第13回の記事で、魚がルアーを感知する方法についてご紹介しました。
第12回までの記事でルアーの基本的な種類や特徴、使い方をご紹介しました。このページでは、魚が水中においてどのようにルアーを感知・認識しているのか?「魚がルアーを見つける方法」についてご紹介します。なお、この[…]
しかし、いくら魚がルアーを発見したからといって、そのルアーに食いつくかどうかは別の問題です。
このページでは、魚がルアーに食いつく理由(魚がルアーで釣れる理由)についてご紹介します。
魚の形状識別能力はとても優れている
第13回の記事でもご紹介したとおり、魚はヒトが識別できないような図形の違いも正確に識別できます。
つまり、魚は形を識別する能力がとても優れているのです。
したがって、本物の小魚と偽物のルアーの違い程度であれば魚は容易に区別できると考えることができます。
ルアーは魚の泳ぎを再現できない
釣りや魚に興味がない人は、ルアーが泳ぐ姿を見て
と驚くことがあります。
でも、きちんと観察してみるとすぐに気づくはずです。全然魚っぽくないということに(笑
魚の泳ぎは生命感のあるしなやかで不規則な動きです。
一方、ルアーの動きは規則的で無機質な動きです。
ルアーのアクションというのはローリング・ヨーイング(ウォブリング)・ピッチングの3つの動きに分けられます。
ルアーの動きはこの3つの動きの組み合わせなので、一応は『複雑』な動きといえます。
でも、複雑だけど規則的です。3つの動きがアットランダムに発生するわけではありません。
3つの動きの組み合わせによる規則的な動きでルアーのアクションは構成されます。
つまり、ルアーが実物の小魚の泳ぎに似ていることはありえないのです。
なぜ、魚はルアーで釣れるのか?
魚の形状識別能力が抜群であり、ルアーでは魚の動きが再現できないとなると
という疑問が生まれます。
というより、僕は師匠から↑の話を聞いたときに率直にそう思いました。
これに対する師匠の一応の回答としては
と説明されました。
『ルアー(lure)』の語源
これは半分どうでもいい話です。
lure(ルアー)という単語は日本語ではおおざっぱに『疑似餌』と訳されることがあります。
でも、lureという単語の本来の意味を調べてみると、どうやら「惹きつける」という意味になるようです。
つまり、ルアーのルーツをたどると、ルアーはターゲットをだます偽物のエサではなく、ターゲットを惹きつける魅惑の道具として考えられていたようです。
ルアーの機能=「惹きつけて、間違いを起こさせる」
僕は、師匠から、ルアーについて
と教わりました。
とうるさく説明されました(笑
ゼロから始めるシリーズのルアー編第20回の記事で「シーバスがルアーを感知(発見)するうえで、『波動』と呼ばれる水粒子の動きがどれほど影響があるのか?」ということについて記載しました。この記事では、シーバスがルアーを発見する[…]
「だます」と「間違いを起こさせる」の違い
正直、師匠からはじめてこれを教わったときは、2つの違いはわかりませんでした。
今となっては、こう↓いうことかな?と理解しています。
板チョコはアメよりも100円高い。
アメ1個の値段は?
という有名な誘導問題。
答えはアメ1個5円です。(ちなみに板チョコが105円)
これを一瞬でも100円と10円だと思ったそこのあなた。
間違いの解答に誘導されています。
この問いは、出題者が解答者をだましているわけではありません。解答者も、何かにだまされて間違えたわけではありません。
大人が冷静に考えれば間違えるはずのない問題です。
それでも、間違えることがあります。
問題に巧妙に組み込まれた仕掛けが解答者の思考回路の中で発動したとき、解答者は間違えてしまうのです。
魚とルアーにも同じような現象が起こっていると理解しています。
ルアーは魚をだませるような代物ではないし、魚もルアーにはだまされない。
でも、ルアーに組み込まれた機能が魚の目の前で作動したときに、魚が間違いを起こしてしまう。
これが『道具としてのルアーの機能』です。
間違いを起こさせる『ルアーの機能』とは?
魚に間違いを起こさせるための『ルアーの機能』があるとした場合、それはどのようなものでしょうか?
カラー? アクション? ボディの形状・大きさ? ルアーの目の色や大きさ?
いろいろ考えられます。
結論からいえば
わからない
というのが現状です。
拍子抜けするかもしれませんが、それが現実です。
ゼロから始めるシリーズのルアー編第20回の記事で「シーバスがルアーを感知(発見)するうえで、『波動』と呼ばれる水粒子の動きがどれほど影響があるのか?」ということについて記載しました。この記事では、シーバスがルアーを発見する[…]
機能が特定できるとルアーの形は効率的になる
では、魚に間違いを起こさせるためのルアーの機能は「わからない」と、なぜいえるのでしょうか?
