マルチピースロッドといえばセンターカット2ピースロッドがもっともメジャーです。
その次がバットジョイント。
そのマルチピースの中でひと際異彩を放つ存在なのがワン&ハーフ。
持ち運びにかなり気を使います。(#1と#2の長さがバラバラだから…)
ハッキリいって
というアングラーが少なくないと思います。
このページでは、ワン&ハーフのコンセプトをご紹介します。
2ピースロッドの本当のメリット
2ピースロッド(マルチピースロッド)は携行性に優れた持ち運びのためだけのロッドだと誤解されることが少なくありません。
確かに見た目だけで判断するとそう考えるのが自然です。
でも2ピースロッドの本当のメリットは別のところにあります。
マルチピースロッドの本当のメリットはこの点です。
各ピースごとのカーボン素材や調子を変えること可能になりロッド設計の幅が格段に広がるということです。
1ピースロッドであればティップからロッドエンドまで同じカーボン素材を用いることになるので、コンポジットはできても、まったく別のカーボン素材を組み合わせることはできません。
でも2ピースロッドは、ロッドを2つに分割した結果、まったく異なるカーボン素材を組み合わせることが可能になりました。
シマノのAR-C
マルチピースロッドのメリットにいち早く着目したのがシマノのAR-Cシステムでした。
シマノは投げ竿を参考にしてロッドを3つのセクションに分割しました。
ティップセクション・ベリーセクション・バットセクション
そして、それぞれのセクションの役割に合ったカーボン素材や調子を選ぶことで、誰が投げても飛距離を出しやすいオールランド-キャスティング(AR-C)システムを生み出しました。
大胆な方向性を打ち出したシマノでしたが、それほど大きなトレンドなることはありませんでした。
どちらかといえば
「シマノが変わったこと始めたな…」
という風潮でした(あくまで個人的印象)。
でも個人的には
メチャクチャ投げやすい
という驚きがありました。
2ピースロッドの弱点
2ピースロッド(マルチピースロッド)が誕生して以来ずっといわれ続けている唯一の弱点が
継ぎ目で折れるリスクがある
ということです。
2ピースロッドだからといって決して折れやすいわけではありません。
むしろ、継ぎ目を補強して十分な強度が出るように設計して販売されているのでそう簡単には折れません。
しかし、継ぎ目が存在する以上は常に折れるリスクがロッドに内在しています。
不十分な継ぎ方やキャストの繰り返しによる継ぎ目の緩みを原因となって、いとも簡単に折れてしまうことがあります。
しっかり継いでいれば強度的にはまったく問題はありませんが、
継ぎ目が存在する以上そこには折れるリスクが潜在的にある
ということです。
1ピースロッドと2ピースロッドの大まかな違いについてはコチラのページに記載してあります。[blogcard url=https://y-nax.com/rodpiece1/]ところで、2ピースロッドを毛嫌いする理由で最[…]
ワン&ハーフの誕生
弱点の克服
世の中には2ピースロッドでも折れやすいと思われていないロッド(折れにくさについて一定の評価を得ているロッド)が存在します。
それは
バットジョイント(グリップジョイント)
と呼ばれるロッドです。
リールシートの15cmくらい上に継ぎ目があるロッドです。
主にジギングロッドやバスフィッシングのヘビーロッドによく見られるタイプのロッドです。
バットジョイント(グリップジョイント)のロッドは継ぎ目の部分がかなり太くなっているため、見た目のイメージ的にも折れやすいという印象は受けません。
実際、ロッドの設計者も
細い継ぎ目ほど緩んだときに逝きやすい。
と仰っています。
しかしバットジョイントのロッドでは、結局150cm前後のブランクスを持ち運ぶことになるので携行性というメリットはそれほど大きくありません。
そこでセンターカット2ピースとバットジョイントの折衷的な位置に継ぎ目を設定し、なるべく太い箇所で継ぎ、かつ、バットジョイントよりも持ち運びやすくするために考えられたのがワンアンドハーフです。
ワン&ハーフロッドは、なるべく太い箇所で継げるようにセンターカット2ピースよりもグリップに近い位置に継ぎ目を設定し、緩みなどから生じ得る折れるリスクを可能な限り排除しようと試みられた設計のロッドです。
携行性の維持
なるべく太い位置でロッドを継ぎたいのであればグリップジョイントの方が理に適っています。
でも継ぎ目をグリップの位置まで下げると2ピースロッドの携行性というメリットがかなり小さくなってしまいます。
そこで、なるべく継ぐ箇所を太い位置に設定しつつ携行性を維持できる長さとして、#1は120~130cmに設定されています。
ちなみ、長さが140cmになった途端に携行性という点で問題が生じてきます。
1つは輸送(配送)に関する問題です。
宅急便や佐川急便などの大手運送会社は、普通料金で送れる荷物の大きさは3辺の合計が160cm以内とされています。
