【ゼロから始める】ルアーは見た目が9割!?ルアーの見た目と『波動』について理解する【第20回】

以前、某釣り系SNSサイトでルアーの『波動』について話題になったことがありました。

ナチュラルリリースでも話題に乗っかって、その話題に沿うかたちでルアーの『波動』についてご紹介したことがありました。

ただ、その記事はビギナーにとって意味のある記事とは言い難いものでした。

そこで、この記事では、ビギナー目線でルアーの『波動』をどう考えればいいか?ということについてご紹介します。

関連記事

ゼロから始めるシリーズのルアー編第20回の記事で「シーバスがルアーを感知(発見)するうえで、『波動』と呼ばれる水粒子の動きがどれほど影響があるのか?」ということについて記載しました。この記事では、シーバスがルアーを発見する[…]

執筆者
ショーカラ(y-nax)
『釣り』の翻訳家
最近の釣りメディアでは、釣りに関する情報がメーカーのために中・上級者目線で発信されるようになりました。ナチュラルリリースでは、ビギナー目線で語られることが少なくなった「釣りに関する『キホンのキ』」をビギナー目線で発信しています。

ルアーの『波動』とは?

『波動』の意義

ルアーの説明やレビュー、インプレッションを見ていると、ルアーの『波動』というフレーズを度々耳にします。

ルアーの『波動』とは、ルアーがアクションすることによって動かす水の粒子(水の振動)という趣旨で説明されるのが一般的です。

この点について、某釣り系SNSサイトでは

某ユーザー
そもそも『波動』の定義がわからないのに、『波動』が存在するかどうかなんてわからないじゃないか(゚Д゚)ゴルァ!

と、各ルアーメーカーに噛み付いたユーザーさんがおられました。

実際のところ、某ユーザーさんのおっしゃるとおりなのですが、それでは話が前に進みません。

また、ルアーフィッシングを始めたばかりで、これからもルアーフィッシングを続けていきたいと考えている人は、今後も『波動』というフレーズにはかなりの頻度で出くわすことでしょう。

そこで、とりあえずは、ルアーの『波動』というのは、ルアーが動かす水の粒子(の量)という程度に考えておけばいいでしょう。

強波動と弱波動(微波動)

強波動のルアーというのは、動かす水の量が多いルアーのことをいいます。

一般的には、ルアーそのものがよく動く(よくバタつく)場合に、動かす水の量が多い(=強波動)と説明されます。

反対に、弱波動(微波動)のルアーというのは、動かす水の量が少ないルアーのことをいいます。

バタつきの少ないルアーが微波動のルアー、というイメージでいいでしょう。

具体例

強波動の典型的なルアーといわれるのがメタルバイブレーションです。

大きくバタつくアクションが特徴的です。

これに対して、微波動の典型的なルアーがシンキングペンシルソフトベイト(ワーム)です。

細かく優しくフラつくアクションが特徴的です。

ただ、これらのカテゴリーに属するルアーでも、アクションの控えめなメタルバイブレーションや、大きくスイングするシンキングペンシルもあります。

最終的には、ルアーの波動というのは、そのルアーに備わっている機能(個性)次第ということになります。

『波動』が重要視される理由

シーバスに限った話ではありませんが…。

ルアーフィッシング業界においては

ルアーに反応をする魚(いわゆるフィッシュイーター)は、『側線』と呼ばれる水流を感知する器官によって、ルアーが動いたときの水の流れを感知する

という考え方が浸透しています。

つまり、シーバスは、小魚が泳いだときに発生する水流を感知して獲物を発見する、と一般的には考えられています。

そのため、ルアーが生み出す波動の強弱というのは、ルアーフィッシングにおいて、とても重要視されています。

本当に側線で『波動』を感知しているのか?

本当にシーバスはルアーの波動を側線で感知してルアーに食いついているのか?

釣り人の間では当然のこととして語られる「シーバスは側線で波動を感知している」という考えですが、実は、物理学的・生物学的視点で考えると疑義が生じる問題なのです。

この点について、自然科学のレベルでは

①ルアーの波動はどれくらい伝播するのか(広がるのか)
②側線の感知能力はどれくらいか

という観点から推察されています。

水の粒子の動き(振動)は水中ではほとんど伝播しないのでは?

一つめの問題は

水の中で発生した水の粒子の動き(振動)が、ルアーからどれくらい遠く離れた場所まで届くのか?

