釣りは自然が相手のレジャーです。
どれだけ人間目線で考えたところで、どんなアプローチ方法が正解か?ということを1つに絞ることはできません。
仮に魚が釣れれば、そのアプローチ方法は、いくつかある答えのうちの一つ…という可能性は十分にありえます。
ただ、それがすべてではないかもしれません。
もっと簡単に釣れるアプローチ方法があったかもしれません。
あるいは、何をやっても釣れる状況だったということもありえます。
自然の状況というのは(極論をいえば)時間の経過とともに常に流れています。
「似ている状況」はありえても「同じ状況」ということはありえません。
時間は常に流れているし、自然も常に変化しています。
プロアングラーの説明で
とか
という言い方をよく耳にします。
これは、そのプロアングラーの経験からすると間違いではないかもしれません。
でも、それがすべての釣り人にあてはまるかといえば、そうとは限りません。
プロアングラーの説明は説得的に聞こえるので、一般アングラー、特にビギナーの頃には鵜呑みにしてしまいがちです。
でも、釣れた状況を論理的に考えると、プロアングラーの説明どおりにシーバスが釣れたということはほとんどないかもしれない…ということに気づきます。
このページでは、釣りにおける「ごくごく基本的な論理的思考」をご紹介します。
魚釣りは『理屈』ではなく『想像』が支配する世界
レジャーの中でも『魚釣り』ほど不確定な情報が蔓延しているレジャーはほかにありません。
そう言っても過言ではないくらい、『理屈』ではなく『想像』のうえに成り立っているのが魚釣りです。
魚釣りのうち、特にルアーフィッシングはその傾向が顕著といえます。
シーバスフィッシングにおいてパターンやメソッドが定立されるとき、一見すると帰納的に導かれたパターンのようにも思えます。
たとえばコノシロパターン。
とか
という事実(らしい情報)をもとに
といったパターン化やメソッドが定立されていきます。
でも、考えてみると
って思える事例は無数にあります。
パターンやメソッドを定立するもとになった事実があいまいであれば、パターンやメソッドそのものもあいまいになってしまいます。
そうすると、それはもはや理屈のうえに成り立つ『パターン』ではなく『想像の産物』です。
魚釣りというのは、理屈ではなく釣り人側の意思(希望)やイメージが『事実』として捉えられることが往々にしてあります。
以下では、具体例を交えながら、ビギナーのあるべきスタンスについてご紹介します。
ルアーチェンジによるヒットパターン
ルアーチェンジによるヒットパターンの定立というのは、ルアーフィッシングにおいてとても多い『想像の産物』です。
たとえば
シーバスフィッシングにおいては何の変哲もないその日のヒットパターンのように思えます。
内容や状況をほとんど分析せずに他人の話を真に受ける人は
と思うかもしれません。
百歩譲って、写真↓のように同じルアーの同じカラーで、ルアーのサイズだけをアップしてよく釣れた場合には、「今日はルアーのサイズが大きい方が釣れる」といえるかもしれません。
では、この写真↓のように同じルアーであっても、サイズのほかにカラーも変えた場合はどうでしょうか。
もちろん、ルアーのサイズを大きくしたから釣れた可能性は十分にあります。
でも、カラーの系統がピンク系からチャート系に変わったから釣れた可能性も十分に考えられます。
また、ルアーのサイズ・カラーという両方の条件が変わってはじめてシーバスの捕食行動が誘発されたということも考えられます。
それでは、この写真↓のように別のルアーだけどルアーのカラーは同系統でルアーのサイズを大きくした場合はどうでしょうか。
もちろん、ルアーのサイズを大きくしたから釣れた可能性は十分にあります。
しかし、ルアーそのものが変わってしまった場合、アクションの変化によってシーバスの捕食行動が促されたことも考えられます。
また、ルアーのサイズとアクションいう両方の条件が変わってはじめてシーバスの捕食行動が誘発されたということも考えられます。
つまり、何が言いたいのかといえば…
いままで釣れなかったシーバスが何らかの理由によって釣れたとして、その釣れた理由を緻密に検討しようと思ったとき、
比較対象のファクター以外のファクターに変更点があってはならない
ということ。
要するに…
