シーバスフィッシングを始ようと思って釣具屋の店員さんにリーダーの選び方を聞くと
という感じでテキトーな理由でフロロを薦められることがあります。
リーダーの扱いに慣れているならナイロンでもフロロでもOKです。
でも、リーダーの扱いに慣れていないビギナーがテキトーな理由でリーダーを選ぶと…
このページでは、ビギナーのためのリーダーの選び方をご紹介します。
リーダーの役割
リーダーとは、メインライン(道糸)の先端に接続する糸のことです。
シーバスフィッシングではメインラインにPEが使用されることがほとんどです。
PEには細くて強いという絶大なメリットがあります。その反面、PEにはデメリットもあります。
そのデメリットを補うために接続するのがリーダーの目的です。
リーダーに求められる性能は、具体的には
・伸縮性能
・結束強度
といったところです。
PEラインは細い糸なので擦れにとても弱いです。
また、PEは伸びが少なくて感度がとてもいいです。その反面、瞬間的に加わるショックを吸収する能力に劣ります。
さらには、PEはスナップに直接結ぶと結び目の強度が著しく低下します。そのため、表示どおりの引張強度を得ることはできません。
これらPEのデメリットをカバーするためにリーダーが必要になります。
リーダーの号数(強さ)はどれくらい?
まず、リーダーの号数(or ポンド数)はどれくらいを目安にすればいいか?
実はこの問題は、時代によって考え方がけっこう変わっています。
たとえば、僕がシーバスフィッシングを始めたころは、
メイン:ナイロン リーダー:フロロ
というスタイルでした。
この頃は、だいたいメインラインの2倍ほどの強さのリーダーを選ぶといい、といわれていました。
理由はわかりませんが、道糸の強さの2倍のリーダーが基本って感じでした。
最近はPEが主流になり、メインラインの強度が格段に上がりました。
ところが、ラインの細さは従来のラインの3分の1程度です。
そのため、道糸の2倍の強さのリーダーにすると、道糸とリーダーの太さがとてもアンバランスになります。
そこで、最近ではメインラインと同程度の強さのリーダーを推奨されるのが一般的です。
メインラインが20lbであればリーダーも20lb(5号)くらい、という感じで選べば問題ありません。
リーダーの長さはどれくらい?
リーダーの長さの基本
以前は、リーダーの長さは矢引の長さといわれていました。
矢引というのはコレ↓くらいです。
だいたい1ヤードくらい。つまり80~90cmくらいです。
ところが、最近ではリーダーの長さは50~60cmが主流です。
理由はガイドの小口径化です。
昔のロッドのようにメインラインにナイロンを使用する前提のロッドは、ガイドの口径が大きくて糸抜けも良かったです。そのため、太いリーダーをガイド内に巻き込んでも問題はありませんでした。
最近ではメインラインにPEを使用するのを前提にしたロッドが増えました。このようなロッドは、ガイドの口径が小さいので、太いリーダーを巻き込んでしまうとキャスト時のラインのガイド抜けが悪くなります。
そこで、リーダーをなるべくガイド内に巻き込まない長さが主流になりました。
特に決まりはありませんが、50~60cmくらいの長さが多いようです。
状況やルアーに合わせてリーダーの長さは変える
上記ではリーダーの長さは50~60cmくらいと紹介しました。
しかし、本来、リーダーの長さは状況に応じて長くしたり短くしたりするのが一般的です。
たとえば、障害物を狙うようなときは、メインラインを保護するためにリーダーを長めにします。
あるいは、魚のアタリを弾いてしまうので、伸びる余地を大きく取るためにリーダーを長めにすることもあります。
反対に、しっかりとフッキングさせることを目的として、伸びる余地を小さくするためにリーダーを短くすることもあります。
重いルアーを使うときには、キャスト時に、リーダーに人差し指が引っ掛かるくらいまで長くすることもあります。
50~60cmという長さはあくまで一般論です。
慣れてきたら、状況に合わせてリーダーの長さを変えましょう。
ナイロンとフロロはどちらがいい?
