リップ付のシンキングミノーとリップのないシンキングペンシル。
どちらもシーバスフィッシングに欠かすことのできないジャンルのミノーです。
対応レンジやフォルムも似ているこれらのルアー。
このページでは、シンキングミノーとシンキングペンシルの使い分けについてご紹介します。
最近の釣りメディアでは、釣りに関する情報がメーカーのために中・上級者目線で発信されるようになりました。ナチュラルリリースでは、ビギナー目線で語られることが少なくなった「釣りに関する『キホンのキ』」をビギナー目線で発信しています。
2つのルアーの共通点
シンキングミノーとシンキングペンシルの共通点は
ルアーを巻かないとどんどん沈む
ことです。
フローティングタイプのルアーと異なり、どちらのルアーも放置すれば沈みます。
その沈下スピードも、ルアーのモデルごとに違いはあるものの、どちらのルアーも似たようなスピードで沈みます。
という程度の差です
そのため、(理屈のうえでは)どちらのルアーでも水深~2mくらいまでであれば狙うことが可能です。
シンキングミノーの特性
・速く動かすとキビキビ泳ぐ
シンキングペンシルと比べた場合のシンキングミノーの特性として、シンキングミノーはシンキングペンシルよりも
レンジキープ能力に優れている
という点が挙げられます。
シンキングペンシルと異なり、シンキングミノーにはリップが付いています。
このリップが水の抵抗を受けるため、浮き上がりを抑えて一定のレンジをキープしてくれます。
反対に、シンキングペンシルにはリップがないため、シンキングミノーと同じスピードで速巻きすると、シンキングペンシルの方が浮き上がりやすくなります。
シンキングミノーのもう一つの特徴として、シンキングペンシルよりもキビキビ泳ぐことが挙げられます。
シンキングペンシルの多くは、ラインアイを支点にして、ルアーのお尻を左右にフラフラと振るアクションになっています。
これをテイルスイングと呼んでいます。
ゆっくりした速度で巻くとわずかに揺らぎ、ルアーを動かすスピードを上げるにつれてスイング幅が大きくなります。
これに対して、シンキングミノーのアクションは、ローリング・ヨーイング(ウォブリング)・ピッチングという3つの要素から成り立っています。
この3つの動きの組み合わせによってキビキビした泳ぎが実現されます。
これらが、(シンキングペンシルと比較した時の)シンキングミノーの特性といえます。
シンキングペンシルの特性
・浅いレンジをゆっくり引ける
シンキングミノーと比べた場合のシンキングペンシルの特性として、シンキングペンシルはシンキングミノーよりも
よく飛ぶ(飛ばしやすい)
という点が挙げられます。
そもそも、シンキングミノーというのは空気抵抗の大きい飛ばしにくい部類のルアーです。そのルアーが最適な飛行姿勢を保持して、飛距離を稼げるように設計されています。
そのため、キャストに手慣れたアングラーが投げるとかなりの飛距離を叩き出せますが、キャストに不慣れなビギナーが投げると安定した飛距離を出すことが難しくなります。
これに対して、シンキングペンシルというのは、多くのメーカーで90mm前後(15g前後)のサイズを採用しているものが多いです。
つまり、シンキングペンシルは、小粒で空気抵抗が少いわりにはウエイトがあるため、キャストに不慣れなビギナーが投げてもけっこう飛んでくれます。
また、シンキングペンシルのもう一つの特徴として
浅いレンジをゆっくり引ける
ということが挙げられます。
シンキングミノーもシンキングペンシルも、リールを巻く手を止めると、どんどん沈みます。
この点で両者に違いはありません。
シンキングミノーとシンキングペンシルで大きく違うのがルアーの浮き上がりやすさです。
リップが搭載されたシンキングミノーは、リップが水の抵抗を受けることでボディの浮き上がりを抑え、その水圧がアクションへと転換されます。
これに対して、シンキングペンシルの多くはリップを持たないため、シンキングミノーと同じ速度で巻くと浮き上がりやすくなります。
その結果、シンキングペンシルの方がシンキングミノーよりも浅いレンジを引いてくることが可能になります。
狙うレンジ(水深)とスピードで使い分ける
レンジとスピードで使い分ける
これがシンキングミノーとシンキングペンシルの最も基本的な使い分けです。
シンキングミノーもシンキングペンシルも、リールを巻く手を止めるとどちらも沈みます。
「沈む」という両者に共通する特性から、シンキングミノーとシンキングペンシルの使い分けを難しく感じるビギナーもいるようです。
しかし、シンキングペンシルは、その浮き上がりやすさという特徴から
シャローレンジ(浅場)を攻略するためのルアー
として使われることがほとんどです。
目安としては、水深50cm前後くらいまでの水面付近がシンキングペンシルの主戦場になります。
この付近のレンジを狙う時はシンキングペンシルの出番です。
シンキングペンシルは、多くのモデルがシャローレンジ攻略のために設計されていることを押えておきましょう。
逆に、水深80cmとか、100cm以深を狙う時はシンキングミノーの出番です。
このレンジをシンキングペンシルで狙おうと思うと、かなりスローにリールを巻く必要があります。
シンキングペンシルは、かなりゆっくり巻かなければすぐに浮いてきてしまいます。
そのため、深めのレンジを狙う時はシンキングミノーを使います。
もう一つの着眼点として重要なのがスピードです。
深場を狙う場合でも、ゆっくりと魅せたいのであればシンキングペンシルで狙うことができます。
シンキングミノーというのは、リールをゆっくり巻くとほとんどアクションしません。
そのため、あえてシンキングペンシルで深場をじっくりと攻める…というのも一つの使い方です。
逆に、水深60cmくらいを速く引きたい時はシンキングミノーという選択肢もあり得ます。
このように、その特性上、一見すると使い分けに迷いそうなシンキングミノーとシンキングペンシルですが、実は使い分けはかなりシンプルです。
レンジとスピードの組み合わせで最適なルアーを選びましょう。
アピールのミノー? 食わせのシンペン?