ということです。

仮に、水の粒子の動きがルアーから4mも5mも離れたところまで届くというのであれば、視界に入らないルアーの動きでも、魚は感知できるかもしれません。

しかし、水中で発生する水の粒子の動き(振動)というのは、水面で発生する航跡や波紋とは異なります。

実は、水中で発生する水の粒子の動きは、物理的には、ルアーのごく周辺にしか伝播しないそうです。

これは、砂の中に突っ込んだスマートフォンを振動させた場合に似ています。

この点について、少し面白い記事を見つけました。

→『波動の見える化??

FimoユーザーのTENさんが書かれた記事です。

ルアーが動くと水中でどのような変化が起こるのか?というのが、メーカーのウェブサイトのスクリーンショットとともに紹介されています。

このスクリーンショットによれば、水中でルアーが動くと、確かに水粒子が撹拌されていることがわかります。

そして、その撹拌によってどのくらい水粒子の動きが伝播するか(広がるか)?といえば、ほぼルアーの周りにしか広がっていない様子がわかります。

ショーカラ
ルアーが10cmくらいであることを考えると、水粒子の広がりは、大きく見積もってルアーから20~30cmの範囲という感じでしょうか?

このスクリーンショットは横から見た様子なので、上下への広がりしかわかりません。

でも、上下への広がりがルアーの周辺にしか起こっていないことからすると、左右への広がりもルアーの周辺に限られるでしょう。

また、水の動きは後方へ広がっているようにも見えます。

しかし、水の動きの上下への広がりがわずかであることから考えると、ルアーが通過した後の水が広がり続けるとはちょっと考えにくいところです。

おそらく、着色した色が残っているだけで、ルアーが通ったあとの水はほぼ動いてはいないと考えられます。

つまり、ルアーが動くことによって発生する水の動きは、(動く水の量によって多少の違いはあるかもしれませんが)ルアーから離れた魚の側線に届くことはほとんどない、と説明されます。

ちなみに、水中における『』というのは、水中では空気中の4.5倍の速度で伝播します。
また、伝播するときの減退が少ないため、水中の方が空気中よりも遠くまで届くそうです。

側線の能力を過信していないか?

もう一つの問題は

魚の側線の感知能力(側線で感知できる範囲)がどれくらいか?

ということです。

シーバスフィッシング業界において絶対的多数派である

シーバスは側線でルアーの波動を感知している

という考え方。

仮に、側線による感知能力がとてつもなく優れていて、相当遠くの水の動きも感知できる、というのであれば、ルアーの『波動』は効果があるといえるでしょう。

しかし、この点について、学者からは「魚が側線でルアーを感知しているというのは、釣り人のイマジネーション(想像)である」と言われることがあります。

つまり、魚類学者からは「釣り人は側線の能力を過信している」と疑問を投げかけられることがあります。

これは、第13回の記事でもご紹介しました。

関連記事

第12回までの記事でルアーの基本的な種類や特徴、使い方をご紹介しました。このページでは、魚が水中においてどのようにルアーを感知・認識しているのか?「魚がルアーを見つける方法」についてご紹介します。なお、この[…]

魚類学的には、どれだけ側線の感知能力に優れた魚であっても、側線で感知できる水の動きというのは体長の1~1.5倍ほどの範囲といわれています。

すなわち、側線は、とても感度のいい水流感知器官で、わずかな水の流れも感知できるけど、その感知できる範囲は意外に狭い、ということです。

さらに、魚は、「自分が泳ぐことによって発生する自分の水の振動」という無意味な情報を遮断するために、遊泳中には側線の機能を低下させる仕組みが採用されているそうです。

つまり、魚は、体長の1~1.5倍ほどの範囲しか感知できない側線機能を、遊泳中はさらに機能低下させているということです。

このため、魚類学者からは、

学者
遊泳中の魚が側線でルアーの動きを感知しているというのは、側線の能力を過信しているのでは?

と指摘されているのです。

『波動』は本当に重要なのか?

釣り人のほぼコンセンサスといってもいいくらいに浸透している「フィッシュイーターは側線でルアーの波動を感知する」という考え方。

しかし、これは釣り人の経験則の上に成り立っているイマジネーションであり、科学的な裏付けは見当たりません。

むしろ、水粒子の伝播する範囲という物理的観点からみても、側線の能力という生物的観点からみても、ルアーが水中で発生させる水粒子の振動を側線で感知してルアーを発見していると考えるのはやや無理がある、というのが科学的立場からの説明です。

では、なぜ、このような経験則がコンセンサスとして定着しているのでしょうか?

