釣りを始めてみようと思い立って釣具屋さんに行くと、釣具の種類の多さに驚かされます。
一言で釣り糸といっても、ただの糸と思うなかれ。
釣り糸にも【ナイロン】【フロロ】【PE】といった種類があります。
一から釣りを始める場合、釣竿(ロッド)やリールに目を奪われがちですが、釣具の中で特に重要なのは釣り糸と針です。
釣糸と釣針とエサがあれば何かしらの魚は釣れますが、竿とリールとエサだけあっても魚は釣れません。
そういう意味では釣糸と釣針は釣具の中でも基本中の基本の道具といえます。
とはいうものの…
釣り糸だけでも釣具屋に並んでいる種類が多すぎる!!
そこでこのページでは、ラインの種類の違いと選び方について(主にシーバスフィッシングを念頭に置いて)ご紹介します。
ラインの種類(ナイロン・フロロ・PE)
ルアーフィッシングで使うライン(釣り糸)は大きく分けて3種類。
◆フロロカーボン(フロロ)
◆PEライン(PE)
【ナイロン】【フロロ】【PE】 です。

ナイロンの特徴・用途
ナイロンラインとは
ナイロンとはポリアミド合成樹脂繊維でできた単糸構造の釣り糸です。

要するに『化学繊維でできた1本の糸(撚糸でない糸)』です。
ルアーフィッシングに限らず、ほぼすべての釣りのメインラインとして使うことができる優秀なラインです。
ナイロンの特徴
◆擦れに強い
◆とにかく扱いやすい
◆安価
◆引っ張るとまあまあ伸びる
◆吸水する
ナイロンの用途
◆ショックリーダー
フロロの特徴・用途
フロロカーボンとは
フロロとはポリフッ化ビニリデン(フッ素系樹脂繊維)でできた単糸構造の釣り糸です。


フロロの特徴
◆ほとんど吸水しない
◆擦れに強い
◆太い・硬い・張りが強い
◆扱いにくい
◆やや高価
フロロの用途
◆ショックリーダー
PEラインの特徴・用途
PEラインとは
PEとは(ナイロンやフロロのようなモノフィラメントと異なり)ポリエチレン繊維の細糸を複数本縒り(より)合わせて編み込んだ釣り糸です。
Polyethylene(ポリエチレン)をPEと略しています。
4本撚り、8本撚り、12本撚りなどの種類があります。
PEの特徴
◆引っ張ってもほとんど伸びない
◆吸水しない
◆擦れに弱い
◆扱いにくい
◆高価
PEの用途
ルアーフィッシングのメインライン
バスフィッシング
ナイロン・フロロ・PEすべて使います。
ナイロンかフロロを使うアングラーが多いです。
トラウト・サーモンフィッシング
ネイティブトラウトもエリアトラウトもトラウト用のラインはナイロンがメインです。
ただし、大型のネイティブトラウトを狙う場合にはPEが使われることもあります。
ネイティブサーモンの場合にはPEが多いです。
ソルトゲーム
PEが主流です。
もちろんナイロンやフロロも全然使えますが、ソルトゲームでは『引張強力の強さ』『細糸による飛距離UP』というPEの恩恵が大きいのでPEラインが好んで使われます。
シーバス用のラインもほとんどの場合にPEが使われます。
PEの種類
PEの種類(4本縒り、8本縒り、12本縒り)
モノフィラメント(単糸)構造のナイロン・フロロと異なり、PEラインは複数糸の縒り(より)糸構造です。
縒っている本数の違いにより【4本縒り(×4)】【8本縒り(×8)】【12本縒り(×12)】というふうに区別されます。
一般的な釣具屋でよく見かけるのは、×4か×8が多いです。

×4と×8の違い
×4と×8の違いは4本の細糸を束ねているか8本の極細糸を束ねているかの違いです。
でも、その違いによってけっこう重要な差が生じることになります。
ラインの価格(最重要項目)
×4より×8の方が価格が高いです。
最近は×8の価格も2000円台くらいになってきましたが、15年くらい前は4000円くらいしていました。
今では×4のPEラインなら1000円台から買えます。
なぜ価格が違うのか?
当たり前の話ですが…
×4と×8で同じ太さのラインを作ろうとすると、×8のPEライン一本一本の繊維の太さは、×4の一本一本の繊維の太さの半分の細さにする必要があります。
×8のPEはそれだけ製造に手間が掛かります。
製造に手間がかかると道具は高くなります。
性能の差とは別次元の問題です。
「値段が高いから×8の方が性能が良い」という問題ではありません。
糸の断面の形
×8は、×4の半分の細さのPE繊維を×4の2倍の本数編み込んでいます。
極細糸を2倍の本数編み込むことにより、×8は×4よりも糸を密に編むことができるようになります。
×8は糸を密に編むことで糸全体の断面が真円に近くなります。