「ルアーのサイズを大きくしたことでシーバスの捕食が誘発された」というこの日のヒットパターンが成立するかどうかを考えるとき、ルアーサイズ以外のファクター(カラーやアクションなど)にも変更点があると、どのファクターが作用してシーバスが捕食に及んだか特定できないということです。
シーバスの捕食行動を誘発したファクターが特定できないにもかかわらず、「ルアーのサイズをアップしたことで釣れた」という答えを導くならば、それは『想像』や『希望』にすぎません。
当たり前の話のように聞こえますが、こういう当たり前の論理が意外に無視されるのがルアーフィッシングの世界です。
「ルアーのサイズを大きくしよう」という意図のもと、カラーもアクションも別物だけどサイズだけを大きくしたルアーにチェンジして釣れたときには、「やっぱり今日は大きいサイズの方がいいんだね」という(希望的)思考になってしまいがちなのです。
〇〇でしか釣れない状況がある
これもよく聞くフレーズです。
みたいな解説。
これは、真に受ける人もいるかもしれませんが、比較的ツッコミを入れやすい解説でしょうか。
って感じで。
まぁ、実際は500種類も試してないでしょうから、けっこう意地の悪いツッコミですが…
上の説明では
(僕の持っているルアーの中で僕が試した範囲では)〇〇しか釣れないときがある
っていう前提条件の説明が抜けてるんですよね。
試していないルアーがあるのであれば、もしかしたらそのルアーで釣れるかもしれない。
ハクパターンのときにメガドッグで釣れるかもしれない。
って言われるかもしれないけど、僕からすると
と思います。
確信犯なのか、説明がとても下手なだけなのか…
理由はわかりませんが、こういう雑な説明をきちんと理屈立てて理解しないと、雑な説明のせいで
と妄信してしまうことになりかねません。
同じルアーを投げてるのに〇〇カラーだけがよく釣れた
これもプロアングラーの具体例などでよく聞く話です。
だから、ベイトが△△のときは〇〇カラーが効果的!
という感じの説明。
確かに、「二人ともサイレントアサシン99Fのカラー違いを投げていて、チャートカラーだけよく釣れた!」というのであれば、そのパターンのときはチャートカラーが効く可能性も十分に考えられます。
でも、実際に問題になるのは(問題にすべきなのは)
シーバスからみて、その2つのサイレントアサシンは、カラー以外は本当に同じルアーに見えていたか?
ということ。
たとえば、このルアー↓。
ルアーが泳ぐ姿を真後ろから見たときと、真横から見たとき。
ルアーが泳いでいる姿が、シーバスから見て本当に同じルアーに見えているのか?
もちろん、釣り人の方は『カラーだけが違う同じルアー』ということは知っています。
でも、ルアーを見る方向・角度が違えば、シーバスの目に違うルアーのように映っても不思議ではないと思いません?
さらに付け加えると、アングラーが二人並んで釣りをしていたところで、そもそも1匹のシーバスが二人のルアーを同時に真後ろから見ることはできません。
一方のルアーを真後ろから追尾していれば、他方のルアーは横目に見ていることになります。
そうであるならば、シーバスにとってそもそも同じルアーという認識があったかどうか…
という前提条件は、あくまでアングラー側の『想像』や『推測』の域を出ないでしょう。
バイトを引き出すファクターはほかにもある
ここまでの具体例は、シーバスのバイトを引き出すファクターを『ルアー』に関するものに限定してご紹介しました。
でも、シーバスのバイトを引き出すファクターになるのは、なにもルアーのサイズ・カラー・スピード・アクションだけではありません。
水温や、日照・潮の流れの強弱、風やph濃度など存在な自然現象もシーバスのバイトを引き出すための重要なファクターです。
たとえば、小さな雲であっても、それが厚い雲であれば日差しを遮ります。
日差しが遮られた瞬間、今までゴールドに見えていたカラーが、光量が少なくなったことでブラックに近いカラーに見えるかもしれません。
そうすると、ルアーのシルエットがシーバスの目にもハッキリと映り、捕食スイッチが入る…なんてことも当たり前に考えられます。
自然条件といったルアー以外のファクターもシーバスのバイトを引き出すためのファクターになることは覚えておく必要があります。
論理的に思考をしないことの問題点
「ルアーのサイズを大きくしたら釣れた!」
とか
「ベイトが△△のときは〇〇カラーがよく釣れる」
というとき、比較対象としたファクター以外のファクターは、基本的には同じでなければなりません。
というヒットパターンを定立するとき。