140cmのロッドを配送するための箱を用意するとなると、一番長い箇所が145cmくらいは必要になります。(140cmの長さのものを140cmの箱で送る人はいません)
すると残りの辺の長さが1辺あたり7.5cmしか余分がありません。
ベイトロッドのトリガー部分がだいたい6cmほど、スピニングロッドの一番大きいガイドも高さが6~7cmほどあります。
そうすると仕舞寸法が140cmのロッドでは160cm以内のサイズで輸送するのにミリ単位での調整が必要になります。
もう1つは航空機の問題です。
国内線であれば航空機の貨物室に収納できるサイズは200cmほどですが、国際線になると航空会社によってかなりバラバラです。
このサイズならだいたいイケるんじゃね?というサイズが
62インチ(約157.5cm)
です。
62インチ基準になると、仕舞寸法140cmではけっこう絶望感が漂ってきます。
「海外で釣りすることなんてあり得ねぇぜ」という人たちにとってはまったく関係のない話ですが、釣り目的で海外に行く人もいるわけで、そういう人たちにとっては超過料金を取られるかどうかはけっこう重要な問題です。
これらの理由から、ワンアンドハーフロッドは、ケースに入れたサイズが3辺合計62インチ以内におさまるように120~130cmに設定し、携行性をギリギリのラインで保持しています。
設計思想から定番商品へ
ワンアンドハーフというマルチピースの考え方(設計思想)はロッドビルダー業界ではずいぶん前から存在していました。
ロッドビルディングは発想がとにかく自由なので、ワンアンドハーフや(意味があるのかないのかわからない)逆印籠なんていうロッドもありました。
メーカーの商品としてもかつて販売されたことはあったと思いますが商品として定番化されることはありませんでした。
2007~2008年頃になってシマノが王様・村田基を起用して、最高レベルのカーボン素材と最高レベルのシマノの技術を用いて世界最強のワンアンドハーフロッドを開発し、売り込みを開始しました。
ワールドシャウラの誕生です。
ただし、いくらジムを起用したところでその当時はワンアンドハーフが定番化されるかどうかなんて未知数でした。
(いずれ消えるだろと思っていたのはナイショです…)
しかし海外の超ド級のモンスターフィッシュを釣り上げるセンセーショナルな村田基の映像や、日本国内の運送事情(上限160サイズ)が後押しして、ワンアンドハーフはマルチピースの一つのジャンルとして市民権を獲得するどころか、マルチピース化への流れを加速させ、マルチピースロッドの最先端を突っ走る存在へとなっていきました。
ビルダーの間のロッド設計の一つの思想でしかなかったワンアンドハーフが、マルチピースロッドの定番商品へと登りつめたのです。
ワン&ハーフのメリット・デメリット
粘り・軽量・高感度を実現
すべてのワンアンドハーフに共通するわけではありませんが、マルチピースロッドの最大のメリットはロッド設計の幅の広さにあります。
たとえばカーボンは、柔らかいカーボン素材(トン数の小さい素材・低弾性)ほどロッドに粘りがあり、厚巻きの強靭なロッドになります。その反面、ロッドが重く・だるくなります。
逆に硬いカーボン素材(トン数の大きい素材・高弾性)ほどロッドが薄巻きになり、パキパキの軽量・高感度ロッドになります。
折れにくいロッドを作る場合には、伸びのある素材(低弾性)で厚く重く仕上げます。ジギングロッドや怪魚系ロッドと呼ばれるロッドがこのタイプです。
軽量・高感度のロッドを作る場合には、伸びの少ない素材(高弾性)で薄く軽く仕上げます。アジングロッドなどの超ウルトラライトロッドがこのタイプです。
2ピースロッドやワン&ハーフロッドでは、これらの特徴を両方取り入れることができます。
細いピースである#1には折れにくく粘りのある低弾性カーボン素材を使用し、太くて折れにくい#2には超軽量高感度の高弾性カーボン素材を使って感度の良さを得る
こういう設計が可能になります。
これは一例で、とにかくロッド設計の幅が広がるということがマルチピースロッドの最大のメリットです。
持ち運びに気を使う
個人的にワンアンドハーフの一番のデメリットだと感じているのが持ち運びに気を使うことです。
#1と#2の長さが同じではないため#1の扱いに非常に気を使います。
センターカット2ピースの場合は移動中に#1だけどこかにぶつけてしまうということはほぼあり得ません。
でもワン&ハーフの場合は#1の方が長いため、#1だけを壁にぶつけてティップ折れの危険を感じることもあります。
おわりに
◆マルチピースの中でもワンアンドハーフは、バットジョイント並みの折れにくさと、世界中どこへでも行けて、日本国内どこへでも普通料金で配送できる携行性を兼ね備えている
ワンアンドハーフに興味があっても、実際にどんなメリットがあるのかわからなければ、単に「変わったロッドを使っている」としか言いようがありません。
ワンアンドハーフのメリット・デメリットを理解したうえで、もしワンアンドハーフに興味が湧いた人は…