釣り用のリールには主にベイトキャスティングリールとスピニングリールがあります。
慣れてしまえばどちらを使用しても構いません。
でも、リールの特徴に由来するメリット・デメリットが存在します。
このページではそれぞれのリールの特徴についてご紹介します。
スピニングリールの特徴
スピニングリールとベイトキャスティングリールにはそれぞれに特徴があります。
慣れてくると、その特徴に応じて使い分けをするのが一般的です。
まず、スピニングリールの特徴は次のとおりです。
・大きなライントラブル(大惨事)になりにくい
・風が強くても投げやすい
・ドラグの強さ・滑り出しに優れている
・重いルアーが投げにくい
・ラインの放出量をコントロールしにくい
・右利き用しか存在しない
といったところです。
ビギナーでも扱いやすい
スピニングリールはビギナーでも扱いやすいリールといわれています。
それは、ベイトリールで必要とされる初期設定がいらないからです。
ベイトリールでは、ルアーごとに2種類のブレーキシステムを設定しなければなりません。
この点については第1回の記事で大雑把にご紹介しました。
ベイトリールはブレーキを設定することでラインの放出量(スプールの回転数)をコントロールする必要があります。
これに対して、スピニングリールは、ベイトリールのようなルアーごとのブレーキ設定は必要ありません。
釣具屋で買った状態のまま使用することができます。
唯一、ドラグという機構だけは弄ったほうがいいです
状況に合わせてルアーごとにブレーキを設定するという小難しいことがいらないので、スピニングリールはビギナーでも扱いやすいといわれています。
大きなライントラブルになりにくい
ベイトリールでは『バックラッシュ』と呼ばれるベイトリール特有のライントラブルが発生することがあります。
これは、ベイトリールのブレーキ設定が適切にできなかったことに起因するライントラブルです。
ちなみに、これ↓がバックラッシュです。
久しぶりに即死のバックラッシュ pic.twitter.com/FZ5hyCbMYB
— 理夢 (@PMXT5Tm01D4GrsS) July 3, 2022
スピニングリールは、その構造上、ベイトリールのようなバックラッシュは発生しません。
たしかに、スピニングリールにもスピニングリール特有のライントラブルがあります。
しかし、バックラッシュのような大惨事になるライントラブルはスピニングリールではまれです。
大きなライントラブルが起こりにくいのがスピニングリールの特徴です。
また、大きなライントラブルが起こりにくいというのは、同時に、ビギナーでも扱いやすいということも意味しています。
風が強くても投げやすい
風が強いときでも投げやすいというのも、ブレーキ設定の不要なスピニングリールの大きな利点です。
ベイトリールのブレーキというのは、ルアーの重さだけではなく、ルアーの空気抵抗や風の強弱も考慮して設定する必要があります。
ベイトリールのブレーキは風を考慮して設定しなければ、やはりバックラッシュするリスクがあります。
反対に、そもそもブレーキがなくても投げられるスピニングリールは、土砂降りの雨であろうが風が強かろうが、些細なことは気にせずに扱うことができます。
内陸の水域で釣りをするのと異なり、海や河川といったオープンエリアがメインフィールドとなるシーバスフィッシングにおいて、風が強くても無理なく扱えるというのはスピニングリールの大きなメリットです。
ドラグの強さ・滑り出しに優れている
スピニングであれベイトであれ、リールにはドラグと呼ばれる機構が備わっています。
ドラグとは、ラインが巻かれているスプールを逆回転させて、魚の引きに合わせてラインを送り出すための機構です(第1回参照)。
このドラグの強さや調整幅に影響を与えるのがドラグワッシャーと呼ばれる部品です。
そして、このドラグワッシャーの数は、ベイトリールに比べてスピニングリールのほうが多いです。
ドラグワッシャーの数が多いため、スピニングリールはベイトリールよりもドラグ設定の調整幅が広くなります。
それだけ、スピニングリールのドラグの強さや滑らかさは優れています。
重いルアーが投げにくい
スピニングリールは、ルアーをキャストするときに、人差し指の腹にラインを引っ掛けてキャストします。
指に掛かっているのは細くて強いラインが1本だけです。
そのため、スピニングタックルで重いルアーをキャストすると人差し指の腹に大きな負荷が掛かります。
指の皮の薄い人は、キャストの瞬間にラインで人差し指の腹が切れることもあります。
これに対して、ベイトリールでキャストするときは親指でスプール全体を押えます。
スピニングリールは人差し指に大きな負荷が掛かるため、重いルアーを投げるのには向いていません。
ラインの放出量をコントロールしにくい
ベイトリールと違って、スピニングリールにはブレーキ機構が搭載されていません。
そのため、ややこしいブレーキ設定をしなくていい反面、ラインの放出量をコントロールするためには自分の指を使います。
スピニングリールは、無風状態でない限り、ほぼ必ずといっていいほどキャスト毎に指でラインの放出量をコントロールすることになります。
放出量のコントロールは、通常、リールを握っている手の人差し指でリールのスプールエッジを触って行います。
これをフェザーリングと呼んでいます。
人差し指でスプールエッジを触るだけなのですが…
キャスト時になかなか人差し指が出ない人ってけっこう多いんですよね(;´・ω・)
ちなみに、子どもの頃は僕もそうでした。
さらに、女性や手の小さい男性はけっこう難しく、リールを握っていないほうの手を使うこともあります。
ラインの放出量をコントロールしにくいのはスピニングリールのデメリットです。
右利き用しか存在しない
スピニングリールはハンドルを左右どちらでも装着することができます。
そのため、スピニングリールには左右の区別はないと誤解されることがあります。
しかし、スピニングリールは、ローターの回転方向は変えることができません。
ローターは常に時計回りに回転します。
これはなぜか?