極細糸をたくさん縒ることで糸の断面が綺麗な真円に近づきます。
逆に×4は、一本一本の繊維糸の太さが×8の2倍の太さの糸を少ない(半分の)本数で縒っているため糸の断面が×8よりも扁平気味になります。

糸鳴り
糸鳴りは糸の断面の形に由来する現象です。
×4は糸の断面が扁平気味になるため、ガイドとの接触面が×8より大きくなります。
そのため、×4のPEはガイドに擦れるときに音が鳴ります(これを「糸鳴り」といいます)。
これに対して、断面が真円に近い×8はガイドとの接触面が×4よりも小さくなるのでほとんど糸鳴りしません。
音が鳴るから何なんだ?と言われれば、特に問題はありません。
ただ気になるというだけです。
糸の太さ
同じ号数でも×4より×8の方がわずかに太いのが一般的です。
ごくわずかな差です。
引張強力の違い
同じ号数なら×4より×8の方が引張強力が強いです。

糸のハリ・コシ
ナイロンやフロロと異なり、PEはかなりフニャフニャしたコシのないラインです。
非コーティング系のPEはどのタイプもコシがないですが、同じ号数でも×8の方がフニャフニャでコシがないのが一般的です。
×8のPEは一本一本の原糸が細いのでコーティングしない限り、ラインに張りやコシを持たせるのが難しいそうです。
(ショック)リーダーって何?
PEのデメリット
ルアーフィッシングでも餌釣りでも、およそ釣りをしていると必ず絶対にどこかでラインを擦ります。
魚の歯や体、波止や地面等のコンクリート、海中の杭やロープ、海底のゴロタ石、橋脚 etc…
PEはラインをピンと張った状態で硬いものに擦れると、いとも簡単に切れてしまいます。
もともと擦れに非常に弱いのに加えて、PEを使う場合はナイロンやフロロよりもかなり細い糸を使います。
そのため、メインラインにPEを使用する場合には、PEの先端に1mほど擦れに強いライン(ナイロンorフロロ)を結束します。
これを【(ショック)リーダー】といいます)。
リーダー用のライン
ナイロン
フロロ
のどちらか
ショックリーダーとして使用するラインは二択です。
ナイロン or フロロです。
根ズレ対策としては、基本的にどちらでも構いません。
この2つは、PEに比べるとはるかにスレ(擦れ)に強いです。
ラインの「強さ」ってどういうこと?
アングラーがよく使う言葉に「ラインの『強さ』・『強度』」というのがあります。
この言葉には、2つの意味があります。
引張強力
耐摩耗性(根ズレ耐性・スレ耐性)
引張強力って何?
引張強力とは、ラインに荷重をかけた時にどの程度の負荷で切れるか?ということです。
ラインの引張強力は「〇〇lbs(ポンド)」という表示で書かれています。
たとえば、「20lbs」表記のラインの場合、20ポンド未満(以下かな?)の荷重で切れるラインであることを表しています。
これを、ポンド表記と(勝手に)呼んでいます。
これは、ラインに荷重をかけた時にどの程度の負荷で切れるか?ということを表しています。
釣り糸のサイズ表記方法はもう1つあります。 それは、「号数表記」です。
号数表記とは、「3号」「5号」「10号」という表記方法です。
これは、ラインの太さを表示しています。
2010年にナイロンとフロロの統一規格が制定され、同じ号数のラインであればナイロンもフロロも同じ太さです。
ナイロン・フロロ・PEの引張強力
20ポンドの表記のナイロン・フロロ・PEでは、どのラインが引張強力が強いでしょうか?
答えは、同じです。
どれも、20ポンド未満の荷重で切れます。当たり前の話です。
では、同じ号数(太さ)で比較した場合、どのラインが引張強力が強いでしょうか?
引張強力の強さは次のとおりです。
PE >>> ナイロン ≧ フロロ
PEは引張強力がぶっちぎりで強いです。
製品による差はありますが、PEは1号の太さで16ポンドほどあります。これに対して、ナイロンやフロロは1号の太さでだいたい4ポンドほどです。
なので、不意の大型魚が掛かる可能性のあるソルトゲームにおいて、PEは市民権を得るにとどまらず、一気にシェアを奪ってしまいました。PEと、ナイロン・フロロの引張強力は比べものになりません。
これに対して、ナイロンとフロロは、引張強力の差はほとんどありません。
ナイロンの方がわずかにフロロより引張強力が強いという程度です。
フロロ>ナイロンじゃないの?
よく「フロロの方がナイロンより引張強力が強い」と誤解されることがあります。
確かに、フロロは太くて硬いので、同じポンド表記のラインを触ってみると、フロロの方が強そうに感じます。
しかし、そう「感じる」だけです。
実は、同じポンド表記 のライン (ナイロン3ポンドとフロロ3ポンド)であれば、一般的にナイロンよりフロロの方がわずかに太いです。

