ロッドは釣りにおいて右腕というべき存在で、少しの使用感の違いが釣りの快適さにとんでもないくらい影響(良影響・悪影響)を与えます。
なので「少しでも高い方がいいのかな?」と思ってハイエンドモデルに手を出してみたものの

と感じることもしばしば。
このページではハイエンドロッドと下位モデルの違いについてご紹介します。
高いなりの理由がある
◆ガイドの数と材質
◆専用設計かどうか
◆パーツの素材
主だったものを挙げてみるとこんなところ。
一つ一つ見ていきます。
ブランクスの素材
見落とされがち(?)なのがブランクスの素材の違いです。
よく「高弾性カーボンは高価、低弾性カーボンは安価」と言われます。
それは間違ってはいませんが実はそれぞれのカーボンにもいくつも種類があるということ。

これは東レのカーボン製品表の抜粋です。
表の一番右側は製品番号です。表の一番右側が【使用炭素繊維】を表しています。
『M40JB』というのがあります。これがいわゆる高弾性の40tカーボン素材です。
40tカーボン素材だけで9種類あることがわかります。
わかりやすい違いでいえば厚みです。40tカーボンには0.07mm~0.16mmの厚みの異なるカーボンシートがあります。おおよそ倍半分の厚さの違いがあります。
一般的には薄いカーボンシートの方が高価だそうです。
とにかく同じ弾性率のカーボンシートにも価格の違う数種類のカーボンシートがあるということです。
ガイドの数と材質
たとえば一般的なシーバスロッドの一番大きなガイド(サイズ30)で比べると
SiCリング+ステンレスフレーム:1300円
ガイド1個で3400円ほどの違いがあります。
最近のハイエンドクラスのロッドに使われる一番大きなトルザイトガイド(チタンフレーム)はガイド1個で5000円近くします。
小さいサイズのガイドではそれほどの価格差にはなりませんが、ガイドは個数が多いのでガイドだけで6000円以上は価格が違ってきます。
専用設計か汎用設計か
ロッドには専用設計のモデルと汎用設計のモデルがあります。
ハイエンドモデルになるとトッププロが開発に携わった専用設計がほとんどです。
ところでロッド(ブランクス)の作り方はご存知でしょうか?
言葉にしづらいのですが簡潔にまとめると次のとおりです。
②上記①を窯で焼く
③鉄芯を抜く
イメージとしては鉛筆(=鉄芯)にA4用紙(=カーボンシート)をクルクル巻き付けていく感じです。別にA4でなくてもイイのですが…
鉛筆を抜くとペーパーが竿の形になると思います。
問題はこの鉄芯(=芯金)です。マンドレルと呼ばれるロッドの金型です。
これが専用設計モデルになると専用設計モデルごとにマンドレルを準備する必要があります。
極端にいえば専用モデルに携わっているプロの数だけマンドレルが必要になります。
長さが9.2ftだったり8.10ftだったり9.4ftだったり…とにかく汎用モデルにないレングスのロッドが無駄に多いからです。
あとは極端な先調子のロッドのような性能の尖ったロッドになると汎用モデルとしては受け入れられないので、やはり専用設計としてマンドレル(金型)を別に作成する必要があります。
逆に汎用モデルはどのメーカーでも金型を流用しています。
たとえば長さ。汎用モデルは8.6ft、9.0ft、9.6ft、10.0ft、10.6ft…とだいたい6インチ刻みになっています。
これはマンドレルを流用しているからです。
汎用モデルの中でもダイワの【ラテオ】と【ラブラックス】のように価格差に違いのあるものがあります。
これはマンドレルを流用しつつ、カーボンシートの素材、独自技術の使用の有無、ガイドの素材などに差をつけることで差別化を図っています。
そしてこのマンドレル。
実は相当にお高いそうです。
「ただの棒状の金型だろ?」と思うのですが、マンドレルを流用できるかどうかはロッドのコストに大きな影響を与えるようです。
パーツの素材
ハイエンドモデルのロッドには、そのモデルのみに使われているようなメタルパーツがあったりしますが、下位モデルのロッドのパーツは汎用パーツを流用したり、かつてハイエンドモデルに使われていたパーツを流用したりします。
それからグリップ。
ソルトルアーロッドはほとんどがスポンジの様なEVA素材が使われていますが、一部のハイエンドクラスのロッドはコルクグリップのものもあります。
だいたいEVAとコルクではコルクの方が3倍以上価格が高いです。
長いコルクになるともっと価格差があります。
ハイエンドモデルはコルクグリップを採用することで下位モデルと差別化を図っていることもあります。
高い方がイイとは限らない
ここまで見てきたように、ハイエンドクラスのロッドは高価な素材を使用したり専用設計にすることで下位モデルとの差別化を図っています。
高いロッドには高いロッドなりの理由があります。
じゃあリールと同じように『目的を達成できるロッドの中で最も高価なロッドがアングラーにとって最適なロッドか?』というと、そうとは言えない難しさがロッドにはあります。
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この記事でも書きましたが、ロッドはハイエンドの方が使いやすいって一概にはいえないんです。
ロッドは釣りしている最中はほぼ握りっぱなしで手から離すことのない道具です。
まさにアングラーの右腕というべき存在。
それゆえわずかなグリップの長短であったり1~2gほどの先重りの違いがとんでもなくストレスになることがあります。
使って行けばある程度は慣れていくものですがファーストインプレッションで気になったポイントはけっこう後まで尾を引いて気になります。
そしていうまでもなく、手首の力・握力・キャストのクセ・釣りのスタイルなんかは十人十色でアングラーごとに全く異なるので、トッププロを中心として専用設計されたハイエンドロッドが必ずしもすべてのアングラーにフィットするかどうかはわからない。
ハイエンドロッドの方が優れた素材をふんだんに使った良竿であることは間違いないですが使いやすいロッドかどうかは別問題です。
まとめ
◆ハイエンドロッドが使いやすいロッドかどうかは別問題
ハイエンドモデルのロッドは下位モデルのロッドと比較すると、使われている素材が高価であったり、下位モデルには使われていない技術を搭載したり、専用設計にするなどにより確実に下位モデルとの差別化を図っています。
しかし使い手側であるアングラーは、手首の力・握力・キャストのクセ・釣りのスタイルなどが人によって様々なので、すべてのアングラーにとってハイエンドモデルのロッドが使いやすいロッドというわけではありません。
管理人もブランジーノやエクスセンスを渡り歩いて自作ロッドに落ち着きました。
(実は自作に使っているロッドが超高級素材ということもあります)
リールのように目的に合えば高い方がイイというものではありません。
ロッドはなるべく店頭で触ってみて(できれば振ってみて)選びましょう。
ロッド探しの旅は続く…
え? お前はどんなロッドが欲しいか?
