魚釣り全般において、釣り人の共通認識として「魚がスレる」と呼ばれる現象が存在します。
シーバスフィッシングにおいても、この「スレる」という状況に遭遇することがあります。
しかし、この「スレる」という状況を正しく理解していないと、シーバスに対して方向違いのアプローチをしてしまうこともあります。
このページではシーバスフィッシングにおいてシーバスが「スレ」る状況と対策についてご紹介します。
そもそも魚が「スレる」とはどういう状況か
魚が「スレる」とは、魚がエサやルアーに対して食いつかなくなる状況のことをいいます。
この魚の食いの渋い状況を魚が「スレる」と呼んでいます。
「食いつかなくなる」と表現したことからもわかるとおり、普段は食いつくのに(あるいは今までは食いついていたのに)、エサやルアーへの反応が鈍くなった状況のことをいいます。
なお、ルアーフィッシングにおいては、他にも「スレ」という言葉が登場します。
それは、ルアーが、釣れた魚の口以外の場所に掛かっている状況のことを指して「スレ掛かり」と呼んでいます。
これは「擦れ掛かり」のことで、魚の口がルアーの針に掛かった状態ではなく、魚がルアーに擦れてうっかり体に針が掛かってしまったという状況のときに使われる言葉です。
ただ、実際にルアーがうっかり魚の体に掛かってしまうことなんてほとんどありません。
多くの場合、口に掛かったものが一旦外れて体に掛かり直したり、魚がルアーを食いにきて、アワセた瞬間に口以外のところに掛かってしまったということがほとんどです。
いずれにしても、エサやルアーに食いつかない「スレ」ている状況とは区別しておいて下さい。
「スレる」という状況を正しく理解する
説明が大雑把なプロアングラーやメディアの影響のため、この「スレる」という状況がいいかげんに語られることが少なくありません。
釣りおいて「スレる」というのは、大きく2つの状況に分けられます
警戒レベルが最上級
釣り人の多く集まる防波堤の船の影や岸壁に、なにかをするわけでもなく、チヌやスズキやメバルがボーっと浮いていることがあります。
あるいは、ボーっと浮いているわけではありませんが、人目につく場所をあてもなくうろうろしていることがあります。
本来、人目につくような魚でないのに、人の目から見える場所にあてもなく浮いていたりうろうろしているとき、この魚たちは非常に警戒心が強いです。
釣りを知らない人からするととても釣りやすそうに見えますが、エサを投げたところで普通は反応しません。
ルアーであればなおさら興味を示しません。
釣りの格言で“見えている魚は釣れない”といわれることがあります。
釣れないことはないのですが、まぁ、かなりのハイレベルです、実際。
これらの魚については、魚の方からも人間が見えているので人の気配を警戒して捕食しないと説明されます。
実際のところ、警戒して口を使わないのかどうなのか…魚に聞いてみなければわかりません。
単に満腹でエサに興味がない状態なのかもしれません。
ただ、僕が飼ったことのある魚の中にも、僕が水槽の前に立っていると絶対にエサを食べない個体がいました。
魚種による違いや同じ魚種でも個体差はあるでしょうが、人から見える位置にいる魚は警戒心がとても強てなかなか口を使わないため、釣るのが難しいというのが一般的な考えです。
ルアーを見切る
これは主にルアーフィッシングで問題になる魚が「スレた」現象です。
魚というのは学習能力の高い生き物です。
最初のうちはイージーにルアーに反応していたのに、ルアーがエサじゃないとわかると、だんだんとルアーへの反応が悪くなり、最終的には無視するようになります。
ルアーを変えてアプローチすると、また反応を示しますが、すぐにまた反応が悪くなり、ルアーを無視するようになります。
また、以前ヘウレーカというテレビ番組でやっていましたが、魚も恐怖体験というのは体が覚えていて、一度釣られたり、あるいは、釣られそうになった状況というのは学習するそうです。
このように「ルアーをエサだと間違えないようになる」ことを「(ルアーを)見切る」という言い方をします。
魚がルアーを見切るようになってくると、ルアーに対してなかなか食いついてくれないので、魚を釣るのが難しくなります。
実際に体験する魚が「スレる」状況
長く釣りをしていると、実際に様々な状況で
と感じることがあります。
管理釣り場の放流マス
管理釣り場と呼ばれるいわゆる「釣り堀」は、養殖されたマス(トラウト)が定期的に放流されます。
新しく放流されたトラウトは、ルアーやスプーンを見たことがないので、放流直後にはものすごい勢いでルアー(スプーン)に反応します。
1キャスト4~5バイトくらいあることなんて普通です。
どんなルアー、どんなカラーを投げてもバイトがあります。
こんなピュアなトラウトたちですが、やはりトラウトも学習する魚。