たとえば、サンラインのリーダーに「システムショックリーダー」というシリーズがあります。
このシリーズのラインナップにはナイロン(NY)とフロロ(FC)があります。
しかし、システムショックリーダーの30ポンドのナイロンとフロロを比べると、各ラインの太さは次のとおりです。


ナイロン = 0.435mm(7号相当)
フロロ = 0.470mm(8号相当)
フロロの方が0.035mmほど太く作られています。
これはなぜでしょうか?
一般的に、フロロをナイロンと同じ太さにしてしまうと、フロロはナイロンと同じ引張強力が保てないんです。
システムショックリーダーのフロロをナイロンと同じ0.435mmで作った場合、フロロでは引張強力が28ポンドとか26ポンドになってしまうということです(たとえば話です)。
ナイロンと同じ30ポンドの引張強力を保つために、フロロはナイロンよりもわずかに太く作られるのです。
強いフロロもある
これまでは一般論ですが、フロロの中には引張強力を売りにしたラインもあります。
たとえば、このページのアイキャッチ画像に使用しているSeaguar Grandmaxショックリーダー(クレハ)です。
画像のような6号の太さのラインであれば、だいたいの製品はナイロンもフロロも22ポンド相当のラインが多いです。
しかし、グランドマックスは、6号の太さで28ポンドの引張強力があります。
つまり、引張強力の強いフロロカーボンです(さすがクレハ!)。
余談ですが、フロロカーボンのラインを原料から作っているのは、日本ではクレハだけです。したがって、管理人的には「フロロといえばクレハ」というイメージがあります。
耐摩耗性って何?
耐摩耗性(根ズレ耐性・スレ耐性)とは、硬いものやザラザラしたものにラインを擦った時にどの程度耐えられるか?ということです。
耐摩耗性は引張強力とは異なり、客観的に数字で表せるものではありません。(たとえば、〇〇lbsの負荷を掛けたら擦り切れたというような計測はできません。)
そのため、昔から「フロロはナイロンより擦れに強い」だとか、逆に「ナイロンの方がフロロよりも擦れに強い」といった情報が錯綜しています。
耐摩耗性は、客観的に甲乙付け難いのです。
そこで、管理人は耐摩耗性について自分なりに実験を行いました。
一般的に、PEは耐摩耗性が弱いと言われます。
ただしPEは、引張強力が強いため、ナイロンやフロロと同じ太さのラインを使うことはありません。ナイロンやフロロよりも細糸を使うことができることがPEの最大のメリットです。
したがって、ナイロンやフロロよりもかなり細いPEの耐摩耗性を検討すること自体に意味はありません。
とにかく、PEはナイロンやフロロよりも耐摩耗性が弱いということだけ念頭に置いておいてください。
ナイロン≒フロロ
耐摩耗性についても、(管理人の感覚としては)「フロロ>ナイロン」という考え方の方がかなり優勢のように思います。
しかし、管理人が耐摩耗性について実験したところによると、ナイロンとフロロの耐摩耗性についてはほとんど違いはありませんでした。
逆に、気持ち「ナイロンの方が強いかなぁ」という印象です。(本当に感覚的な違いです。)
むしろ、ナイロンorフロロの違いによる差よりも、圧倒的に製品による差の方が大きいです。
GT-R Ultra(サンヨーナイロン)と耐摩耗ショックリーダー(山豊テグス)の耐摩耗性なんて、他のラインとは比べ物にならないくらい強かったですよ。
もう、ぶっちぎりです。
なぜフロロ最強説が誕生したか?
管理人が行ったとてもサンプル数の少ない実験によれば、対摩耗性について「フロロ最強!」というほどのフロロの優位性はみられませんでした。それどころか、製品によっては、ぶっちぎりで耐摩耗性の強いナイロンがありました。
それにもかかわらず、 釣り業界では「リーダーはフロロ」「根ズレに強いのはフロロ」「ナイロンは初心者用」という感じで、けっこうな支持を集めているのが【フロロ最強説】です。
では、なぜフロロ最強説が誕生したのでしょうか?
メディアの影響
正直、これが一番大きいと思います。(というより、95%くらいはこの理由だと思います)
多くのアングラーがメディアでさんざっぱら「フロロは根ズレに強いぜ」とか「根が荒い場所ではフロロを使いましょう」とか、口に出すまでもなく当然のようにリーダーとしてフロロを使っているとか…。
こういう状況を目の当たりにしていれば、嫌でも「根ズレにはフロロ最強」みたいな印象になってきます。
実際のところ耐摩耗性の差なんて微々たるものです。しかし、その微々たる差が、0:100(ナイロン:フロロ)くらいの印象になってきます。とにかく「根ズレにはフロロ」だと。
しかし、サンプルの少ない実験結果だけみると、ナイロンとフロロの根ズレ耐性なんてほとんど差がありませんし、擦れる角度によってはナイロンもけっこう切れません。
さらにいえば、GTRウルトラと耐摩耗ショックリーダーは、他のライン(フロロ含む)と比べものにならないくらい根ズレに強いですよ。
触ったときの印象
フロロは太くて硬くて張りのあるラインです。
ラインが太くなればなるほど、触り比べたときにこの差が顕著に現れます。
ナイロンとの差は歴然です。触り比べればすぐにわかります。
そして、(人間の正常な感覚だと思いますが)たとえ擦れに弱いラインであろうが、引張強力の弱いラインであろうが、太くて硬くて張りのあるラインを触れば、直感的に強そうに感じます。誰だってそうだと思います。
初めてPEを触った人は「こんな裁縫糸よりも細い糸で大丈夫?」と感じる人が少なくないと思います。
しかし、実際に使ってみると、PEは引っ張ってもなかなか切れません。
「大丈夫?」と感じるのは単なる印象にすぎません。
それと同じです。フロロは触った時に「強そう」な印象を受けます。
しかし、あくまで「強そう」という印象にすぎません。実際はナイロンとほとんど変わりません。
ラインの削れ方
実際に根ズレテストをして実感したのですが、ナイロンとフロロのラインの削れ方って、実はかなり違うんですよ。

