長時間冬の釣りを快適に楽しむために、服装はとても重要です。
防寒着はそれ自体が暖かいので、着るだけで安心感があります。
でも、防寒着にはそれぞれに最適な役割があり、その役割をこなすための機能が備わっています。防寒着に備わった機能も「着かた」を間違えるとせっかくの機能が台無しになってしまいます。
このページでは冬の釣りを快適に楽しむための防寒着の考え方についてご紹介します。
覚えておきたい「レイヤリング」
防寒対策の定番であり、かつ、釣りを快適に楽しむのに最適な方法が
重ね着(レイヤリング)
といわれるもの。
という声もありそうですが、ただ単に服を重ねて着ればいいというわけではありません。
防寒着に備わった機能を最大限に発揮するための最も効果的な重ね着方法があるのです。
3レイヤー方式
防寒着の機能を最大限に生かすための基本的な考え方が3レイヤー方式(3層方式)と呼ばれるものです。
3レイヤー方式とは
②ミドルレイヤー
③アウトレイヤー
という3層に大きく分けて、それぞれの層に求められる役割に適った防寒着を着る方法です。
注意しなければならないのは、どの層の防寒着も厚手のものを控えるということです。
厚手の防寒着を着用すると着ぶくれや動きにくさの原因になります。
ベースレイヤー
ベースレイヤーとは、肌のうえに直接着るインナーのことです。
最近では「ヒート〇〇」や「〇〇ヒート」という名称で様々なものが発売されていますが、暖かければ何でもいいというわけではありません。
ベースレイヤーに求められる最も重要な役割が汗を素早く吸水・拡散して肌をドライに保つことです。
釣りをしている最中にはあまり実感ありませんが、キャスト・リトリーブ・移動…を繰り返すルアーフィッシングは、想像以上に汗をかきます。
そして、冬の釣りにおいて最も避けなければならないのが肌面に汗を長く蓄えてしまうことです。
肌面に汗を長時間蓄えてしまうと汗冷えの原因になります。ひいては、低体温症の原因にもなりかねません。
ベースレイヤーに求められる機能は汗を素早く吸水・拡散して肌をドライに保つこと、すなわち
です。
肌触りがいいという理由で好んで着られるインナー素材は「綿」です。
でも、綿製品は吸水性はいいのですが速乾性が高くありません。
綿は吸水した汗を長く肌面に蓄えてしまうので汗が冷えてくると体温を奪われます。
理想的なベースレイヤーは、かいた汗や水蒸気を熱に変えて発熱し、さらにはその汗を素早く肌面から逃がしてやる素材がベストです。
ミドルレイヤー(ミドラー)
ミドルレイヤーはベースレイヤーの上に着るインナーです。
ミドルレイヤーの役割は暖かい空気を体近くに溜めてアウターの内側に空気の層を作ることです。
ベースレイヤーに発熱素材のインナーを着て、体の付近に暖かい空気の層を作っても、これがすぐに外部に出て行ってしまうと意味がありません。
保温性のあるベースレイヤーによって作り出された暖かい空気の層を、ミドルレイヤーによって体の近くに溜め込むことで、ベースレイヤーの効果をさらに高めることができます。
ミドルレイヤーに求められる機能は暖かい空気を体の近くに溜めこみつつ発汗による水蒸気を外部に放出すること、すなわち
です。
インナーが汗を吸水するので、ミドラーが直接汗を吸水することはありません。
でも、水蒸気となった汗は外部に出て行こうとするので、長時間釣りをしているとミドラーの生地もしっとりと湿ってきます。
そのため、速乾性の高い素材か通気性のよい素材がおすすめです。
おすすめなのはフリースやライトダウンジャケット(ライトダウンベスト)です。
僕の場合、フリース素材のミドラーのうえにライトダウンベストを着ています。
モコモコになると動きづらいので、ダウン系のミドラーを着る場合には薄めのライトダウンがおすすめです。
アウトレイヤー(アウター)
アウトレイヤーはミドルレイヤーのうえ、レイヤリングの一番外側に着る防寒着です。
アウトレイヤーの役割はベースレイヤーとミドルレイヤーによって作り出したレイヤー内部の暖かい空気を冷たい外気から保護しつつ、衣類内部をドライに保つことでレイヤリング全体の効果を最大限に発揮することです。
ミドラーに着るダウンジャケットはアウター使いされることもあります。
しかし、ダウンジャケットは羽毛を生地の内側に入れるため衣類がモコモコになりやすく、これを防ぐためにステッチ(縫い目)が多い構造になっています。
縫い目が多いとジャケットの内部に外気が浸入しやすく、せっかく衣類内部に暖かい空気の層を作っても、長時間外気に晒されていると保温効果が下がってしまいます。
そこでアウトレイヤーに求められる機能は衣類内部の暖かい空気の層を守ること、すなわち
です。
「アウター=暖かいもの」と思われがちですが、防風・防水・透湿性能から比べると暖かさというのは優先順位は高くないです。
透湿性能とは衣類内部の湿気を外に放出して衣服内部をドライに保つ性能です。
汗が蒸発してもアウターの外部に放出されないと、アウター内部にすぐに水滴が付着してきます。
真冬だとアウター内部の水滴はすぐに冷たくなるので、アウター内部に水滴が残ると体温を奪い、冷えの原因になります。
大げさな表現になりますが真冬の衣類内部の汗は命に関わることになります。
暖かさよりも、防風・防水・透湿性能に優れたアウトレイヤーを選ぶのが絶対条件といえます。
透湿性能とは衣類内の気化した蒸気をどれだけ外部に排出できるかの目安です。
〇〇g/㎡(たとえば5000g/㎡)という単位で表示されます。
24時間で生地1㎡あたり5000gの水分を透過する性能があるということです。
蒸れにくい防寒着としては8000~10000g/㎡くらいの性能があった方が良いといわれています。
生地の内側がサラサラの防寒着ともなれば最低でも10000g/㎡以上…できれば20000g/㎡くらいの性能があった方がいいそうです。
防水性能とは「耐水圧」ともいわれ、生地に染み込む水の力をどれだけ抑えられるかの目安です。
防水性能は〇〇mm(たとえば500mm)という単位で表示されます。
1cm四方の生地にトイレットペーパーの芯のような筒状の容器を立てて、どれだけの高さまで水を張ると生地に水が染み込むか、ということを表しています。
耐水圧500mmの生地の場合、500mm(50cm)の高さまで水を張ると、生地に水が染み込んでくるということです。
一般的なナイロン傘は耐水圧300mmくらいといわれています。
耐水圧300mmの生地であれば通常の雨はしのげるということです。
イージス(ワークマン)じゃダメ?