たとえば、漁をするための道具である漁具は、獲物を惹きつける効果が高い特徴を誇張し、不要な部分を省略する形で作られます。
これらは、まったく意味不明の形状をしていますよね?
これで本当に魚が釣れるの?って思える形状です。
でも、実際のところ、魚を惹きつける効果の高い特徴を誇張して、不要な部分を省略した結果、このような形状になったといわれています。
実は、これは世界共通の現象のようです。世界中に意味不明な形をした漁具というのが存在しているそうです。
誘引効果の高い特徴を誇張して、不要な部分を省略する。その結果、本物とは似ても似つかない形になったのです。
現代のルアーは誘引機能を特定しきれていない
そこで、日本のルアー市場に目を向けてみます。
日本のルアー市場では、毎年新しいルアーが出ては消えていきます。
魚に間違いを起こさせるための『ルアーの機能』が特定できているのであれば、こんなに無数のルアーは必要ありません。
魚を惹きつける効果の高い特徴を誇張して、不要な部分を省略した効率のいいルアーが存在していてもいいはずです。
カラーについても同様です。もっと効率的なカラーラインナップがあってもいいはずです。
でも、残念ながら、そのような効率的な形や色のルアーはありません。
魚に間違いを起こさせるための『ルアーの機能』というのはどんなものなのか?
という問いかけについては、「わからない」というのが現状のようです。
道具としては完成形なのかもしれない?
ときどき思うことがあります。
現在、ルアー市場はたくさんのルアーで溢れています。各メーカーは、ルアーごとの特徴を事細かにアピールしています。
でも、もう少し大雑把にルアーを眺めてみると、誰でも感じることがあります。
どれがいいのか違いが全然わからないわ
と。
たしかに、ルアー市場にはたくさんのミノーが存在しています。でも、ミノーならどれも、だいたい似たような形をしています。
また、カラーの種類も各メーカーがだいたい同じようなラインナップです。
つまり、魚に間違いを起こさせるための『ルアーの機能』という点については
現在のルアーは道具としてある程度「完成されている」
と考えることもできるかもしれません。
「だます」と「間違いを起こさせる」を区別する意味は?
最後に、「だます」と「間違いを起こさせる」を区別することの意味についてご紹介します。
結局のところ、魚がルアーを見つけてルアーに食いついてくるのであれば、だまされた結果であろうと、間違いを起こしてしまった結果であろうと、どっちでも同じでは?とも思えます。
この点について、ルアーを選ぶアングラーの立場からすると、一応は区別しておいた方が無難です。
というのも、「だまして釣る」という認識でルアーフィッシングをしていると、ルアーを選ぶとき、どうしても
だませそうなルアー
を選びがちになります。
たとえば、超リアル系のカラーとか。あるいは、多連結系のクネクネと動くルアーとか。
でも、「魚の興味を惹きつけて、機能を駆使して間違いを起こさせる」というルアーフィッシングのルーツ的な考え方からすると、必ずしもリアルである必要はありません。
リアルカラーよりも目立つカラーの方が魚の興味を惹けるかもしれません。
艶めかしいクネクネした動きよりも、キビキビとメリハリのある動きの方が魚の興味を惹けるかもしれません。
また、「魚をだます」つもりでルアーフィッシングをすると、どうしてもルアーに頼った受け身の釣りになります。
あのルアーを使ってみたり、このルアーを使ってみたり。
一方で、「間違いを起こさせる」つもりでルアーフィッシングをしている人は、同じルアーであってもいろんな方法で魚にアプローチを試みます。
一つのルアーを、こう動かしてみたり、ああ動かしてみたり。
ルアーフィッシングのルーツに遡ってみると、ルアーフィッシングがもっともっとエキサイティングなものになっていきます。
ルアーの機能を駆使して魚に「間違いを起こさせる」
昔、師匠に教えられた言葉に
じゃない
を意識しろ
というものがありました。
選んだルアーをどう駆使して、魚に間違いを起こさせるのか?
それを考えろ
ということです。これこそ、エキサイティングなルアーフィッシングの醍醐味と師匠は考えていたようです。
釣りはあくまで趣味のレジャーです。
という人もいるでしょう。
もちろん、それは大いに結構なことです。
ただ、これから沼にハマってみようと思う人は、ぜひ、
アングラーの方から魚のバイトを引き出していく
というエキサイティングな釣りに挑戦してみてはいかがでしょうか?
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