ルアーへの見切りや恐怖体験から、次第にルアーやスプーンへの反応が悪くなります。
また、管理釣り場は魚と釣り人との距離が近いので人的プレッシャーも相当なものです。
その結果、あれだけルアーやスプーンに好反応を示していたトラウトたちが、ものの数日でとても手強い相手になってしまいます。
穴釣りで魚を釣りそこなったとき
釣りの入門者に魚を釣る楽しさを簡単に教える釣り方に「穴釣り」というのがあります。
消波ブロックの隙間や岸壁と岸壁の隙間にエサやルアーを落として、カサゴやソイを狙う釣り方です。
この穴釣りをしているときに魚を何度か釣りそこなうと、仕掛けに反応しなくなります。
ルアーはもちろんのこと、エサであっても食わなくなることが普通にあります。
警戒心から口を使わないのか、恐怖体験から口を使わないのか、見切りから口を使わないのか、理由はわかりませんが、とにかく釣りそこなった魚は反応がとても悪くなります。
同じルアーではシーバスが釣れなくなる
シーバスフィッシングを続けていると、たま~に遭遇するのがベイトの塊に着いたシーバスの群れ。
はじめのうちはガンガンとルアーにアタックしてきます。
ルアー交換の時間ももったいないし実際にそのルアーで釣れているので、ルアーをローテーションすることなく5匹、10匹、20匹と釣っていると、次第にシーバスが釣れなくなってきます。
と思いながら、まったく違うタイプのルアーを投げてみると、また釣れ始めます。
これは、どちらかといえば管理釣り場の放流トラウトに近いスレ方だと考えられます。
つまり、ルアーを見切っている状況。
エリアトラウトに限らず、シーバスでも同じようなことが起こります。
警戒心の強いスレたシーバスの狙い方
このように、シーバスが口を使わなくなる「スレる」という現象は、いつどこで起こってもおかしくはありません。
じゃあ、このシーバスをどうやって釣ったらいいのか?を考えたとき、実は「スレている状況」によってアプローチ方法が大きく変わってきます。
まず、警戒心が高くて釣れない見えシーバスを釣るのはかなり難易度が高いです。
正直なところ、狙うのをあきらめる…というのも一つの選択肢かもしれません。
ただ、昔から“見えている魚を釣ってこそ真の釣り人”と言われることがあるので、どうしても
って衝動になることがあります。
そのときにとても重要になるのが
警戒心を刺激しない
ということ。
本物のエサにすら反応しないような魚をプラスチックの塊で釣ろうと思ったとき、魚の警戒心をさらに引き上げてしまったのでは到底釣ることはできません。
とはいえ、もともと警戒心の高いシーバスの警戒心を引き下げるということはまず無理です。
そこで、警戒心を引き上げないようにしつつ、プラスチックの塊をエサと間違えてもらえるようにアプローチをしなければなりません。
意識しておくべきこととして
・ナチュラルにアピール
ということが挙げられます。
警戒心を刺激しないというのは、具体的には、シーバスの目の前にルアーを落としたり、何度も何度も繰り返しアプローチをしないということです。
シーバスに限らず、フィッシュイーターは比較的水面の動きに敏感なので、やや離れたところにルアーを落としても気づいてくれます。
なので、少しだけ離れたところにルアーを落としてアプローチします。
また、5回も6回もルアーを通すと、その度にシーバスの警戒心が上がるので、数投で仕留めるつもりでアプローチした方が良いでしょう。
問題なのがナチュラルにアピールするということ。
何が問題かといえば、この「ナチュラル」の捉え方が人によってけっこう違うということです。
たとえば、ある人の説明によれば
というのがナチュラルだそうです。
ところが、別の人の説明によれば
軽いトゥイッチやストップアンドゴーみたいな生命感のある動きを演出する
というのがナチュラルだそうです。
最初の説明がエサ釣り的発想、あとの説明がルアーフィッシング的発想です。
どちらのアプローチがいいかといえば…
正直なところわかりません。
警戒レベルによっても違うでしょうし、ストラクチャーの有無や形状によっても、どちらのアプローチ方法が効果的かというのは変わってくるかもしれません。
まぁ、1、2投ずつどちらのアプローチ方法も試してみて、シーバスがルアーに興味を示さなければ他のシーバスを探した方が効率的かもしれませんが…
なお、スレたシーバスを狙うときに、不必要にリーダーを細くするように釣具屋の店員さんにアドバイスされたことがあります。
これもエサ釣り的発想からくるものです。
日本のエサ釣りでは、ラインが細ければ細いほど魚に警戒心を与えないという定説があり、魚の警戒心が高いときには細いラインが好まれる傾向にあります。
たしかに、エサを投入してから魚が食いつくのじっと待つエサ釣りにおいては、エサと潮との同調性などといった理由からラインが細い方がいいというのは一応の理由になっています。