おそらくはこんなところ↓でしょう。

ビギナー
シーバスは真っ暗な海でどうやってルアーを見つけるん?
ルアーなんて見えへんやろ?
アングラー
それは、ルアーの波動を側線で感知してるんや!
見えへんのに食うてくるんやから、目以外で感じ取ってるとしか考えられんやろ!

というような流れじゃないかと思っています。

つまり

見るんじゃない! 感じるんだ!!

ということですね。

ショーカラ
いや、本当のところは全然わかりませんけどね
ショーカラ
ただ、人間って、感覚的に理解できない現象にぶち当たると、人間の理解を超えた部分に答えを求めたがるってのはあります

いずれにして、「波動が魚に効く」というのは、(科学的な根拠はないけど)経験則の上に成り立つ釣り人のコンセンサスという感じで考えておけばいいでしょう。

魚はどうやってルアーを感知するのか?

『魚の目』はとても重要

側線によってルアーの動きを感知するという考え方の科学的根拠が乏しいとなると、

ビギナー
じゃあ、いったい魚はどうやってルアーを見つけるのか?

というふりだしに戻ってしまいます。

この点については、第13回の記事で詳しくご紹介しています。

結論だけいえば、魚類学者の中には、

ルアーを見つけるのに重要な役割を果たしているのは『魚の目』である

と唱える方がおられます。

詳細は第13回の記事に譲りますが、魚の目の形状識別能力色識別能力コントラスト識別能力はとてつもなく優れているそうです。

側線でもなく、耳でもなければ、魚がルアーを発見するための器官は「魚の優れた目」しかないだろう(消去法でこれしか残らないだろう)ということです。

関連記事

第12回までの記事でルアーの基本的な種類や特徴、使い方をご紹介しました。このページでは、魚が水中においてどのようにルアーを感知・認識しているのか?「魚がルアーを見つける方法」についてご紹介します。なお、この[…]

魚は『見た目』の色にはとても敏感

一般的に、魚は『色』にはとても敏感な生き物です。

たとえば、繁殖期を迎える魚の中には、自分の美しさをアピールするために、婚姻色と呼ばれるカラーに体色を変化させる魚がいます。

サケ・オイカワ・ウグイなどは婚姻色に変化する代表的な魚です。

逆に、自分の身を隠すために保護色と呼ばれる体色を持つ魚もいます。

ヒラメは保護色を持つ魚の代表といえます。

このように、魚は『見た目』の色には敏感な生き物と考えられています。

『波動』を考えることは意味がないのか?

ルアーは見た目が超重要!

シーバスがルアーを感知する過程において、ルアーが動かす水の振動(波動)というのは、魚の側線に届くことはほとんどありません。

また、魚がルアーを感知するための重要な器官は『目』です。

そのため、アングラーとしては、シーバスに対して視覚的にアプローチすることが最も効果的といえます。

「視覚的に」というのは、カラーはもちろん、

大きな動的アクションでシーバスの興味を惹く

あるいは逆に、

静的なアクションでシーバスの警戒心を刺激しないようなアプローチをする

ということです。

『波動』を考えることは意味がないのか?

このように物理的・生物的な視点から「ルアーと魚の関係」を考えると、『波動』と呼ばれる水の振動は、ルアーフィッシングにおいてターゲットを惹きつけるためには、あまり意味をなさないようにも思えます。

しかし、見た目を重視する『視覚的アプローチ』と、波動という想像上の力を重視する『波動アプローチ』とは、実際には、同じ結果になることの方が多いです。

具体例で考える

たとえば、魚の居場所やベイトの有無もわからないので、とにかくシーバスを惹きつけるようなアピールの強いルアーをチョイスしたい場合。

視覚的アプローチからは、ワイドな動きのミノーやメタルバイブレーション、トップウォーターなどを選ぶことになります。

では、波動アプローチの場合はどうか?