パッと見でどれが一番痛々しく見えますか?
おそらく、多くの人にとって「ナイロンが痛々しい」と感じると思います。
ナイロンは、擦れたときにラインの表面がザラザラ、ブツブツ、ギチギチになってきます。
まるで死闘の果てのように…。
とにかく、ナイロンの傷は見ていて痛々しいです。
これ対してフロロは、ライン表面がササクレのように繊維だけめくれてきます。
しかしフロロは、ライン表面の傷こそ浅そうに見えますが、擦れが一定数に達すると簡単に切れます。
ちなみに、真ん中のラインは耐摩耗ショックリーダーですが、これは見た目にも傷ついてる感じが少ないです。
まさに圧倒的。
ラインの選び方
メインライン
✔ ナイロンはとにかく万能
✔ 飛距離が必要な場合はPE
✔ ソルトではPEが有利
✔ 根ズレの多いポイントはPEは×
基本的にナイロンを使っていて問題が生じることは少ないです。
それくらいナイロンは優秀です。
飛距離や引張強力が必要な場合は、PEを使います。
ただし、障害物の多い場所ではPEは×です。ナイロンを使いましょう。
ショックリーダー
✔ ナイロンはとにかく万能
✔ フロロでも基本的には問題なし
根ズレ防止のためのショックリーダーはナイロンでもフロロでもどちらでもOKです。
あえてフロロを使う理由がなければ、ナイロンでいいと思います。
ただし、ロッドが柔らかいといった理由によりフッキングが甘くなる傾向があるときは、伸びの少ないフロロの方がしっかりフッキングできるます。
逆に、タックルバランスが硬めで魚を弾きやすい傾向があるときは、ナイロンの伸びを利用してショックを吸収すると魚が乗りやすくなります。