ワンタックルでお手軽に始められる冬のライトゲーム。
しかし、最近はアジングやメバリングというふうに強制的にカテゴライズされたため、タックル選びに迷うようになりました。
特に意見が錯綜(殺伐と)しているのがメインラインです。
このページでは、ワンタックルで始めるライトゲームのライン選び―モノフィラメントライン編(前編)―についてご紹介します。
ライトゲームで使うメインライン
4種類のメインライン
ライトゲームで使われるメインラインの種類は4種類です。
・フロロカーボン
・PE
・エステル
シーバスやショアジギングではPEが100%に近いくらいのシェアを占めています。
でも、ライトゲームの世界では、好みによって4種類の中から選ばれ、使い分けられるのが一般的です。
3種類のモノフィラメントライン
モノフィラメントラインには3種類あります。
・フロロカーボン
・エステル
PE以外はモノフィラメントラインです。
ちなみに、モノフィラメントラインというのは単糸構造の糸のことです。
PEラインは、極細糸を複数本編み込んで糸が作られていて、どちらかといえば一束の糸というイメージです。
これに対して、モノフィラメントラインは最初から一本の糸という構造になっています。
そのため、PEラインに見られるようなライン表面の毛羽立ちは起こりません。
モノフィラメントラインの特性
引っ張ると伸びる
PEの3%前後の伸び率に対して、モノフィラメントラインはどのラインも20%くらいの伸び率があります。
そのため、PEと比べると、モノフィラメントラインは引っ張ると伸びます。
ナイロン・フロロカーボン・エステルで伸び率に違いはあります。
でも、どのラインもPEと比べるとけっこう伸びます。
水に沈む
海水の比重は(気温にもよりますが)1.02です。この比重より軽いラインは海水に浮くことになります。
PEの比重は0.97~0.98といわれており、海水に浮きます。
これに対して、ナイロン・フロロカーボン・エステルはどれも1.10以上の比重です。
そのため、(沈む速度に違いはあれど)どのモノフィラメントラインも水に沈みます。
モノフィラメントライン相互間の特性の違い
伸度の違い
モノフィラメントラインは、PEと比べると、どのラインも伸びます。引っ張ると伸びます。
という順に伸び率が高くなります。
ナイロンが一番伸び率が高いです。
「エステルと比べてナイロンがすごく伸びるのか?」といえば…
ゆっくりと負荷を掛けて限界ギリギリまで引っ張ると、一応、伸び具合には差があります。
比重の違い
モノフィラメントラインは、PEラインと異なり、どのラインも海水より比重が重いので沈みます。
という順に比重が重くなります。
比重は、ラインの水馴染みの良さと言い換えることもできます。
比重が軽いと水馴染み・水中での操作感がやや悪くなります。
価格の違い
モノフィラメントラインは、PEと比べると、どのラインも比較的安価です。
という順に高くなります。圧倒的に安いのがナイロンです。
ただ、フロロカーボンもエステルも価格はかなり安いです。
300m巻が販売されているので、100mあたりの単価はフロロカーボンの方がエステルより安いかな?という程度です。
扱いやすさの違い
しなやかでライントラブルが少なく扱いやすいのはナイロンです。
という順に扱いにくくなります。
エステルラインは、ショックリーダーの使用を推奨される点でも、やや扱いが面倒なラインといえます。
伸度は選択基準としてあまり機能しない
ワンタックルでライトゲームを楽しむために、どのラインを選べばいいのか?