リーダーの太さ(強さ)、長さと並んで悩ましいのが素材です。
リーダーの素材にはナイロンとフロロの二種類あります。
最近では釣具屋の店員さんが、ビギナーだろうが中級者がお構いなしにフロロを薦めることが多いです。
しかし、よほど特別なことでもない限り、ビギナーがフロロを使う理由というのはほぼありません。
引張強度で選ぶべき?
ナイロンとフロロの引張強度を比べると、ナイロンのほうがやや強いです。
ナイロンと同じ引張強度のフロロは、ナイロンよりもやや太くなります。
シーバスフィッシングのメインラインの主流はPEです。PEをメインラインとして使用する場合、PEのデメリットをカバーするためにリーダーと呼ばれるラインを接続します。このリーダーに使われるラインはナイロンまたはフロロで[…]
そのため、引張強度の強さから、フロロよりナイロンを薦める人もいます。
でも、実は、引張強度というのは製品によって解消できる問題です。
たとえば、グランドマックスショックリーダー(クレハ)。これは、太さに対する引張強度がとても強いフロロリーダーです。
もちろん、一般的なナイロンよりも強いです。
引張強度の問題は、引張強度の強いラインを選べば解消できます。
耐摩耗性能で選ぶべき?
ナイロンとフロロの耐摩耗性(擦れ耐性)を比べると、フロロのほうが安定しています。
ナイロンの耐摩耗性能は弱くはありません。しかし、フロロと違って、ラインの寿命をまっとうする前に不意に切れることがあります。
その点、フロロの耐摩耗性能は安定しています。
じゃあ、耐摩耗性能の安定性からフロロを選んだ方がいいか?といえば、そうとも言えません。
というのも、耐摩耗性能も、引張強度と同じように、製品によって解消できる問題だからです。
たとえば、バリバスのシーバスショックリーダー(ナイロン)。VEP-Fと呼ばれる耐摩耗性としなやかさに優れた製法で作られています。
これがとんでもなく擦れに強く、フロロカーボンの比ではありません。
耐摩耗性能の問題も、耐摩耗性能の高い製品を選べば解消できます。
釣りをしているとなにかとよく比べられるナイロンとフロロ。2「フロロの方が擦れに強い」と、とてもザックリといわれることがあります。でも、実際にショーカラナイロンとフロロの耐摩耗性はどこがどう違うの?とい[…]
伸縮性能で選ぶべき?
ナイロンとフロロの違いの一つにラインの伸び率があります。
フロロよりナイロンの方が伸び率が高いです。つまり、ナイロンの方がよく伸びます。
そのため、ショックの吸収性を重視してナイロンを薦める人もいます。
でも、リーダーの『伸び』というのは、リーダーの素材以外にも考慮すべきファクターがあります。
それがリーダーの太さや長さです。
リーダーは、短いよりも長い方が伸びる余地が大きくなります。
また、リーダーは太いものより細い方が伸びやすいです。
リーダーの伸縮性能というのは素材だけで決まるわけではありません。
そのため、伸縮性能だけで一概に決めることはできません。
シーバスフィッシングのメインラインの主流はPEです。PEをメインラインとして使用する場合、PEのデメリットをカバーするためにリーダーと呼ばれるラインを接続します。このリーダーに使われるラインはナイロンまたはフロロで[…]
リーダーは『結束のしやすさ』でナイロンを選ぶ!
実際の問題として、引張強力であろうと耐摩耗性能であろうと、その違いというのはわずかな差です。
そのわずかな差が気になるようであれば、その弱点をカバーした製品を選べばいいのです。
そうすると、ビギナーにとって、ナイロンかフロロかを選択する分水嶺はなにか?