右利きの人がキャストに際して人差し指でラインを拾うときに、右手の人差し指でラインを拾いやすいからです。
手元にリールを準備して、実際にラインを拾ってみるとよくわかると思います。時計回りのほうがラインを拾いやすいということが。
左利きの人にとっては慣れるまでやや扱いづらいのもスピニングリールのデメリットです。
ベイトキャスティングリールの特徴
ベイトリールの特徴は
・一瞬でラインを放出できる状態にできる(手返しがいい)
・糸を巻き取るときに糸ヨレしにくい
・感度がいい
・ラインの放出量をコントロールしやすい
・左利き用も存在する
・軽いルアーを投げにくい
・ブレーキ設定が面倒くさい
・バックラッシュというライントラブルが発生する
といったところです。
巻き上げパワーが強い
ベイトリールの最大の特徴は、巻き上げパワーが強いということです。
ベイトリールは、スピニングリールと比べて、ハンドルを回転させたときのパワー伝達のロスが少ないのが特徴です。
これについて詳細は第3回の記事でご紹介します。
そのため、巻き抵抗の大きいメタルバイブやロングビルミノーを使うときはベイトリールの利点が活きてきます。
一瞬でスプールフリーにできる(手返しがいい)
スピニングリールは、ラインをフリーの状態(ラインを放出できる状態)にするには、ロッドを握っている手と反対の手でベールを起こす必要があります。
これに対して、ベイトリールにはクラッチレバーと呼ばれる機構があります。リールを握っている手の親指でクラッチレバーを押えるだけでラインをフリーの状態にできます。
ショートキャストが多い釣りではメリットが大きいです。
ロングキャストの多いシーバスフィッシングではそれほど大きな利点はありません。
糸を巻き取るときに糸ヨレしにくい
スピニングリールでは、ラインローラーに引っ掛かったラインをローターが回転することでスプールに巻きつけていきます。
ラインローラーを経由してラインをスプールに巻き付けていく過程でラインにヨレが発生してしまいます。
これに対してベイトリールでは、スプールが回転することでスプールが直接ラインを巻き取っていきます。
そのため、ベイトリールでは、ラインの巻取りによる糸ヨレというのはほとんど発生しません。
感度がいい
これは、実際のところはわからないのですが…
ベイトリールはロッドを握るときにリールを包み込むように持ちます。
そのため、魚のアタリや障害物・ボトムなどのにルアーがコンタクトしたときに、リールを持つ左手に振動がダイレクトに伝わってくる…ような感じがあります。
科学的データは知りませんが、手のひら全体でアタリを受け取るような感触があるのは明らかです。
ラインの放出量をコントロールしやすい
ベイトリールでは、ルアーの重さや空気抵抗、風の強弱を考慮してブレーキを設定する必要があります。
ベイトリールは、メカニカルブレーキと遠心(マグネット)ブレーキという二種類のブレーキでラインの放出量を緻密にコントロールします。
最近では遠心ブレーキではなく、DC(デジタルコントロール)機構と呼ばれるオートマチックなブレーキシステムも存在します。
ライン放出量のすべてを指でコントロールするスピニングリールと異なり、ブレーキシステムのあるベイトリールはラインの放出量を格段にコントロールしやすいです。
左利き用も存在する
ベイトリールにはローターのような機構がありません。
ハンドルを巻けば直接スプールが回転します。
そのため、左ハンドルのベイトリールは、純粋に左利き用のベイトリールです。
もちろん、右利きの人が使っても問題はありません
軽いルアーを投げにくい
第1回の記事でご紹介したとおり、ベイトリールのラインが放出される構造は
トイレットペーパー
です。
ラインが放出されるときは、常にスプールも回転しています。
ルアーが重ければ、ルアーがラインを引っ張ってスプールを回転させてくれるので問題ありません。
でも、軽いルアーでラインを引っ張ってスプールを回転させるのは難しいです。スプールのブレーキ設定をかなり弱くする必要があります。
ところが、ブレーキ設定を弱くすると、今度はバックラッシュのリスクが上がります。
