【ステップアップ】リアル系カラーに意味はない?ベイトに「似る」ことの意味を理解する!【第1回】

ここ数年の日本のルアー市場を見ていると、一つの面白い方向性が見えてきます。

それは『超リアル系カラー』です。

シマノの強鱗

ダイワのアデル(艶る)。

メジャークラフトのライブベイト

どのメーカーも飾っておきたくなるくらい美しいカラーです。

かつては、メガバスのカラーリングが超リアル系の先頭を走っていました。1990年代中盤から終盤にかけて爆発的に売れていました。

リアル系カラーというのは、釣り人心をくすぐるため、メーカーにとってはとても重要なファクターです。

じゃあ、魚を釣るために意味があるのか?を考えると、

釣れそう!

という以外に深く考えたことのないビギナーもおられるはずです。

このページでは、ルアーがベイトに「似る」ことの意味をご紹介します。

超リアルな模型で考えてみる

究極のリアル系を見比べてみる

ここに2匹のアユがいます。

どちらも本物に見えます。

1匹は本物で、もう1匹は作り物です。

では、どちらのアユがニセモノ(作り物)でしょうか…?

これをルアーにできれば最高…なのだろうか?

模型を手に取らずに、この写真だけで本物とニセモノを見極められる人はほとんどいないのではないでしょうか。

じゃあ

ビギナー
こんなルアーが作れたら最高じゃん!!

ということに果たしてなるのでしょうか?

実は、ルアーが本物に似れば似るほど大きな問題が起こってきます。

リアルになるほど惹きつける能力が低くなる

アングラーの立場からすると、上の2匹のアユのうち、ニセモノのアユを狙って食いつかせる必要があります。

でも、シーバスが、ベイトとルアーの区別ができなくて本物のベイトを捕食してしまったのでは、シーバスを釣ることはできません。

じゃあ、パッと見で区別できないのに、どうやってニセモノを狙って食いつかせるのか…?

当たり前の話ですが、ルアーは、本物に似れば似るほど、ルアーと本物の区別がつきづらくなります。

その結果、本物を食うかルアーを食うか…運まかせになってしまいます。

これをルアーフィッシング的に表現をするなら

本物に似れば似るほど、ルアーとしての惹きつける能力が低くなる

ということです。

ちなみに、この点について

ビギナー
アクションが本物と違う(リアルじゃない)から大丈夫じゃない?

と考えるビギナーもいるかもしれません。

しかし、こういうことを言い始めると

ショーカラ
じゃあ、カラーもリアルじゃないほうがいいんじゃない?

という話にもなってきます。

カラーはリアルで、アクションはリアルじゃない方がいいのか?

カラーもアクションもリアルじゃない方がいいのか?