でも、シーバスフィッシングは、(前提として)シーバスの方からプラスチックの塊に食いついてくることはありません。
プラスチックの塊を動かして、シーバスに間違いを起こさせて初めて、プラスチックの塊がシーバスの捕食対象になります。
エサ釣りの発想を取り入れた糸の太さ云々という小手先の変化もいざとなったら必要かもしれませんが、まずはルアーに組み込まれた機能を駆使していかにシーバスに間違いを起こさせるかというルアーフィッシングの基本的な部分を大切にしましょう。
ルアーを見切るスレたシーバスの狙い方
ルアーを見切るようになったシーバスというのは、必ずしも警戒心が高いわけではありません。
そもそもエサ釣りと違って、シーバスフィッシングというのは、ルアーと呼ばれるプラスチックの塊に組み込まれた機能を駆使して、シーバスに間違いを起こさせて捕食を誘発する釣り方です。
シーバスがルアーを見切るようになったということは、ある特定のルアーが、シーバスにとってただのプラスチックの塊に戻ってしまったというだけの話です。
エサ釣りであれば、魚の目の前に投入されるのは捕食可能な「エサ」そのものです。
エサの不自然さを警戒することはあっても、「これはエサじゃないと見切るようになった」ということはありえません。
でも、シーバスフィッシングでは、シーバスがルアーを見て「これはエサじゃない」と見切るようになって、間違いを起こさなくなってしまうことがあります。
シーバスが間違いを起こさなくなると、ルアーは単なるプラスチックの塊に逆戻りしてしまいます。
これは、プラスチックの塊で魚に間違いを起こさせて魚を釣るというルアーフィッシングの宿命ともいうべき現象です。
ただ、シーバスの警戒心が強い場合と異なり、シーバスがルアーをプラスチックの塊だと見切るようになって口を使わなくなった場合、アングラー側でやることはハッキリしています。
もう一度「ルアーはエサだ」と間違えてもらうための別のアプローチを試みることが必要になります。
具体的には、動きの大きなトップウォーターを見切るようになったのであれば、動きの弱いシンキングペンシルにしてみたり。
ナチュラルカラーを見切るようになれば、ド派手なチャートやピンクにしてみたり。
アプローチの方向性としては、微妙な変化を求めるよりも抜本的に変化させてみたほうがシーバスの反応の違いがわかりやすいでしょう。
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警戒心が強くてルアーも見切るシーバスの狙い方
シーバスの中には、警戒心がとても強いうえにルアーも見切ってしまうようなハイレベルなシーバスもいます。
いや、実際にいるかどうかわかんないけど、そんなシーバスがいてもおかしくないと思っています。
管理釣り場で放流されて随分日にちが経ったトラウトがちょうどそんな状態です。
管理釣り場はアングラーと魚との距離が近いうえに、水中をヒラヒラと泳ぐ謎の物体はすべて罠…
放流されてしばらく経ったトラウトたちは、人に対する警戒心も強く、ルアーの見切りもお手のものです。
そんな状態のシーバスはどう狙えばいいのか?
結論から言えば
ほかのシーバスを探そうぜ
というのが僕の考え。
というのも、たしかに”見えている魚を釣ってこそ真の釣り人”と言われることがありますが…
普通は釣り人って、釣れる場所に集まるものです。
と聞けば、〇〇岬に行ってみようと思うのが釣り人の性です。
〇〇岬がすぐ近いのに、そこから少し離れた□□灘に行ってみようと思う人はほぼいないでしょう。
釣れる場所に釣り人が集まるからこそ、SNSでポイントを晒して炎上したり、場所取りが問題になったりするのです。
釣れる場所で釣りをしたいと思うのが釣り人であり、それは普通の「魚釣り」の姿です。
加えて、プラスチックの塊で魚を狙うルアーフィッシングでは、待っていても魚の方から寄ってきてくれるわけではありません。
釣れる魚をどんどん探していくのがルアーフィッシングです。
管理釣り場のように「スプーンを見切るトラウトにどうやって口を使わせるか?」というゲーム性を求める釣りも確かに存在しますが、エリアトラウトフィッシングとは別のゲーム性・方向性を持っているのがネイティブフィッシュを対象としたルアーフィッシングです。
これらのことを総合的に考慮すると、”シーバスが目の前に居るけど難攻不落な場合にどうやって釣るか…?”という問題に対しては
というのが僕の持論です。
実際のところシーバスの「スレ」はそんなに気にしなくてもいい
ここまで長々とシーバスの「スレ」について検討しました。
しかし実際のところ、多くのアングラーにとってシーバスの「スレ」というのはそれほど問題視する必要はないというのが現実です。
そもそも、一般アングラーの多くの人がシーバスを狙うスタイルはどんな狙い方でしょうか?