ベイトリールでは、軽いルアーを投げるときにスプールの回転が抵抗になるため、軽いルアーを飛ばすのが難しくなります。
ブレーキ設定が面倒くさい
これまで何度かご紹介していますが、ベイトリールを使うときは常にブレーキ設定を気にしておかなければなりません。
ブレーキの設定はルアーの重さによって変える必要があります。
ルアーの空気抵抗によって変える必要があります。
風の強さによっても変える必要があります。
風の向きによっても変える必要があります。
バックラッシュしないように、スプールの回転数をとにかく微調整する必要があるのはベイトリールのデメリットです。
バックラッシュはビギナーの大敵
ベイトリールを使わない人の大半が、バックラッシュと呼ばれるライントラブルを嫌がってベイトリールを避ける傾向にあります。
久しぶりに即死のバックラッシュ pic.twitter.com/FZ5hyCbMYB
— 理夢 (@PMXT5Tm01D4GrsS) July 3, 2022
どれだけベイトリールに慣れていてもバックラッシュは起こることがあります。
もちろん、プロアングラーでも…です。年に1~2回くらいはバックラッシュが起こってしまうそうです。
ベイトリールを使う以上、バックラッシュのリスクは常につきまといます。
ビギナーはスピニングリールから始める
シーバスフィッシングに限らず、海のルアーフィッシングを始ようと思うルアーフィッシングビギナーにとっては、まずはスピニングリールから使ったほうがいいでしょう。
理由は三つあります。
オープンエリアは風が強い
一つめの理由は風の影響です。
海や河川といったオープンエリアでは、日が昇ってくれば海から陸に向かって風が吹きます。
住宅街の中にある野池だったり、山間に囲まれたダム湖やリザーバーとは違います。
海は、風の影響があまりないという日はほとんどありません。
海や河川でベイトリールを使うとなると、常にブレーキ設定に気をつかう必要があります。
これはビギナーにとっては煩わしい過程です。
シーバスフィッシングはナイトゲームが多い
二つめの理由はナイトゲームの可能性です。
シーバスフィッシングは、近年こそデイゲームも当たり前になりました。
でも、オカッパリシーバスは、やはり夜のほうが釣りやすいです。
そして、ナイトゲームでは、ルアーの飛行姿勢がほとんど見えません。
ルアーの飛行姿勢や飛距離を確認しながらブレーキを設定する必要があるのに、ルアーの飛行姿勢や飛距離がわかりにくいのは致命的です。
ビギナーがナイトゲームでベイトリールを使うのは難易度が格段に上がります。
ドラグ性能はスピニングリールが有利
三つめの理由はドラグ性能の問題です。
海や河川で釣りをしていると、思わぬ大物が掛かることがあります。
青物やマダイ、ランカーシーバスのスレ掛かり…など。
初めから強いロッド・太いライン・太軸フックというセッティングで、ドラグを使わずに魚とやりとりをするつもりであれば構いません。
しかし、通常、フックに関してはシーバス向けのノーマルフックのままの人が圧倒的に多いと思われます。
強いロッド・太い糸・ノーマルフックというタックルバランスでドラグを出さずに魚とやりとりすると、思わぬ大物が掛かったときに簡単にフックを伸ばされてしまうことにもなりかねません。
以上のとおり、ビギナーが海や河川でルアーフィッシングを始めるときは、一般的にはスピニングリールのほうがメリットが大きいといわれています。
リールは特徴を理解して使い分ける
一般論でいえば、海や河川のルアーフィッシングを始めたビギナーにとってはスピニングリールのほうがメリットが大きいです。
とはいえ、ベイトリールにはベイトリールのメリットもあります。
バイブレーションやロングビルミノーのような抵抗の大きなルアーを使う場合、巻きパワーの強いベイトリールの方がはるかに巻き取りやすいです。
また、200mmクラス(50g以上)のやや大きめのルアーを使うときはベイトリールの方がはるかに投げやすいです。
それぞれのリールの特徴を理解したうえで適切に使い分けましょう。