何がリアルが良くて、何がリアルじゃない方がいいのか、ワケがわからなくなります。

ただ、カラーに加えて動きまでリアルになると、ますます本物とルアーの区別ができなくなるということは言えるでしょう。

ルアー(lure)の語源

日本ではルアー(lure)のことを『疑似餌』と訳されることが多いです。

つまり、ニセモノのエサです。

日本のルアーフィッシングシーンにおいては

ルアーはニセモノのエサなので、本物に近づけることで、さらにエサっぽくなって釣りやすくなる

と考えられています。

しかし、lureの語源を辿ると「惹きつける、誘惑する」という意味になるようです。

連想ゲームをすれば

惹きつける→美味しそう→ニセモノだけど美味しそう…→疑似餌

という語訳に繋げることはできるかもしれません。

しかし、端的に『ルアー(lure)』というものを考えるならば、ニセモノのエサではなく、魚を惹きつけるためのツール(道具)というのがルアーの本質といえます。

本物に似るほど『ルアー』の本質から離れていく

アユの写真で見たように、ニセモノであっても、本物に似れば似るほど本物と区別しづらくなります。

これをルアーフィッシング的に表現すれば、本物に似るほど、ルアーの惹きつける能力が低下する、ということです。

ルアーの惹きつける能力が低くなるのなら、それは『魚を惹きつけるためのツール』であるはずのルアーの本質からも離れていくことになります。

つまり、ルアーは、本物に似れば似るほど魚を惹きつけにくくなり、ルアーの本質から離れていくことになります。

あり得ないカラーで釣れる現実を認識する

ここまでの話は、ルアーフィッシングに関する思想みたいな部分がかなり含まれています。

なので、話半分で読んでいただければいいでしょう。

ここからが本題です。

魚は目の良い生き物

魚というのはとても目の良い生き物です。

「目が良い」というのは視力の問題ではありません。

魚は色や形を識別する能力にとても優れているという意味です。

そのため、魚がルアーを発見するとき、もっとも作用する器官は目(視覚)といわれています。

この点については、第13回(ゼロから始めるシーバスフィッシング)の記事でもご紹介しました。

ショーカラ
根拠は乏しいですが、釣り人の経験則からは側線が重要といわれます

そして、魚の目の色識別能力・形状識別能力を前提にすると、

魚は、ルアーと小魚(本物)を容易に区別できる

というのが魚類学的見地から見たルアーフィッシングです。

詳しくはコチラ↓の書籍を参照してみてください。とても参考になります。

しかし、あり得ないカラーでも釣れるという現実を認識する

魚は目の良い生き物で、ルアーと小魚(本物)は容易に区別できます。

それにもかかわらず、シーバスなどは、本物とは似ても似つかないカラーのルアーで釣れます。

それはなぜか?

実は色識別能力は高くないのかも…

一つの考え方として

魚類学者は小難しい説明をするけど、魚の色識別能力・形状識別能力は、実際はそれほど高くない

というものがあります。

たしかに、漁師の定説によって魚類学の定説が覆されるということはあります。

そこで、

ビギナー
学者は難しいこと言うけど、実際、魚はそれほど区別できてないんじゃないの?

と考えることは、おかしい考え方ではありません。

そして、この考え方によれば、魚の色識別能力・形状識別能力はそんなに高くはないのですから、そもそもルアーの色や形を本物に似せる必要性は高くないといえるでしょう。

色はあくまで機能の一部

もう一つの考え方としては

魚の色識別能力や形状識別能力が高いことを前提に、(色・形を含む)ツールとしてのルアーの様々な機能が作用して、シーバスはルアーに惹きつけられる

という考え方です。

これは「ルアーは魚を惹きつけるための道具」という昔ながらのルアーフィッシングの本質とも親和的で、魚類学的な見地とも矛盾しない考え方といえます。

この考え方によれば、ルアーの色や形というのは、ルアーという道具の機能の一つにすぎないといえます。

リアル系カラーだから反応する魚もいるでしょう。反対に、リアル系には見向きもしない魚もいることでしょう。

リアル系カラーが効くかどうかは状況次第ということです。

いずれの考え方であっても、ワケのわからない色のルアーでシーバスは釣れますし、一般的にリアル系カラーの方が良く釣れるという印象はまったくありません。

そのため、現実の釣行においては、必ずしも(現在発売されている)リアル系カラーが必須とはいえないでしょう。

超リアル系カラーにこだわる必要はない

(学者が言うほど)魚の色識別能力や形状識別能力は高くない、という考え方であれば、そもそもリアル系にこだわる必要はないでしょう。

魚の色識別能力や形状識別能力は高いという前提に立っても、じゃあ、どれくらいリアルになれば魚から見切られないのか?といえば、これは魚に聞いてみなければわかりません。

さらに、魚がルアーだと認識できないほどのリアルさを実現できたとしても、今度は、ルアーを狙って食いつかせることが難しくなる(惹きつける能力が低下する)という問題が起こります。