これを考えたとき、製品差でカバーできない問題というのが結束のしやすさです。
平たくいえば糸の結びやすさです。
ナイロンと比べると、どうしてもフロロは硬くて結びにくいです。
一応、「しなやかさ」を売りにしたフロロも販売されています。でも、「しなやか」を謳っていても、ほとんどの製品がフロロ特有の芯の強さは残っています。
また、「糸を結ぶ」という行為は人為的な作業が必要です。引張強力や耐摩耗性能のようにラインの性能任せにすることはできません。
つまり、ラインの結びの上手・下手について、どうしても個人差が生じます。
そこで、ライン結びの経験値の少ないビギナーは、糸の結びやすさからナイロンを選択するのがベターです。
糸の結びやすさってそんなに大切?
ラインを結ぶのは面倒な作業
糸の結びやすさについて少し掘り下げます。
「結びやすいからナイロン!」みたいな言い方をすると
と思われるかもしれません。
しかし、ラインを結ぶこと(ノットを組むこと)は釣りの基本でありながら、とても重要度の高い項目です。
たとえば、PEとリーダーのノットを自宅で組んでから釣り場に行く、という釣り人がたまにおられます。
なぜ、そんなことをするのか? 現場で結べばいいのでは?
ということですが、理由は単純です。
釣り場でノットを組むのが面倒だからです。釣り場に着いたら早く釣りをしたいからです。
自宅でノットを組まなければならないくらい、糸を結ぶというのは面倒な作業なのです。
そんな面倒な作業を、太くて硬くて結びにくいラインでする必要はありません。
ナイロンとフロロでは結束強度が異なる
釣り糸というのは、単純に引っ張ると、表示どおりの引張強力があります。
でも、結び目を作ると、その結び目の部分で必ず引張強力が落ちます。
これを結束強度と呼んでいます。
結束強度は●%と表示されています。
ラインを結束したときに、結び目の部分がラインに表示されたポンド数の●%まで低下するということです。
たとえば、引張強力が20ポンドのラインがあるとします。結束強度が85%だとすると、結び目の強度は17ポンドほどということです。
ナイロンのほうが結束強度が強い
コチラ↓はサンラインが発行している糸の結び方に関するフリーペーパーの抜粋です。
サンラインのデータによれば、フロロよりもナイロンのほうが18%ほど結束強度が強いとされています。
さらには、コチラ↓のデータ。
釣具屋ではリーダーにはフロロを薦められることが多いです。
にもかかわらず、結束強度はナイロンリーダーのデータしか記載されていません。
理由はわかりませんが…
ビギナーは結束強度がさらに低下する可能性がある
データにある●%という数字はそれほど気にする必要はありません。
フロロよりもナイロンのほうが結束強度が強いということが理解できればOKです。
さらに意識しておくべきなのは
ノットに不慣れなビギナーの場合、結束強度がもっと低下する可能性がある
ということです。
当たり前の話ですが、ラインの結び目の強度というのは、ラインがきちんと結べて初めて機能するものです。
いい加減な結び方でも同じ結束強度になる…というわけではありません。
つまり、ラインを結び慣れていないと、予想以上に結束強度が低下する可能性もあるということです。
そもそもフロロは締め込みにくい
なぜビギナーにフロロをおすすめしないか?
もちろん、結束強度がナイロンよりも低下するということがあります。
その他の理由として、そもそもフロロの方が硬くて締め込みにくいということがあります。
自分ではきちんと結んで締め込んでいるつもりでも、予期せずして結び目がすっぽ抜けたり、簡単に切れたりというトラブルがあります。
あまり重視されないポイントですが、ラインの結びやすさというのはとても重要な項目なのです。
フロロは魚から見えにくい?
光の屈折率について
最後に、「水中でのラインの見えにくさ」についてのお話です。
フロロリーダーが薦められるときの理由の一つに光の屈折率というものがあります。
小学生の頃に理科で習いますが、空気と水では光の進む速さが異なります。
そのため、空気と水の境界では光の屈折が生じます。
真空における光の屈折率を1.00とした場合、水中における光の屈折率は1.33〜1.34くらいといわれています。
そして、ある物質(ナイロンとかフロロ)の光の屈折率が、水中における光の屈折率(1.33〜1.34)に近いほど、水の中でその物質は見えにくくなるそうです。
そこで、素材ごとの光の屈折率を調べると、ナイロンが1.55であるのに対して、フロロは1.42です。
つまり、フロロの光の屈折率の方が、水中における光の屈折率に近似していて、フロロの方が水中で水に馴染んで見えにくくなるそうです。
コチラは実際に水中に沈めたときのナイロン(右)とフロロ(左)の見え方の違いです。
たしかに、フロロの方が太いのに、明らかにフロロの方が見えにくいです。
コントラスト識別能力が重要
ここでさらに問題になるのは
ヒトに見えにくいラインは、魚にとっても見えにくいのか?