このようなときは、ルアーのサイズ以外のファクター、たとえば、ルアーのカラー・アクション・スピードや、その他の自然条件等というのは同じでなければなりません。
今まで晴れていたのに、ルアーのサイズを大きくした直後から雨が降り出した
というのであれば、果たしてルアーのサイズを大きくしたから釣れたのか、天候の変化によって捕食が誘発されたのか…
魚に聞く以外に知る術はありません。
それにもかかわらず、「ルアーのサイズを大きくした『から』釣れた」と特定してしまうのは、複数の可能性のうちの一つの可能性を恣意的に取り上げているにすぎません。
「ルアーのサイズを大きくしたから釣れた」というパターンを「いくつか考えられる可能性のうちの一つ」としてクローズアップすることは何の問題もありません。
むしろ、アプローチ方法の一つとして釣りの幅を広げてくれることになります。
でも、これが『答え』であるかのようにパターン化してしまうと、ほかのパターンの可能性を排除してしまうことになります。
そうすると、結果として、釣りの幅を大きく狭めることになってしまいます。
ビギナーの頃に注意すべきこと
って思ったそこのあなた。
それ、正解です。
「ベイトが〇〇のときはルアーは大きめがいい」
とか
「ベイトが△△のときは××カラーがよく釣れる」
なんてのは、ほとんどの場合、釣れた可能性の一つを(恣意的に)ピックアップして作り上げられたパターンにすぎません。
というべきか…
そんなことはありません。
ルアーフィッシングの楽しみ方は人それぞれあります。
そのルアーフィッシングの面白さの1つとして
数ある選択肢の中から状況にあったアプローチ方法を模索しながらターゲットに迫っていく
ということが挙げられます。
とか
とか
というように、その場その場の状況に応じていろんなアプローチ方法を考えて迫っていくことはルアーフィッシングの楽しみの一つです。
なので、「ベイトが△△のときは××カラーがよく釣れる」というパターンをアプローチ方法(引き出し)の一つとして理解するときは、とても有益な情報といえます。
ところが、「ベイトがバチのときは××カラー」とパターン化されると、タックルボックスにそのカラーだけしか入れていない、という感じの極端な受け取り方をする釣り人って案外多いんです。
これでは、「ベイトがバチのときは××カラー」というパターンを引き出しの一つにするのではなく、一つの引き出しだけで釣りをしているようなものです。
ベイトがバチであっても、月明かりの明るさ具合や水の濁り具合が違えば、ヒットパターンになるカラーが違うってことだって普通にありえます。
あるいは、バチが流れている深さが違えば月明かりの届き方も変わるので、全然違うカラーがヒットパターンになるかもしれません。
プロアングラーやメディアが定立するようなパターンは、(おそらく)いくつか考えられる『釣れる理由』『釣れた理由』の一つにすぎません。
なので、『パターン』と呼ばれる釣り方に傾倒しないように注意しなければなりません。
提唱された『パターン』を『答え』として受け止めるのではなく、『選択肢の一つ』として自分の引き出しのうちの一つにすれば、釣りの幅は大きく広がっていきます。
論理的に思考することの重要性
ルアーフィッシング業界では
というときでも、平然と
って感じで語られることがあります。
理屈を考えれば
という場合でも、平然とパターン化されて、それが独り歩きすることもあります。
ただ、これが無意味な情報かといえば、そんなことはありません。
その『パターン』を選択肢のうちの一つとして考えるならば、釣りの幅を広げることのできる有益な情報といえます。
でも、その(作られた)パターンに傾倒して、そのパターンだけを追いかけると、途端に釣りの幅が狭くなります。
典型的なのが、バチパターンのときに細身のシンキングペンシルやブラックピンクベリーのルアーだけをタックルボックスに入れているケース。
僕個人的には
と思うこともあります。
でも、その人にとってみれば
っていう決めつけがあるんでしょうが…。
釣りの楽しみ方は人それぞれですが、釣りの幅を広げるために、パターン化されたプロの金言を改めて論理的に思考してみてはいかがでしょうか。
きっと、今まで見えていなかった『パターンの外縁』部分にあるものが見えてくることでしょう。
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