第1回の記事ではシーバスフィッシングに使われるルアーの種類と、ルアーの選び方についてざっくりとご紹介しました。
このページでは、シーバスフィッシングで使われるルアーである【シンキングペンシル】についてご紹介します。
シンキングペンシルとは
シンキングペンシルとは、ペンシルベイトの形状に似ているものの、浮かない設定(沈む設定)になっていて、水面直下~で使用するルアーの総称です。
シーバスフィッシングでは「シンペン」と略されることが多いです。
「シンキング(沈む)」ペンシルという名前から沈めて使うルアーであると誤解されがちですが、基本的には水面~水面直下~シャローレンジで使われるものがほとんどです。
シンキングペンシルは、もともとバスフィッシングのカテゴリーでわずかに存在しているだけでした。
その代表格がワンダー(ラッキークラフト)です。
シーバスフィッシングにおいては、(おそらく)ワンダーからシンキングペンシルの歴史が始まりました。
そして、シンキングペンシルはシーバスフィッシングシーンにおいて目まぐるしい進化を遂げ、シーバスフィッシングにおいては欠かすことのできないルアーとなりました。
シンキングペンシルの特徴
アクションのタイプ
シンキングペンシルのアクションは大きく分けて3種類です。
・S字のスラロームを描くもの
・まったくアクションせずに、ただ真っすぐ進むだけのもの
シーバスフィッシング用のシンキングペンシルでもっとも多いのが頭を支点にしてお尻だけを振るものです。
パッケージでは「S字アクション」と謳っていても、そのほとんどがS字スラロームにはなっておらず、お尻だけを振るタイプのアクションになっています。
S字スラロームを描くものの代表格はエアオグルSLM(ノースクラフト)、スネコン(ブルーブルー)、ジグザグベイト(ポジドライブガレージ)です。
まったく動かないものの代表格がノガレ(ピックアップ)です。
どの動きがいいということはありません。
スタンダードなお尻振りタイプがいいか、S字スラロームがいいか、まったく動かないタイプがいいか…
どの動きがいいかは、その時その場所にいるシーバスごとに違うので、特にどのタイプのアクションに優位性があるということはありません。
どのタイプのアクションのシンキングペンシルにも共通しているのが、流れ効いた場所で、流れに反応してイレギュラーなフラつきアクションを発生させます。
リップがなく、水中の流れに反応してアクションするのがシンキングペンシルの特徴です。
アピールは控えめ
シンキングペンシルの大きな特徴の一つに、どのアクションのタイプのルアーでも動きがかなり控えめということが挙げられます。
シンキングペンシル特有のフラつきアクションですが、ビギナーの頃にシンキングペンシルを使うと、あまりにもルアーの抵抗がなくてアクションしているかどうかわからなく、とても不安になります(笑
より多くのシーバスにルアーを見つけてもらうという点だけから見ると、やや不利なルアーといえます。
飛距離が抜群
シンキングペンシルのもう一つの大きな特徴が、とにかくよく飛ぶということ。
よく飛ぶがゆえに、シンキングペンシルがよく釣れることを知っている中級者アングラーは、シンキングペンシルを多投しがちになります。
投げていて気持ちいいから。
もちろんシンキングペンシルだけ投げるのは問題がありますが、実際のところ、それだけでもハマることがあります(笑
話が逸れましたが、シンキングペンシルはこれだけ投げていてもまったくストレスにならないほどよく飛びます。
浮き上がりやすい
シンキングペンシルにはミノーのようなリップが付いていません。
なので、ルアー自体が水を掴んで水深をキープしてくれることはありません。
また、ルアーのウエイトも長さのわりにはそれほど重くありません。
バイブレーションは60mmで15gくらいありますが、一般的なシンキングペンシルは100mmで15gくらいだったりします。
そのため、バイブレーションと同じ速度で巻いても簡単に浮いてきてしまいます。
浮きやすいということは、見方を変えれば表層を引きやすいということができます。
その反面、やや沈めて使おうと思うとルアーの水深をキープするのが難しいルアーといえます。
シンキングペンシルが釣れる理由
シンキングペンシルのアクションをビギナーが見ると、一見して、「釣れそうにない動き」と感じることが多いでしょう。
動いているか動いていないかわからないようなフラフラした動きです。
このルアーでなぜシーバスが釣れるのか?
