【ステップアップ】謎のカーボン素材「T1100G」を徹底解説!ロッドの性能を変える最先端技術とは?【第2回】

釣り具メーカーのカタログや公式サイトで「T1100Gカーボン使用」「ナノテクノロジーカーボンを採用」といった表記を目にすることがあります。

しかし

ビギナー
T1100Gって何?
ビギナー
T1100Gを使ったロッドって何が違うの?

と疑問に思う方も多いはずです。

そもそも、我々おっさん世代にはT1000といわれてもターミネーターしか思い浮かばない!

このページでは、T1100Gの素材特性やプリプレグとの違い、ナノアロイ技術の関係性、さらには主要メーカーのT1100Gを採用したロッドの紹介までご紹介します。

かみ砕いた説明のため、内容的に不正確・不十分な部分があります。
ご了承ください。
2021年5月24日に公開した記事をリライトしたページです。
執筆者
ショーカラ(y-nax)
『釣り』の翻訳家
最近の釣りメディアでは、釣りに関する情報がメーカーのために中・上級者目線で発信されるようになりました。ナチュラルリリースでは、ビギナー目線で語られることが少なくなった「釣りに関する『キホンのキ』」をビギナー目線で発信しています。

FAQ(よくある質問)

T1100Gはカーボンシート(プリプレグ)ですか?
いいえ。T1100Gは東レのカーボン繊維(糸)の型番です。プリプレグとは、このカーボン繊維を布状に織り、樹脂を含浸させたシートのことです。ロッドにはプリプレグが使われます。

T1100Gを使ったロッドは、ほかのロッドと何が違うのですか?
T1100Gは従来のカーボン繊維よりも高い引張強度を持つため、軽量化と耐久性を両立できます。

T1100Gはどのようなメーカーのロッドに採用されていますか?
ダイワ、シマノ、オリムピックをはじめ、がまかつやメジャークラフトなど、国内の多くの人気メーカーのロッドに採用されています。

ロッド(釣り竿)の素材は何?

ロッドの素材は大きく分けると「グラスファイバー」か「カーボン」のどちらかです。

現在は軽量で高感度のカーボンロッドが主流となっています。

カーボンロッドの素材になるカーボンシートは以下のような構成で作られます。

カーボン繊維(カーボン糸)
     ↓
それを布状に織ったカーボン布
     ↓
カーボン布に樹脂を染み込ませたプリプレグ(カーボンシート)

カーボン繊維とカーボン・プリプレグの違い

【カーボン繊維(糸)】
糸の状態の素材。軽くて強いが単体では使えない。T1100はカーボン繊維の型番。
【カーボン・プリプレグ】
カーボン繊維を布状に織り、樹脂を含浸させたシート。ロッドはこのプリプレグを巻き付けて成形する。

つまり

T1100G=カーボン繊維(糸)
プリプレグ=T1100Gなどのカーボン繊維をシート化して樹脂を加えた半製品

ということです。

T1100Gとは?