2017年頃から「安くて高性能」で釣りにも使えるということで、釣り用防寒着として急激にシェアを拡大したのが作業着メーカーWORKMAN(ワークマン)のイージスという防寒着。
SNSや動画共有サイト上でとても話題になり、作業着屋さんに女子たちが挙って押し寄せたとか押し寄せていないとか…
YouTubeでもイージスに関するレビュー動画が数多く配信されています。
現在でもワークマンのイージスは釣りに使う防寒着として売れに売れています。
最近では作業着を利用する人以外に向けたワークマンプラスというブランドも展開しています。
ところで防寒着としてイージスではダメなのか?
結論からいえば、曇りの日の餌釣りならまったく問題ない。
けど、ルアーフィッシングを長時間するには
というところです。
20代の過酷な経験
20代の頃ってまだ基礎代謝も高くて中年よりも寒さを感じにくいです。
少なくとも、僕は寒さを感じくかったです。
なので、防寒着にはけっこう無頓着で
って感覚がありました。
そのため、レイヤーの役割・機能なんか考えずに、とにかく重ね着をして釣りに出掛けて行ってました。そして、帰ってきて防寒着を脱ぐと汗びっしょりって感じ。
これは、真冬のとある夜にアジングに行ったときの経験です。
2005年頃にメバリングとアジングにハマっていて、真冬なのに連日ウルトラライトゲームのために冬の日本海に出掛けていました。
「アジング」という言葉が市民権を得たかどうかって頃の話です。
その夜は常夜灯付近に魚の気配がなかったので、ランガンしながらかなり長い距離を歩いていました。
それでも全然釣れなかったので、自動車の近くで一服しながら少し休憩していたら、ちょっと意識が低下してきた感覚がありました。
寒さはあまり感じでいないんですが、ボーっとする感じが続いていました。
(基本的にはかなりビビりな方なので)その日はそのタイミングで納竿して帰宅しました。
汗でびしょびしょになった服を脱ぎながら「熱でもあるのかな?」と思って計ったところ、なんと体温が35.4℃でした。
熱があるどころか、低体温症の一、二歩手前ぐらいのところまで体温が低下していました。
それ以来、防寒着のことをきちんと調べるようになり、冬の防寒対策は直接的な外気の寒さもさることながら、汗が冷えて体温が奪われることから、いかに体を守るかが重要ということを学びました。
結局イージスはどうなのよ?
真冬に釣りをする人は経験があると思いますが、かなりしっかり防寒して釣りをしていると、自分ではほとんど動いていないつもりでも、けっこうな量の汗をかいているのが普通です。
タイタニュームグローブをして釣りをしていると、グローブを外したときの手は汗でびっしょりです。
ルアーフィッシングのような動きのある釣りでは真冬でもけっこう汗をかくので、肌に近い衣類がなるべく濡れたままにならないように、吸水性能・速乾性能に優れたベースレイヤーと、透湿性能に優れたアウトレイヤーが理想です。
イージス(ワークマン)の透湿性能は「蒸れにくい」というレベルでは充分な機能を持っているのですが、透湿性能は5000g/㎡の防寒着が多いです。
イージスは、どちらかといえば防水性能に焦点を当てた商品というイメージ。
とはいえ、イージスブランドの中には透湿度25000g/㎡/24hというゴアテックス並みの数字を持った商品もあります。
夏場であれば衣類や肌が少々ベタついてもどうってことないですが、冬場に衣類内部が濡れていると快適に釣りをすることはできません。
冬場なのでそれほど長時間の釣行はしないというのであれば基本的にはダウンジャケットでも問題ありません。
ただ、冬がベストシーズンになる釣り物もあるので、やはり”冬でも釣りをしたい!”というアングラーもおられることでしょう。
その場合にはイージスブランドの中でも透湿性能に優れたものを選びましょう。
進化するイージス!アウターは防風・防水・透湿性能で選ぶ!!
どれだけ暖かい防寒着や高性能な素材の防寒着を着ても、着どころを間違えると防寒性能の効果を最大限に発揮することはできません。
たとえばダウンジャケット。
普段使いではアウターとして使用されることが多いですが、防風性能・防水性能という点でみると、屋外のアクティビティである釣りには不向きです。
アウターに暖かい服を着たくなるのもわかります。そのため、近年ではコスパの高いワークマンが注目されています。
でも、防寒着にはそれぞれに適切な役割や機能があります。暖かければいいというわけではありません。
この防寒着の効果を最大限に発揮できるのが3レイヤー方式です。
3レイヤー方式をしっかり理解して快適な冬のフィッシングライフを送りましょう。