…ということですが、まずライン選びの基準としてほとんど機能しないのがラインの伸び率です。
伸び率は感度に影響するが…
ラインの伸び率というのは、ラインの感度に直結する特性です。
そのため、ラインの伸び率から「ナイロン△」とか「エステル◎」という感じで、いい加減に評価されがちです。
ただ、この紋切り型の評価は、かなり「結論ありき」という印象を受けます。
大きなアタリはどのラインでもわかる
まず、大きなアタリというのは、どんなラインを使ってもわかります。
たしかに、ラインの伸度の違いよって手元に伝わるアタリの鋭さが変わります。
たとえば、PEラインでは10の鋭さで手元に伝わるアタリが、エステルでは4くらいまで鈍化します(イメージです)。
じゃあ、ナイロンとフロロカーボンはどうかといえば、フロロカーボンが3.7で、ナイロンが3.3という感じ(あくまでイメージです)。
PEとモノフィラメントではかなり違いがあります。
でも、モノフィラメント同士で比べると、大きなアタリを感じ取るのにそれほど違いはありません。
ナイロンが「手元に伝わるアタリの鋭さがやや鈍いかな?」というくらい。
そして、一番大切なのが「どのモノフィラメントラインでもアタリはわかる(伝わる)」ということです。
アタリが小さくなればなるほど、どのラインも変わらない
と誤解する人もおられます。
しかし、アタリというのは小さくなればなるほど、そもそも「どのラインも伸びにくくなる」というのが現実です。
当たり前の話ですが、ラインというのは、ラインが伸びる程度の負荷が掛かって初めて伸びます。
ラインを触ったりつまんだりするだけで伸びるわけではありません。
そのため、アタリ(負荷)が小さければ小さいほど、どのラインも伸びにくくなるので、それほど違いはありません。
初期伸度はエステルが低いものの…
ラインの伸び率を表すときの指標として『初期伸度』というものがあります。
負荷が掛かって最初にラインが伸び始める率です。
たとえば、「ラインを5%伸ばすのに何cNの荷重が必要か?」という感じの指標です。
ラインを5%伸ばすのに大きな荷重が必要なほど、そのラインは伸びにくい(=感度がいい)ということです。
この初期伸度に関していえば、フロロカーボンよりもはるかにエステルのほうが低伸度です。
なので、ナイロンやフロロでは伸び始める強さのアタリでも、エステルは伸びない…ということも有り得ます。
ただ、初期伸度というのはあくまで伸び始めの状態の問題です。
つまり、ラインがあまり伸びていない状態の問題です。
どのラインもあまり伸びていない状態であれば、どのラインでもアタリはわかります。
手元に伝わるアタリの鋭さにわずかに違いがある程度にすぎません。
ライトゲー厶用のロッドはティップが柔らかい
ラインの伸び率の差を感じにくくさせる要因の一つに、ライトゲーム用のロッドティップの柔らかさがあります。
ライトゲーム用のロッドには、ソリッドティップと呼ばれる非常に細くて食い込みの良いモデルがあります。
また、ソリッドティップでなくても、ライトゲーム用のロッドの多くは竿先が細く、アタリに対する追従性が良くなっています。
その反面、ロッドティップの追従性が良く、曲がりやすいほど、ラインは伸びにくくなります。
防寒グローブをすると違いがわかりにくい
伸び率の差によるアタリの違いをさらに鈍化させるのが防寒グローブの存在です。
防寒グローブをしていると、どのラインでも、手元に伝わるアタリの鋭さがスポイルされてしまいます。
その結果、伸度の違いによるアタリの取りやすさはほとんど意味がなくなります。
アタリの鋭さは違うが、どのラインでもアタリはわかる
以前、アジングを特集している釣りの雑誌で
という説明を読んだことがあります。
理屈ではあり得る話です。
ただ、ラインの伸度の差から考えても、おそらく0.0●秒という世界の話でしょう。
そこまでいくと、もはやレースの世界の話になってきます。
そういう世界を体感したい人はチャレンジしてみるといいでしょう。
でも、冬のライトゲームをエンジョイしたい一般アングラーは、それほど気にする必要はありません。
でも、どのラインでもアタリはわかる。
これはしっかりと認識しておきましょう。
ラインの伸度はそれほど気にしなくていい
ライトゲームは繊細な釣りゆえに、やたらと『感度』がクローズアップされます。
猫も杓子も感度、感度、感度、感度、感度…
感度を追求することは悪いことではありません。
でも、行き過ぎた感度至上主義は釣りが息苦しくなるだけです。
低伸度だから高感度
ラインだけを考えると、確かにそのとおりです。
でも、数字上は大きな違いがあっても、それが数字どおりに体感できなければ、それほど気にする必要はありません。
また、タックル全体や装備品まで含めて考えると、ラインの伸び率の違いによる感度の差をスポイルするファクターもいくつか存在しています。
ライトゲーム用のラインを選ぶときには、伸度という数字に振り回されるよりも、「体感でどうなのか?」ということを大切にした方が楽しく釣りができます。
後編へ続く