ゼロから始めるシリーズのルアー編第20回の記事で「シーバスがルアーを感知(発見)するうえで、『波動』と呼ばれる水粒子の動きがどれほど影響があるのか?」ということについて記載しました。
この記事では、シーバスがルアーを発見するためには、側線で感知する水粒子の動きよりも、視覚で感知するルアーの見た目が重要であることをご紹介しました。
では、ルアーを発見したシーバスが、実際に捕食行動に及ぶためにはどのような要素が必要なのか?
このページでは、シーバスが捕食行動に及ぶきっかけ(トリガー)についてご紹介します。
『空腹』は捕食のトリガー(引き金)になるのか?
魚食性の魚は効率性を求める?
シーバスフィッシングでは、以前から、シーバスが捕食行動に及ぶきっかけについて、『空腹』と『効率性』という観点から説明されることがありました。
たとえば、こういう↓説明です。
そのため、一度の捕食で満腹になれるように、大型のシーバスは大型のベイトを狙って捕食した方が効率的である。
みたいな感じ。
この説明が正しいか正しくないかは、どちらでもいいです。
ただ、シーバスが捕食行動に及ぶきっかけとして、空腹(満腹)や効率性という観点から語られることは少なくありません。
魚の空胃率は案外高い
自然界の生き物にとっては、子孫を残すことは、その生物に与えられた使命であり、とても大変な行為です。
そのため、自然界の生き物は、生き延びて子孫を残すために必死で狩りを行います。
では、そのへんを泳いでいる自然環境下の魚の空胃率(胃に食べ物が残っていない状態)は、そもそもどれくらいなのでしょうか?
もし、「空腹になったから捕食する」というのであれば、そのへんにいる魚の空胃率はそれほど高くないと考えられます。
つまり、「空腹になったから捕食する」というのであれば、お腹が空っぽの状態の魚はそれほど多くないでしょう。
この点について、402魚種369,000匹の魚を調査した結果によると、平均で4匹に1匹以上は空胃の魚だったそうです。
また、ブラックバスを対象にしたイリノイ州のクラブオーチャード人工湖の調査によると、平均で50%のブラックバスは空胃だったようです。
つまり、50%のブラックバスの胃は空っぽだったということです。
けっこう高い空胃率です。
仮に、空腹になったときに捕食行動に及ぶとするなら、魚(ブラックバスなど)は捕食がかなり下手ということなのでしょうか…??
捕食成功率は決して低くない
ブラックバスの捕食成功率を検証した水槽実験はいくつかあるようです。
ただ、水槽内では、自然環境下を厳密に再現できるわけではありません。
なので、いくつかの実験結果をみると、捕食成功率は76~95%という感じで幅があるみたいです。
とはいえ、76~95%の捕食成功率であるならば
というのが僕の印象です。
『空腹』は捕食行動に及ぶトリガーにならないのでは?
「ブラックバスは空腹になったときに捕食行動に及ぶ」と仮定して「ブラックバスの捕食成功率が低くない」ことを考慮するなら、なぜ50%ものブラックバスが空胃だったのか?
謎が深まります。
もし、空腹をきっかけに捕食行動に及ぶのであれば、それらの個体はすぐに捕食に成功して空胃(胃が空っぽの状態)ではなくなるからです。
逆に、お腹パンパンなのに釣れるシーバスというのもいます。
このように考えていくと、魚の空腹や満腹というのは、捕食行動に及ぶかどうかのトリガー(きっかけ)にはならないのではないか?ということが見えてきます。
信号刺激がシーバスの本能行動を引き起こす?
魚のアタックを引き起こす信号刺激
空腹が魚の捕食行動を促すわけではないと考えた場合、
「では、いったい何が魚の捕食行動に影響を与えているのか?」
ということが問題になります。
この点について、一つの考え方として
という考え方があります。
動物の本能行動を引き起こす刺激を『信号刺激』や『鍵刺激』と呼ぶそうです。
研究者による二つの説明
このように説明すると
という疑問が生じるでしょう。
以前、某釣り系SNSサイトでルアーの『波動』について話題になったことがありました。ナチュラルリリースでも話題に乗っかって、その話題に沿うかたちでルアーの『波動』についてご紹介したことがありました。ただ、その記事はビ[…]
しかし
参考:―スマルア技研:バスの摂食トリガーは「空腹」なのか?―
これら二つの見解は、実は同じ研究者から唱えられたものです。
餌を発見することと食いつくことは別問題
この研究者の見解に矛盾がないことを前提に説明を読んでみると…
おそらくはこういうこと↓ではないかと考えられます。
水中における水粒子の動きはほとんど伝播せず、また、側線が有効に機能する範囲も広くないからである。
実験結果によれば、(側線による感知は、捕食成功率は低く、獲物を感知できる距離も近距離になるものの)視覚の働かない魚でも餌を捕食できる。
つまり、僕なりの稚拙な解釈では
索餌→発見→捕食という捕食行動全体のうち、各行動ごとに優位に働く器官が異なる
ということを前提にしているのではないかと思われます。
魚に効く信号刺激(波動)の周波数はまったくわからない
ここまでは、研究者の研究結果をベースに、「シーバスがどのようにルアーを発見して、なにをきっかけにルアーにアタックしているか」ということを考えてみました。
では、結局、信号刺激となるようなルアーの動きの周波数や強さはどれくらいか?
ということですが…
現段階ではまったくわからないというのが結論です。
つまり、シーバスに効くルアーの信号刺激(波動)の周波数や強さは明らかになっていません。
したがって、「〇〇のナチュラルな波動がスレたシーバスに効く!」とか「△△の強烈な波動がシーバスを狂わせる!」という説明は、釣り人の経験則に基づく想像のレベルの話と考えて差し支えありません。
それ以上でも、それ以下でもありません。
少し前に流行った言葉でいえば
という話です。
アングラーは視覚的にアプローチして信号刺激で間違いを起こさせる!
上記では「水粒子の動きが側線への信号刺激になる」と端的に表現しました。
しかし、実際には、ルアーのスピード、潮流速度、光の強弱、水温、pH濃度、水の濁度など様々なファクターが複雑に作用し合って信号刺激になっている可能性も充分に考えられます。
それにもかかわらず、一つのファクターを恣意的に取り上げて「コレが効く!」と言い切るのは、かえってビギナーを惑わす結果になりかねません。
裏付けが経験則しかない以上、アングラーごとに説明が違ってくる可能性があるわけですから。
とはいえ、釣り人であれば誰しも「これは釣れる!」「これだから釣れる!」「なぜかこれだけは釣れる!」というルアーがあるはずです。
そのルアーのアクションの中には、信号刺激になるようなエッセンスが含まれている可能性は充分にあります。
そこで、アングラーのスタンスとしては、そのルアーに寄せる信頼は大切にしつつ、そのルアーを使って視覚的にシーバスにアプローチを試みるのが明快なアプローチ方法といえるのではないでしょうか。
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