他のルアーにないナチュラルな揺らめき
シンキングペンシルが釣れる理由の一つに、他のルアーにはないフラつきアクションが挙げられます。
シーバスは水の流れに着く魚です。
流れの中にいるベイトにはとても反応がいいです。
また、シンキングペンシルはリップのないルアーであるため、流れの効いた場所に差し掛かると、流れにかなり敏感に反応して、身を任せるようにフラつきます。
揺らぎます。
この流れに反応しやすいというシンキングペンシルの特徴と流れに着いて流れの効いた場所でベイトを捕食するというシーバスの習性がベストマッチしています。
シンキングペンシルはシーバスととても相性のいいルアーなのです。
シーバスは水面のルアーをかなり認識している
シーバスは水面〜水面直下にあるルアーをかなり認識している魚です。
アクションをしていようがしていまいが、水面〜水面直下で動くものに対してかなり好反応を示してくれます。
これはけっこう頻繁に体験することですが…
シーバスは、アクションしていない回収中のルアーにも普通に食いついてきます。
僕がルアーをキャストした直後に別の方向から捕食音が聞こえてきたので、捕食音が聞こえた方向にキャストし直そうとルアーを急いで回収していたら、水面を滑るルアーにシーバスがバイトしてきたことが何度もあります。
しかも、時には、リアフックがラインに絡んでまったくルアーの体をなしていないルアーでもバイトしてきます。
シーバスは水面〜水面直下で動くものに対してとても反応の良い魚なので、水面〜水面直下でゆっくりとナチュラルに魅せることのできるシンキングペンシルは、シーバスフィッシングに欠かせないルアーなのです。
シンキングペンシルの使い方
タダ巻きがとても重要
シンキングペンシルの基本的な使い方はフルキャストしてからのタダ巻きです。
シンキングペンシルは圧倒的に飛距離が出る(飛距離を出しやすい)ので、広範囲をサーチするのに適したルアーです。
そして、フルキャストからのアクションはタダ巻きがメインです。
90%くらいはタダ巻きです。
シンキングペンシルは他のルアー以上にタダ巻きが重要になるルアーです。
その理由は3つ。
タダ巻きが重要な理由の1つは、安定したお尻振りアクションからの不規則なフラつきアクションがシーバスのバイトを誘発しやすいということ。
そして、不規則のアクションというのは、規則的な動きがあってこそ生まれるアクションです。
この不規則なアクションを活かすためには、シンキングペンシルを使うときにはタダ巻きの安定性ということがとても重要になります。
タダ巻きが重要な2つめの理由に、浮き上がりやすく、止めたら沈んでしまうというシンキングペンシルの特徴があります。
ほとんどのシンキングペンシルにはリップがないので、リップによる水の掴みがなく、ルアーのスピードを上げてしまうと徐々に浮き上がってきてしまいます。
つまり、斜め上方向に向かって引っ張ってくることになってしまいます。
これでは、シーバスが捕食ゾーンとしているレンジから無意識のうちに外れてしまいかねません。
逆に、シンキングペンシルは表層を狙うルアーなのに、リールを巻く手を止めると沈んでしまいます。
つまり、リールを巻くスピードが遅くなると徐々に水深を下げていってしまいます。
そうすると、スピードが速いときと同じく、シーバスの捕食ゾーンからルアーが外れてしまう可能性があります。
シンキングペンシルはレンジコントロールが難しいルアーだからこそ、一定のレンジをキープするために安定したタダ巻きが重要になります。
タダ巻きが重要な3つめの理由は、リップがないために、ロッドワークによるアクションが安定しないということ。
すべてのシンペンがそうだというわけではありませんが、シンキングペンシルはリップがなくて水を掴みにくいので、流れの強いところでロッドワークによるアクションを入れると「グリンッ!」と回転してしまうものがあります。
手練れたアングラーであれば問題ないでしょうが、一般的にシンキングペンシルは、アングラー側で意図したアクションが作り出しにくいのでタダ巻きで使うのがおすすめです。
フォールで魅せられるシンペンもある
すべてのシンキングペンシルにこの機能が備わっているわけではありませんが、シンキングペンシルの中には、何もせずに沈めているだけでボディを揺らしながら沈んでいくものがあります。
おかっぱりアングラーにはあまり馴染みがないかもしれませんが、シーバスってルアーのフォールに対してけっこう好反応を見せる魚です。
船から青物や根魚を狙ってジグを落としていると、シーバスはジグをしゃくる前に食ってくることがかなり多いです。
ショアからメタルジグを投げていても、フォール中にシーバスが食ってくることがけっこうあります。
シーバスはフォールに対して好反応を示してくれる魚ので、揺れながら沈んでいくタイプのシンキングペンシルはフォールで魅せて誘うこともできます。
シンキングペンシル使用上の注意点
シーバスとの距離感に注意!
シンキングペンシルはアピール力が控えめなので、深い場所からシーバスを引っ張ってくる力はあまりありません。
なので、シンキングペンシルを使う場合にはシーバスとシンキングペンシルとの距離感が重要になります。
たとえば、僕の場合、水面〜水面直下でアプローチするシンキングペンシルであれば、使うのはせいぜい水深1.5mくらいまでのポイントでしょうか。
それより深いポイントであれば、そのシンペンは使いません。もっと深いレンジを攻めやすい別のシンペンを使います。
もちろん、水深の深い場所であっても、表層を意識した浮いているシーバスはいるので、水深のある場所で使ってはダメというわけではありません。
ただ、シンキングペンシルは、水深の深い場所からシーバスを引っ張ってくる力が弱いので、表層を引くためのシンペンを水深のある場所で使うのは効率的ではありません。
なるべく、シーバスとルアーとの距離が近くなるような場所で使います。
深いレンジのシーバスをシンキングペンシルで狙いたいときは、重めのシンキングペンシルで深いレンジを引きやすいものを使いましょう。
投げるタイミングに注意!