やはり、動かす水の量の多いワイドな動きのルアーや、トップウォーターを選ぶことになるでしょう。

逆に、シーバスが追いかけてくるけど食いつく直前で反転するので、警戒心を刺激しない静的なアクションのルアーをチョイスしたいと考えた場合。

視覚的アプローチからも、波動アプローチからも、動きの大人しいシンキングペンシルやローリング主体のミノーなどを選ぶことになるでしょう。

このように、波動アプローチで考えたとしても、(ルアーをチョイスする意図・目的が同じであれば)結果として、視覚的アプローチと同じようなルアーを選ぶことになる場合がほとんどです。

つまり、ルアーをチョイスするときに『波動』という目に見えない想像上の力を重視しても、ほぼ差し支えはないといえます。

視覚的アプローチと波動アプローチで違いが出るルアー

視覚的アプローチをするにしても、波動アプローチをするにしても、ルアー選択のレベルで違いが生じることはほとんどありません。

ただ、ルアーの見た目を重視するか、ルアーの波動を重視するかで違いが出るルアーもあります。

それが、シンキングペンシルソフトベイト(ワーム)です。

ルアーの波動を信奉するアングラーの考え方によれば、シンキングペンシルやワームというのは弱(微)波動ルアーの代表格と考えられています。

これに対して、ルアーの見た目の動きを重視する場合

大きくスイングするシンペンやワームはシーバスの興味を惹きつけるルアー
大人しいアクションのシンペンやワームはシーバスの警戒心を刺激しにくいルアー

として捉えることになります。

研究結果から視覚の優位性を考える

最後に、フィッシュイーターが捕食行動に使用する感覚器官を調べようとした研究に関する参考文献をご紹介します。

ブラックバスを対象にしたNew, J.G. and Kang, P.Y. (2000)の水槽実験によれば、バスの側線感覚の有効範囲は狭く、バスが捕食するときは視覚が重要であることが説明されています。

実験をザックリ説明すると

視覚機能を残して側線機能を遮断したバスと、視覚機能を遮断して側線機能を残したバスとを比較したところ…
視覚機能を遮断したバス(側線機能を残したバス)の方が獲物を感知できる距離が短く、捕食率も低かった

ということです。

つまり、側線が機能する有効範囲は視覚よりも狭いということです。

参考:― スマルア技研:ラージマウスバスのアタック成功率に影響するもの

このように、ある感覚器官の機能を残し、それ以外の感覚器官を遮断することで、どちらの感覚器官がより重要な役割を果たしているかを明らかにしようとした実験結果があるそうです。

(参考文献)
New, J.G. and Kang, P.Y. (2000):Multimodal sensory integration in the strike-feeding behaviour of predatory fishes.

なお、これはシーバスを対象にした実験ではないため

アングラー
シーバスはブラックバスとは違って、側線が重要なんだ!!

という考え方は有りうるところです。

側線に働きかけるルアーの波動…

信じるか信じないかは…アナタ次第です。

ルアーは見た目が9割!

経験則という釣り人の主観ではなく、一応の客観性のある科学的根拠に基づけば、ルアーを選ぶ段階において最も優先的な基準になるのは

ルアーの見た目の動きと色

です。

見た目のアクションが大きかったり、見た目が派手であればアピール系。

見た目のアクションが小さかったり、見た目が地味であれば控えめ系。

もちろん、見た目以外のファクターが影響する可能性があることは否定しません。

ただ、ビギナーのうちは、人知を超えた『ルアーの波動』を基準にルアーを選ぶよりも、シンプルでわかりやすく『見た目』の色や動きで選ぶのがベターといえるでしょう。

ショーカラ
最近ではルアーの水中映像も盛んにアップロードされているので、気になるルアーのアクションの大きさを確認してみるといいでしょう

人間の理解を超えたシーバスの捕食能力を説明するために、シーバスフィッシングでは『波動』というマジックワードが用いられます。

これは、あくまで、釣り人の経験をもとにした想像上の説明です。

ただ、だからといって、波動を基準にルアー選択を考えたところで、的外れな選択になることはありません。

ルアーの見た目を基準に選んでも、ルアーの波動を基準に選んでも、そこで選択されるルアーは多くの場合は同じものになるでしょう。

いずれの視点からルアーを選んでも構いませんが、ビギナーにとっては、ルアーの見た目のアクションやカラーを基準に選んだ方がわかりやすいでしょう。

関連記事

関連記事

ゼロから始めるシリーズのルアー編第20回の記事で「シーバスがルアーを感知(発見)するうえで、『波動』と呼ばれる水粒子の動きがどれほど影響があるのか?」ということについて記載しました。この記事では、シーバスがルアーを発見する[…]