昔のメディアでは
と語られることがありました。
しかし、シーバスがルアーを認識する過程と捕食に及ぶトリガー(引き金)というのは別問題です。
シーバスは視覚でルアーを認識した後、視覚又は側線への信号刺激によって捕食行動に及ぶといわれています。
第12回までの記事でルアーの基本的な種類や特徴、使い方をご紹介しました。このページでは、魚が水中においてどのようにルアーを感知・認識しているのか?「魚がルアーを見つける方法」についてご紹介します。なお、この[…]
以前、某釣り系SNSサイトでルアーの『波動』について話題になったことがありました。ナチュラルリリースでも話題に乗っかって、その話題に沿うかたちでルアーの『波動』についてご紹介したことがありました。ただ、その記事はビ[…]
ゼロから始めるシリーズのルアー編第20回の記事で「シーバスがルアーを感知(発見)するうえで、『波動』と呼ばれる水粒子の動きがどれほど影響があるのか?」ということについて記載しました。この記事では、シーバスがルアーを発見する[…]
したがって、リップが付いていて水をよく撹拌するかどうか(波動が強いかどうか)は、ルアーを見つけてもらうことと直接には関係ありません。
シーバスにルアーを見つけてもらうためには、水の撹拌よりも、ルアーの(見た目の)動きの大きさや、ルアーのフラッシング等の見た目の影響が大きいといわれています。
また、ナチュラルな泳ぎの方が魚に食わせやすい…というのも釣り人の経験則以外の根拠はありません。
ルアーでシーバスが釣れる仕組みはこのように考えられています。
しかし、シーバスの信号刺激になる水粒子の振動の周波数は解明されていません。
どれくらいの周波数であればシーバスに効くのか…?
それが分からない以上は、(基本的には)すべてが想像の世界です。
そのため、「シンキングペンシルの方が食わせやすい…というのは状況次第」というのが答えになるでしょう。
したがって、ミノーの方がアピールが強いとか、シンキングペンシルの方が食わせやすい、といった想像レベルの話を「そうなんだ」と決めつける必要もありません。
リップ搭載シンペン? シンキングミノーじゃないの?
アクションが明確に違う
近年では、リップを搭載したシンキングペンシルが登場しています。
これらは、シンキングペンシルの良さ(飛距離やシャローレンジ)を残しつつ、シンキングペンシル特有の浮き上がりを抑えて一定のレンジを引きやすくするために生まれたルアーです。
ところで、ビギナーの中には
という疑問が生じるかもしれません。
これについては、アクションという点でシンキングミノーと明確に区別することができます。
リップ付シンペンにカテゴライズされるルアーに共通しているのがテイルスイングアクションです。
リップ付シンペンは、形はミノーに似ていても、ミノー特有のウォブンロールアクションではありません。
そのため、一応はシンキングミノーとシンキングペンシルを区別することは可能です。
呼び方を区別する必要はない
一応、区別することは可能ですが…あまり区別する必要はない、というのが僕の感想です。
すでにご紹介しましたが、シーバスの捕食行動のトリガーになる水の振動の周波数というのは解明されていません。
つまり、ウォブンロールがいいのか?テイルスイングがいいのか?というのは
その場にいるシーバスに聞かなければ分からない
というのが答えです。
リップ付シンキングペンシルをシンペンと呼ぶか、ミノーと呼ぶか。
その呼び方にこだわる必要はまったくありません。
そのルアーが、実際にどういうアクションをするか?
それを把握しておく方が重要です。
シンキング系ルアーの使い分けはスピードとレンジで考える!
シンキングミノーとシンキングペンシルの使い分けは十人十色です。
10人いれば10通りの考え方があるかもしれません。
ビギナーにとっては
と頭を悩ませることになるでしょう。
そのため、ビギナーにとっては、分かりやすい違いに着目してシンプルに使い分けることがベターです。
シンキングミノーの特性としては、浮き上がりにくくレンジキープ能力に優れています。また、ゆっくり巻くとあまり泳ぎませんが、やや速めに巻くとキビキビと泳いでくれます。
そのため、水深1mくらいのレンジでキビキビとアクションさせたい時はレンジキープ能力に優れたシンキングミノーが使いやすいでしょう。
シンキングペンシルの特性としては、浮き上がりやすいため、水面付近でゆっくりとルアーを魅せることができます。
この場合には、浅いレンジをキープしやすいシンキングペンシルの出番です。
また、シンキングペンシルの方がシンキングミノーよりも飛距離が出しやすいため、沖の潮目を流すように使う、という使い方も可能です。
ルアーはエサの代替物ではなく道具(タックル)です。
それぞれのルアー(道具)の特性に合わせて、使いやすいシチュエーションで使う。
これが道具であるルアーの使い方の本質です。
かつては「アピールのミノー」「食わせのシンペン」と言われることもありました。
でも、ビギナーの頃に想像の話にこだわる必要はありません。
そもそもシンキングミノーとシンキングペンシルは、それぞれの得意とするレンジとスピードが異なります。
ビギナーの頃には、分かりやすい違いに着目してシンプルに使い分けをしてみましょう。