これもシンキングペンシルのアピール力と関係があるのですが、そのポイントで投げる最初のルアーとしてはシンキングペンシルは不向きなルアーです。
アピール力が控えめのでシーバスに気付いてもらいにくいし、アプローチできるレンジも限られます。
そのうえ、使い方もスローなタダ巻きが基本なので、ポイントをサーチするテンポがどうしても遅くなります。
なので、僕の場合、シンキングペンシルを最初に投げるのは以下のような限られた場合です。
・遠くの潮目やボイルを狙いたいとき
・捕食音が散発的に聞こえてくるなど、シーバスが水面を意識していると思われるとき
まず、自分が熟知しているポイントで、シンキングペンシルがあなたにとってそのポイントでの実践ルアーであるならば、そのときは迷わずシンキングペンシルを使いましょう。
他人の意見云々よりも、目の前のポイントについてはあなたの方がよく分かっているはずなので。
次に、潮目や捕食音など、自分の立ち位置から遠いところにヒントとなる情報がある場合、その遠くのポイントを狙うためにはシンキングペンシルはとても効果的です。
シンキングペンシルは圧倒的に飛距離が出るうえに、そのヒントのあった場所をじっくりゆっくりとアプローチすることができます。
潮目を狙うだけならバイブレーションでも可能ですが、水深が浅いポイントや明らかに水面を意識したシーバスを狙うのにはバイブレーションは不向きです。
このような場合にはシンキングペンシルはとても有効です。
最後に、いくら水深が深いエリアであっても、シーバスの捕食音が聞こえてくるなど、明らかにシーバスが水面を意識している場合であればシンキングペンシルはとても効果的です。
以上のとおり、シンキングペンシルの使いどきには向き不向きがはっきりと分かれる状況があるので注意しましょう。
ラインの張り具合に注意!
これはやや難易度が高めの注意点。
シーバスフィッシングにおいて使われるメインラインはほとんどがPEラインです。
PEラインというのは、ラインを張っているときにはとても感度がいいラインですが、ラインが弛んでいると驚くほど感度が悪いラインです。
というより、ラインが弛んでいるとアタリがまったくわからないのがPEラインです。
そのため、PEラインは弛ませずに使うのが基本です。
ただ、シンキングペンシルを使うときは、ラインがやや弛んでいるほうがシンキングペンシルのアクションの魅力を最大限に引き出すことができます。
ラインをピンっと張った状態でルアーを引っ張ってくるよりも、ルアーを引っ張ってくるためのラインの張りは必要最小限度に抑えた方が、シンキングペンシルのナチュラルなフラつきアクションを最大限に引き出すことができます。
ただし、あんまり弛みを作りすぎるとシーバスのアタリがロッドに伝わる感触が小さく、遅くなるので、適度なラインの弛みを作るのにはやや技術(というか経験)が必要になります。
しかも、シンキングペンシルの重さや形状によっても弛ませ具合が変わってきます。
よく分からない時は、ラインは張り気味の方が無難でしょう。
シンキングペンシル購入時の注意点
シンキングペンシルがシーバスフィッシングでメジャーになったのは今から20年くらい前です。
その頃は、まさに「沈むペンシルベイト」という形状のワンダーが全盛の時代でした。
そこから、シンキングペンシルはこの20年間で多様な変化を遂げ、今ではリップ付のシンキングペンシルが増えてきました。
シンキングペンシルに付いたリップは、シンキングペンシルをアクションさせたり潜らせたりする役割ではありません。
シンキングペンシルのリップはレンジをコントロールしやすくするのが主な役割です。
つまり、ルアーを浮き上がりにくくして、一定のレンジをキープしすい仕様になっています。
代表的なのがピース(ima)、マリブ(マングローブスタジオ)、ガルバ(ダイワ)といったところ。
新しいものではゲンマ(メガバス)、ゾンクシンペン(メガバス)が挙げられます。
これらは、いずれもリップ付のシンキングペンシルという比較的新しいカテゴリーです。
シンキングペンシルといってもリップがないとは限らないので、ルアーを選ぶときには注意が必要です。
シーバスフィッシングを深化させた必携ルアー
シンキングペンシルの進化によってシーバスフィッシングはよりテクニカルに、かつ、より繊細な釣りに深化していきました。
シンキングペンシルは、既存のルアーではアプローチが難しかったシーバスへのアプローチを可能にしてくれました。
ビギナーの頃には、シンキングペンシルが泳いでいる感覚がわからず、泳ぎも弱々しいことから「釣れそうにない」という偏見を抱いてしまうことも少なくありません。
ただ、間違いなく言えることは、今のシーバスフィッシングシーンにおいてシンキングペンシルは欠かすことのできない必携ルアーです。
シンキングペンシルを使うことに自信が持てないかもしれませんが、この弱々しい動きのシンキングペンシルの力を信じて、ぜひ投げ倒してみてください。
今までアプローチのできなかったシーバスたちにきっと出会えることでしょう。
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