T1100Gは、東レの高性能炭素繊維「トレカ®」シリーズのひとつです。

 
ショーカラ
つまり、たくさんあるカーボン糸の種類のひとつです

従来のカーボン繊維よりも高い引張強度と軽量性を両立させた素材です。

この繊維からつくられたプリプレグでロッドを製造すると、従来以上に軽量・高強度・高感度なロッドにすることが可能になります。

T1100Gのスゴイところ ― 従来のカーボン繊維との違い

従来のカーボン繊維では、「強度を優先すれば重くなる」「軽量化を優先すれば折れやすい」というトレードオフがありました。

 
ショーカラ
軽量である高弾性カーボンは「弱い」「脆い」といわれてきました

一方、T1100Gは、公表値で従来のカーボン繊維に比べて1.2〜1.3倍の強度とされています。

これにより、同程度の軽量のロッドでも、従来よりも高強度のロッドを製造することが可能になりました。

ナノアロイ®技術との関係

T1100Gと並んでよく耳にするもう一つの素材がナノアロイ®です。

ナノアロイ®というのは樹脂の製造に関する技術の名称であり、カーボン素材ではありません。

この革新的技術は、樹脂内にナノサイズの微粒子を均一分散させることで、衝撃吸収性や耐久性が向上するといわれています。

上記のとおり、ロッドの素材になるプリプレグは

カーボン繊維+樹脂

で構成されています。

つまり、カーボン繊維であるT1100Gの性能を最大限引き出すのがナノアロイ®技術の役割です。

T1100Gの強靭さとナノアロイ技術による樹脂の衝撃吸収性・耐久性が合わさることで、軽量かつ高感度で高強度のロッドが誕生するのです。

T1100Gを使用したロッドのメリット

高強度で折れにくい

従来のカーボン繊維(T800など)と比べて、T1100Gは引張強度が大幅に向上しています。

これにより、強い負荷がかかっても破断しにくく、大型魚とのファイトや不意な高負荷に耐えられる安心感があります。

軽量かつシャープな操作性

T1100Gで作られたプリプレグは強度が高いため、必要な素材の厚み(ロッドの重量)を抑えることが可能になります。

結果として、ロッドを軽量化でき、キャストや操作の疲労感を軽減することができます。

特に、一日中キャストを繰り返すシーバスフィッシングやショアジギングで効果を実感できます。

高感度

素材の厚みを抑えて軽量化できることで、ブランクスの振動伝達がスムーズになります。

そのため、ルアーの動きや水中の変化、魚の小さなアタリまで伝わりやすくなります。

 
ショーカラ
金属的なアタリになって手元に響いてきます

トルクフルな粘り

T1100Gは高強度といわれるため「硬くて強い素材」と思われがちですが、そうではありません。

強さとしなやかさを両立した「軽量・高感度だけど粘り強いブランクス」というものです。

粘りの強さ復元力によって、大物とのファイト時にもロッド全体で魚の引きを受け止めるだけでなく、それと同時に主導権も引き寄せます。

ナノアロイ®技術との相乗効果

T1100Gから作られたプリプレグの多くは「ナノアロイ®技術」が採用されています。

樹脂をナノレベルで強化することにより、軽量・高強度・耐衝撃性能などをさらに高める効果があります。

T1100G単体の強さに加えて、ナノアロイ®技術を採用することで、ロッド全体の完成度をワンランク上げているのです。

T1100G搭載ロッドのご紹介

モアザンブランジーノEX AGS(ダイワ)

Foojin’ RS(アピア)

タイドリフト5G(メジャークラフト)

T1100G搭載ロッドで釣りの常識が変わる!

◆T1100Gはカーボン繊維
◆T1100Gから作られたカーボン・プリプレグがロッドの素材
◆T1100Gの特性は引張強度が従来の1.2~1.3倍
◆T1100Gで作られるプリプレグはナノアロイ技術で作られた樹脂を含有している
◆T1100G+ナノアロイ樹脂→高強度と高復元力・高感度を両立

T1100Gは単に“強いカーボン”ではありません。

軽さ、強さ、感度、そして粘り――

これまで相反していた性能を、ナノアロイ®技術による樹脂と組み合わせることで、高次元で両立した革新的な素材です。

T1100Gを採用したロッドは、

「もっと飛ぶ」「もっと感じる」「もっと攻められる」

という点で釣りの常識を変えるポテンシャルを秘めています。

各メーカーが相次いでT1100Gを採用し始めている現在、「ロッドの素材にこだわる」ことが釣果を左右する時代がすでに到来しています。

あなたの次の1本をT1100G搭載ロッドから選んでみてはいかがでしょうか。

もう少し知りたい人へ

このページでは「T1100Gがナニモノで、どういう特性があるのか?」をざっくりとご紹介しました。

そのため、細かい説明はだいぶ省略しました。

ここからは、もう少し細かいことを知りたい人向けに、いくつかテーマをピックアップしてご紹介します。

トレカ®とは

T1100Gをきっかけに東レのウェブサイトを初めて見た人は、『トレカ®』というワードを度々目にしたことでしょう。

これは、炭素繊維に関する東レ独自の商標です。

 
ショーカラ
東レが開発・製造している炭素繊維製品のことです

炭素繊維製品をトレカと表現しているのは東レだけです。

ナノアロイ®はカーボン素材ではない

これは本編でもご紹介しました。

ナノアロイはエポキシ樹脂に関する技術です。

ただ、ナノアロイ技術が登場した2013年頃、ナノアロイ技術のことを『ナノカーボン』と表現しているメーカーがありました。

そのため「ナノアロイ=カーボン素材」のような誤解が生じたことをよく覚えています。

確かに

ナノアロイ技術で作られたエポキシ樹脂を含有したプリプレグ

という意味を省略して表現すればナノカーボンになるのかもしれませんが…

これは誤解を生む表現です。

プリプレグには樹脂がけっこう含まれている

カーボン・プリプレグに関する東レの物性表を見てみると樹脂含有率という欄があります。

プリプレグ全体でみるとカーボン繊維(トレカ)が60~80%、樹脂が20~33%

樹脂もけっこう多く含まれていることがわかります。

ナノアロイ技術による樹脂を使用すればプリプレグに含まれる樹脂の量を減らせる

…という話を聞いたことがあるかもしれません。

ただ、物性表を見る限り、ナノアロイ技術を適用したプリプレグが特別に樹脂の量が少ないわけではないようです。

雑誌やメーカーのウェブサイトを見ていて気になることがあれば、今後もこのページに追記していきます。

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