近年、SNSでは『釣り禁止』問題が盛んに報告されています。
でも、よく内容を見てみると、一般アングラーを困らせる内容のものあります。
みたいな感じで。
このやりとりを見たSNSユーザーとしては
と思いますよね。
釣り場の『禁止』という問題は、実際のところ、意見が錯綜することがけっこうあります。
このページでは意外に難解な釣り場の『禁止』問題について考えます。
最近の釣りメディアでは、釣りに関する情報がメーカーのために中・上級者目線で発信されるようになりました。ナチュラルリリースでは、ビギナー目線で語られることが少なくなった「釣りに関する『キホンのキ』」をビギナー目線で発信しています。
釣り場の『禁止』問題が複雑になる理由
そもそも、釣り場の禁止問題なんて「禁止」か「禁止じゃない」かの二択なので、意見が錯綜しようがないように思えます。
でも、実際に同じ場所に関して、ある人は「釣りは禁止」というし、別の人は「釣りは禁止じゃないらしい」と、真逆の回答になることがあります。
これには、大きく分けて2つの理由があります。
1つは、釣り場の禁止について語る釣り人側の問題です。
もう1つの理由は、釣り場を禁止にする行政側(管理者)の問題です。
以下では、それぞれの立場に内在する問題点について深掘りします。
釣り人側の問題点
限定解釈をする
これは釣り人の性(さが)といえるかもしれません。
たとえば、下記のような両側が堤防になっている船溜まりがあります。
この堤防の片側に
という内容の立て看板があるとします。
この場合、釣り人の中には下記のような解釈をする人がいます。
もちろん、看板を立てた人が片側の堤防だけを立入禁止にする趣旨だったかもしれません。
でも、反対側にも堤防があるなら、反対側の堤防への立ち入りも禁止する趣旨かもしれません。
いくつか可能な解釈がある場合、限定的に解釈しようするのが釣り人の習性です。
不確かな限定解釈が伝聞で広まる
釣り人側のもう一つの問題が、不確かな限定解釈が伝聞(又聞き)で広まっていくということです。
これは僕が体験した事案です。
2022年、中海の某有名ポイントに立入禁止のカラーコーンが設置されました。
このポイントは、釣り人が、車止めを乗り越えて海の近くまで車で進入する事案が多発している場所です。
そのため、僕は当時
と考えて、県土整備事務所に問い合わせしたところ
と回答されました。
ところが、それから1年半くらい経った頃に、SNSで
という情報を目にしました。
そこで改めて県土整備事務所に問い合わせしたところ
という回答でした。
誰かが言い出した(釣り人に都合のいい)不確かな解釈が、管理者に確認せずに広まっていくという問題があります。
『禁止』の内容をいい加減に理解する
たとえば、上記の中海某所の事案を例にします。
このポイントは、釣り人に対して釣りを禁止しているわけではないことは明らかです。
万人に対して、カラーコーンより先に立ち入ることを禁止しています。
一見すると
と、どうでもいいように思うこともあります。
でも、これは案外重要です。
というのも、禁止の内容をどのように理解するかで、管理者への問い合わせ内容が変わります。
これは僕の経験ですが…
僕が学生時代に東京でシーバス釣りをしていた頃、東京の釣り場なんて詳しくないので
と軽い感じで管理者に問い合わせたことがあります。
このとき、管理者からは
という回答をもらいました。
しかし、その後すぐに管理者から電話がかかってきて
と釘を刺されました。
管理者は釣り人のために公共施設を管理しているわけではないので、聞き方によっては思わぬ回答がある場合があります。
そのため、管理者が禁止している内容を正確に理解することは重要です。
行政側の問題点
管轄が複雑
公共施設を管理する行政側としては、管轄が交錯するときに問題が起こります。
たとえば、二級河川(都道府県)や普通河川(市町村)の上に、国道(国交省)の橋梁が架かっている場合などです。
以前、松江国道事務所(国交省)に
と問い合わせたところ
と言われました。
そこで、今度は市の担当課に確認したところ
と言われました。
つまり、管理権者同士が、他の管理権者に判断を任せて、回答を避けるたがることがあります。
規制の強弱があいまい
「釣り禁止」といわれる場所は、すべて等しく禁止されていると思われがちが、実はそうではありません。
規制の程度に強弱があることがあります。
たとえば、こちらの事案。
実際に起こった事故を示して、橋周辺での釣りを禁止するという趣旨で書かれています。
これは明らかに「この周辺では釣りをしてくれるなよ(# ゚Д゚)」という県土整備事務所の強い意思が見てとれます。
では、こちらの事案はどうか。
同じ県土整備事務所の管理下のようですが、こちらは簡素なカラーコーンにラミネートの看板が設置されているだけです。