ということです。
というような問題です。
これを考えるときに重要になるのがコントラスト識別能力と呼ばれる目の機能です。
コントラスト識別能力というのは、水中の背景に溶け込んだ物体を識別する能力のことです。
ラインが水中で見えにくくなるのは、ラインが水中の背景に溶け込んで背景と一体となるためです。これをコントラストが低い状態といいます。
逆に、物体と背景のコントラストが鮮明になるほど、水中の物は見えやすくなります。
そして、コントラスト識別能力が高ければ高いほど、たとえ物体が背景に溶け込んでも(コントラストが低くても)、水中にある物が見えるということです。
では、魚のコントラスト識別能力はどれくらいか?
実験方法によって誤差は生じると思いますが、だいたいヒトの50倍ほどといわれています。
魚のコントラスト識別能力はとても高いそうです。
つまり、人間が水中にあるラインを見たときよりも、魚は、はるかにラインがよく見えている可能性が高いということです。
※コントラスト識別能力について、詳しくはコチラ↓の書籍をご参考ください
魚にはフロロが見えるのか?
フロロが水中で見えにくいというのは、あくまで、ヒトの目のコントラスト識別能力を基準にしたときの話です。
実際のところ、魚からフロロがどう見えているかはわかりません。
仮に、魚にもフロロは見えにくいというのであれば、ヒトの目と魚の目のコントラスト識別能力は同程度ということを前提にしているのでしょうか?
もしくは、ヒトの50倍ほどのコントラスト識別能力を持つ魚の目ですら見えにくいくらい、フロロが水中の背景に溶け込んでいるということなのでしょうか?
よくわかりません。
でも、実際にそんな話は聞いたことはありません。メーカーやプロスタッフも、ビギナーのためにそこまで説明してくれることはありません。
小難しい『光の屈折率』の話を一方的に説明されるだけです。
魚のコントラスト識別能力について説明を聞いたことは一度もありません。
ただの一度も。
魚のコントラスト識別能力がとても高いということを前提にするならば、実際のところ、フロロは水中で見えにくいというのはそれほど重視する問題とはいえないかもしれません。
いずれにしても、「魚からもフロロが見えにくいのか?」というのは、よくわからないです。
つまるところ、ビギナーの頃には、
わかりやすい部分(結びやすさ)を重視したほうがいいんじゃないの?
というのが、手先の不器用な僕が至った結論です。
ビギナーこそ『結びやすさ』にこだわれ!!
ラインの結びやすさや結束強度というのはスルーされがちなラインの性能です。
しかし、「結束部分でスッポ抜けた」とか、「結び目の部分であっけなく切れた」という話はよく耳にします。
引張強力や耐摩耗性能というのはライン任せの性能です。
引張強力の強いラインや耐摩耗性能の優れたラインを選べば解消される問題です。
でも、ラインの結びやすさや結束強度はラインだけの問題ではありません。
いかにビギナーといえども自分で糸を結ぶ必要があります。
その際、ノットに不慣れなビギナーが、結びにくいラインや結束強度の低下しやすいラインを選ぶと、余計に結束強度に不安が残ります。
はっきり言って、糸の引張強度や摩耗部分が限界を迎えて切れるより、結び目から切れるリスクの方がはるかに大きいでしょう。
結びやすさとか結束強度というのは軽視できない性能です。
ビギナーこそ、ラインをしっかり結ぶということにこだわりましょう。
(もちろん、結束に慣れてくればナイロンでもフロロでもどっちでもかまいません)