こう考えてみると、そもそも超リアル系カラーが活きる場面(超リアル系だからこそ釣れる場面)というのは、けっこう限定的な状況なんじゃないか?と考えることができます。

もし、「シーバスに効果的!」というリアル系カラーがあるとするなら…

シーバスの警戒心を刺激しないほどのリアルさでありながら、シーバスが本物とルアーの違いを認識できる程度のリアルさ

という感じになるでしょう。

このようなリアル系カラーを実現できるのであれば、リアル系カラーはシーバスに効果を発揮できるのではないでしょうか…

いかにもアングラー本位のわがままな考えですが(笑

いずれにしても、アングラー本位のリアル系カラーでない限りは、ルアーを選ぶときにリアル系カラーにこだわる必要性はそれほど高くないといえるでしょう。

それでもリアル系カラーが人気なワケ

リアル系カラーは「ルアーでシーバスを釣る」という観点からは、それほど必要性が高いわけではありません。

それでもリアル系カラーが人気な理由はなにか?

これはもう単純です。

より釣れそうだから

これに尽きます。

リアル系カラーの方が釣れるから…という問題ではありません。

いや、実際には普通のカラーと同じように釣れます。

リアル系でも釣れます。

タイミングによってはリアル系カラーのほうがよく釣れることもあるでしょう。

でも、リアル系のほうがよく釣れる…というのは、単に状況やタイミングの問題です。

おそらく、普通のカラーと同じくらい釣れる、という程度でしょう。

しかし、釣り人の心情として「これは釣れそう」と思えるのがリアル系カラーです。

「釣れそう」と思い込みやすいので、よく売れる。

よく売れるから、メーカーもこぞってリアル系カラーを開発する、というのが現状です。

リアル系カラーは不要なのか?

最後に、「釣果にあまり関係ないなら、リアル系カラーなんて要らないのか?」といえば

ショーカラ
あってもいいんじゃない?

というのが僕の考えです。

僕の感覚としては、リアル系カラーであろうと、魚から見ればニセモノってわかるんじゃないの?というのが前提です。

つまり、惹きつける能力という点に関していえば、普通のカラーと同じでは?というのが僕の考えです。

水の濁り具合や光量によって、リアル系カラーが目立つ場合と目立たない場合があるかな…という程度。

そのうえで重要になるのが、リアル系カラーが「釣れそう!」と思えるかどうか。

総じてルアーのカラーというのは、魚へのアピール以上にアングラーのモチベーションに与える影響のほうが大きいとさえ感じることがあります。

一度「このカラー、釣れなそう(;´・ω・)」って思い込んでしまうと、本当になかなか釣れないんですよ。

逆に、好きなカラーや実績のあるカラーというのは、不思議と釣れるんです。

おそらくは、アングラーのモチベーションの問題でしょう。

しかし、リアル系カラーでモチベーションが保てるアングラーがいるのであれば、カラーの選択肢の一つとしてリアル系があってもいいのではないでしょうか。

リアルであることにあまり意味はない

まとめです。

魚の色識別能力はそれほど高くない、と考える人にとっては、リアル系カラーはそれほど意味はありません。

また、魚類学者のように魚の色識別能力が高いと考えたところで、どれくらいリアルであれば魚は区別できなくなるのか?

それは、魚に聞いてみなければわかりません。

逆に、魚に区別できないほどのリアルカラーが実現できた場合、今度は、ルアーの惹きつける能力が低下するという別の問題が起こります。

このような事情を考慮すると、「魚を釣る」という点に関していえば、ルアーのカラーが超リアルであることは、それほど優位性が高いとはいえないでしょう。

しかし、ルアーのカラーというのはアングラーのモチベーションに影響を与える重要なファクターです。

釣果という点で直接的な関係はないとしても、リアルカラーが「釣れそう!」と感じるアングラーは、リアルカラーを積極的に使ってみると良いでしょう。

ルアーが超リアルになると何が起こるのか?
この点についてリアリティをもって考えるために、2匹のアユの写真のうち、1匹はニセモノである…と説明しました。
しかし、実際は2匹とも本物です。
拡大して見比べてくれた方々、どうもすみませんでした(;´・ω・)

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