その内容も「危ないので立ち入らないで下さい」という大雑把なもの。
県土整備事務所に問い合わせても、かなり緩やかな…というか、オブラートに「立ち入らないでほしい」旨を説明されますが、「どうしてもそこへは立ち入ってほしくない」という意思はまったく伝わってきませんでした。
現在は看板も飛ばされてなくなっていますが、県土整備事務所に問い合わせると、一応「立ち入りしないで下さい」と説明されます。
しかし、担当者と会話をしていると
という、なんとも煮え切らないような説明をされました。
いずれにしても、規制する管理権者(行政庁)の規制の程度には強弱があります。
釣り人の意図を汲んだ回答でないことがある
これは、上記でもご紹介しましたが、釣り人が「釣り禁止ですか?」と問い合わせると、対応してくれる担当課の人がかなりピンポイントで回答してくれることがあります。
(立入禁止区域はあるけど、それは聞かれてないから、まぁいいか)
釣り人としては「釣りをすることができるかどうか?」を聞きたいところです。
でも、「釣り禁止ですか?」と尋ねると、窓口の人がガチで「釣り禁止かどうか?」だけに回答してくれることがあります。
釣り人のために業務を行っているわけではないので担当課の人が悪いわけではありません。
でも、釣り人の聞き方や担当課の回答の仕方によっては、釣り人の認識と担当課の回答にズレが生じることがあります。
どうしていいかよく分からないときの振る舞い方
このように、釣り人側・行政側の双方に曖昧な部分があるため、同じ担当課に問い合わせをしているにもかかわらず、違う結論になることがあります。
そこで
実際、どうなんだろ?
となったときに、釣り人としてはどう振る舞えばいいのでしょうか。
釣りをまったくしない人からすれば
と言いたいところでしょう。
でも、海とのふれあいや海洋レクリエーションという観点からは、可能な限り柔軟に解釈したいところです。
とはいえ、お願いベースの規制だからといって、管理者の意思を無碍にするわけにもいきません。
管理者と対立したところで、得られるものはまったくありません。
そこで、僕の場合、基本的には次のように振る舞うようにしています。
②のように立入禁止を謳いつつ、「(本音をいえば)ウキ釣りのような遠くまで投げない釣りであれば、まぁ…」という対応のときは困ります。
と思いつつ、一応、管理者の公式の見解を確認するようにします。
それで、お願いベースであっても「釣り禁止(立入禁止)」と言われれば、釣りはしないようにしています。
ただ、この中で一番困るのが④のパターン。
「釣り禁止」の看板があるけど、そもそも誰が設置したのかわからないやつ。
いわゆる野池であれば、ため池・池沼・堤といったそもそも私有地であるパターンもあるので理解できます。
でも、湖とか海のような公有水面や、漁港や船溜まりのような公共施設に誰が立てたか分からない「釣り禁止」の看板があるのが正直悩ましい。
どこの誰に問い合わせしていいかわからない。
釣り人が出入りすることを嫌がる地元住民が勝手に設置しているかもしれません。
この場合も、一応は様子見で釣りしないようにします。
子どもの頃だったら「とりあえず釣りをする」かもしれませんが、大人になってまで怒られたくないので、「とりあえず釣りをしない」という振る舞いをしています。
管理者と対立しても意味がない
釣り人の中には、②のパターン(お願いベースのパターン)のときに、抜け穴的な回答を引き出そうとする人もいます。
みたいな感じ。
気持ちは分からなくもありません。
僕も釣り人なので。
ただ、正直なところ、僕が管理者であれば
って思うでしょう。
もちろん、管理者も、好き好んで釣り禁止にしたいわけではないと思います。
しかし、通行人の安全を天秤に掛けると、釣りというレジャーを規制するのは容易なことでしょう。
釣り人が管理者から嫌われるような行動をとれば、規制範囲が広くなったり、規制の程度が強くなることも想像に難くありません。
そのため、釣り人は管理者と適度な距離を保つほうがいいというのが僕の考えです。
釣り禁止かどうかわからないときは管理者に確認してみよう
釣り禁止の釣り場について、SNSや釣具店の情報をもとに判断すると、しばしば異なる情報に触れることがあります。
SNSでは「釣り禁止」といわれている釣り場に関して、釣具店に聞くと「車での進入が禁止されているだけで釣りは禁止されていない」というように、見解が分かれることがあります。
これには、釣り人側と管理者側の一方または双方に原因があることがほとんどです。
このように、情報に食い違いがあってよくわからないときは、管理者に直接問い合わせるのが確実です。
管理者は気さくに対応してくれることが多いので、心配なときは一度管理者に問い合わせてみましょう。