、これらのベイトの気配がなければ
と決めつけていました。
でも、実際はシーバスのベイトになり得る小魚(甲殻類)はたくさんいます。
映像のようにネンブツダイかシマイサキかイシモチかなにかよくわからない小魚でも、シーバスは積極的に追いかけて捕食します。
ベイトを聞き慣れたものに限定するということは、それだけ釣りの幅を狭めてしまうおそれがあるので、ベイトは聞き慣れたものに固執しないようにしましょう。
エサではないルアーで釣ることの意義
本物のベイトの挙動に比べると、タダ巻きによる単調で生命感のないルアーの動きは明らかに不自然といえます。
それでもプラスチックの塊でシーバスが釣れる。
それが現実です。
それはなぜか?
もちろん、ルアーが小魚に似ているからではありません。
ルアーというプラスチックの塊にシーバスの興味を惹きつける(タックルとしての)性能が備わっているからです。
そして、ここにこそ「エサではない、ルアーでシーバスを釣る」ということの面白さがあるといえます。
最近のルアーフィッシングシーンでは、多関節のクネクネ動くルアーや、本物のベイトフィッシュのカラーを追求したリアル系カラーが話題を呼んでいます。確かに、リアル系ルアーはアングラーの購買意欲をかき立てます。しかし、実際[…]
“釣り業界の常識”と”現実”には隔たりがある
FunSeaさんの映像を観る限り、巷でよく言われる「ナイトゲームはタダ巻き」とか「〇〇のときはこのルアー」みたいな括り方はとても雑な説明であることがわかります。
間違っているということではなく「雑な説明」です。
もしかしたら、ビギナーでもとっつきやすいように「シンプルなアプローチ方法」を確立しようとする釣り業界の優しさなのかもしれません。
ただ、巷で言われるような「ナイトゲームはタダ巻き」とか「〇〇のときはこのルアー」という限定をしてしまうと、そのくくり方に当てはまらない状況のときに釣れなくなってしまうという釣りの幅を狭める結果にもなりかねません。
実際は、夜であろうとシーバスはクイックに逃げるベイトを積極的に追いかけて行きます。
「どういう状況でどうすべきか?」なんてことは、その日その時、目の前にいるシーバスに聞いてみるしかありません。
アングラーのスタンスとしては、釣り番組やウェブメディアなど、巷で語られているプロアングラーの提唱するアプローチ方法がすべてだと決めつけてしまわないことが重要です。
釣りは自然が相手のレジャーなので、本来は「答えがない」のが「釣り」であり、「答えのない答え」を求めるのが釣りの面白さということもできます。
普段はプロアングラーの豊富な経験に基づいた説明を聞くのもいいでしょう。
でも、昔から「百聞は一見に如かず」といわれます。
たまには、自然のシーバスの姿から「自分なりの答え」を探してみてはいかがでしょうか。
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