シーバスフィッシングでは、おかっぱりアングラーのうち、かなり多くのアングラーが回遊待ちというスタイルでシーバスを狙います。
潮目や潮の変化というとてもザックリとした目標物を狙って、そこに入ってくるシーバスを狙うのがポピュラーな狙い方です。
この回遊待ちスタイルで釣りをしていて、潮の変化に入ってきたシーバスがスレているかスレていないか、どうやって判断することになるでしょうか?
昔、釣具屋の店員に
と言われたことがあります。
でも、回遊待ちのスタイルって、そもそもシーバスがそこに居るかどうかもわかりません。
しかも、プラスチックの塊を駆使して魚に間違いを起こさせようとするのがルアーフィッシングなので魚が間違いを起こしてくれるかどうかはそもそも超不確定要素です。
シーバスがいるかどうかもわからず、シーバスが居たとしても必ず騙されてくれるとはいえない、という不確定要素の積み重ねのうえに成り立っているのがシーバスフィッシングです。
間違いを起こさないシーバスはすべてスレているのか…?
そんなことはありません
エサと違ってルアーなんてプラスチックの塊なんだから、ピュアなシーバスであれば必ず間違いを起こしてくれる…というものでもありません。
シーバスだってそんなに単純ではありません(笑
じゃあ、管理釣り場のトラウトのようにルアーに慣れてルアーを見切るようになってきたシーバスと、ルアーを見たのは初めてだけどルアーでは騙せなかったピュアなシーバスと、どうやって見分ければいいでしょうか?
多くの場合、見分けることは難しいでしょう。
広い意味ではどちらの場合も「ルアーでは騙せなかったシーバス」ということですが、どちらのシーバスもスレているかといえば、そんなことはありません。
さらにいえば、管理釣り場じゃあるまいし、「このシーバスは今までにルアーを見たことがあるか?」なんてわかるはずもありません。
ようするに何が言いたいかといえば
魚が「スレ」るという言葉は軽々しく使われる傾向にあるけど、魚がルアーを見切って口を使わないのか、それとも、そもそもプラスチックの塊をエサと間違えなかったのか、その区別は簡単じゃないってことです。
なので、スレていようがスレていまいが、本質的には
ルアーと呼ばれるプラスチックの塊を駆使してシーバスに間違いを起こさせる
というところは何一つ変わるところはありません。
最近のルアーフィッシングシーンでは、多関節のクネクネ動くルアーや、本物のベイトフィッシュのカラーを追求したリアル系カラーが話題を呼んでいます。確かに、リアル系ルアーはアングラーの購買意欲をかき立てます。しかし、実際[…]
魚が「スレ」る状況と本質を理解する
・警戒心がとても強い
・ルアーを見慣れてきてルアーを見切る
・警戒心を刺激しない
・ナチュラルにアプローチ
・ルアーのタイプを大きく変えてみる
「シーバスがスレていて口を使わない」
とてもよく聞くフレーズです。
ルアーと呼ばれるプラスチックの塊ででシーバスを釣るためには、まずもってプラスチックの塊を駆使してシーバスに「これはエサだ」と間違いを起こさせる必要があります。
ルアーはエサと違ってただのプラスチックの塊なので、必ずしもシーバスの方から「これはエサだ」と認識してくれるものではありません。
それに加えて、たとえ最初は「これはエサだ」と騙せても、何度もルアーを見ているうちに「やっぱりエサじゃない」と見切るようになってきます。
これがいわゆる「スレ」です。
でも、そのシーバスが本当にスレていて口を使わないのか、ピュアなシーバスだけど単にプラスチックの塊に騙されなかったのか。
これを区別するのはとても難しいです。
しかし、シーバスがスレていようがスレていまいが、その本質にあるのは
ルアーと呼ばれるプラスチックの塊を駆使してシーバスに間違いを起こさせる
ということです。
シーバスを釣るには、スレていようがスレていまいが、エサ釣りのように待ちのスタイルでアプローチをするのではなく、ルアーの機能を駆使してシーバスに間違いを起こさせるための積極的な工夫が必要であることを忘れないようにしましょう。
それでもシーバスが釣れないときにはどうすれいいか?
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