僕は子どもの頃に親父に釣りを教わりました。
そのときに親父に教えられた知識の中には、いま思えば『それ、おかしくね?』ってこともたくさんあります。
でも、30年以上前に教えられた知識の中には、いまだに当然のこととして実践しているものもあります。
それが【ドラグ設定】。
僕が子どもの頃は
『ドラグは少し強めに設定して、スズキを寄せてくるときに状況に合わせて強弱を微調整する』
ってことがメディアでも常識的に言われていました。
いまの釣りメディアは、基本は『宣伝』で、付随的に(宣伝に反しない内容で)釣りの知識を伝えるって感じ。
最近は当たり前のことを当たり前として伝えるメディアが少なくなったので、
ってことを平気で実践しているアングラーもいます。
その一つが先にも挙げたドラグ設定。
『アワセたときにシーバスのアタリを弾いてしまう』って理由でドラグをユルユルに設定しているアングラーをときどき見かけます。
…が、それはシーバスフィッシングにおいては間違っています。
古今変わらずね(笑
間違っているかどうかはともかくとして…スタンダードなドラグ設定方法とはいえません。
そこで、このページではフッキングとドラグ設定についてご紹介します。
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アタリを弾く理由の誤解
シーバスフィッシングをしていてシーバスのアタリを弾いてしまう理由は様々です。
・シーバスの食い気がなくてバイトが浅い
・じゃれてルアーにアタックしてきただけで食う気がない
・ルアーが口に入っていない
・アワセが早い(遅い)
・アワセが浅い
など。
きちんと分析すると、他にももっといろんな理由が考えられるでしょう。
アタリを弾く理由は様々なのに、ドラグ設定をユルユルにするアングラーの考えるロジックはほぼ決まっています。
↓
ドラグの設定が強いとアタリを弾く
↓
ドラグ設定を緩くして小さいアタリを乗せる
というロジックです。
シーバスのアタリを弾く理由は様々考えられるのに『バイトが浅い』ということに限定して対処している点に誤解があります。
フッキングに関する誤解
ドラグゆるゆるアングラーのもう一つの誤解にフッキングに関する誤解があります。
ドラグゆるゆるアングラーのほぼすべてのアングラーが
アワセたときに少しドラグが出るくらいに弱く設定すればシーバスの小さいアタリを弾かずにフッキングできる
と誤解しています。
これがフッキングに関する誤解です。
その誤解の根本には「小さい力でもフッキングできる」という勘違いがあります。
そもそもドラグをガチガチに締めて思い切りフッキングしたときに、シーバス(対象魚)にどの程度の力が加わっているかご存知でしょうか?
アングラーがどれだけ力いっぱいフッキングした(アワセた)ところで、シーバスロッドで伝わるフッキング力ってせいぜい1~2kg程度です。
つまり、渾身の力でシーバスロッドをあおって鬼アワセしても、2リットルのペットボトルが持ち上がるかどうかって程度の力しか伝わりません。
これについてはYoutubeに良動画がアップロードされています。
多くのシーバスアングラーがご存知のブルーブルー代表・村岡昌憲氏です。
ブルーブルーのルアーもだいたいは認知しています。
このウェブサイトでこの動画が登場するのは2回目。
この動画は『フッキングの力は思ったほど伝わらない』ってことを理解するうえで大変参考になる動画です。
ロッドは曲がるしラインも伸びるので、どれだけ力いっぱいアワセても自分の思っているほどフッキングのパワーは魚に伝わりません。
昔はこういうことが釣り雑誌に当たり前のように書いてありました。
今では釣り雑誌が参考書ではなくなってしまったため、こういう情報を釣り雑誌から得ることが難しくなっています。
その反面、フィッシングショーに行かなくてもYoutubeなどで簡単に情報を得ることができるようになりました。
とはいえ、媒体の数が限られていた昔と違って媒体で溢れている現在では、村岡氏のアップした良動画に出会うことが難しいという現代ならではの問題もあります。
この参考動画を前提にドラグゆるゆるアングラーのフッキングを検討すると
ドラグゆるゆるセッティングだと鬼アワセしてもフッキングの力は伝わらない
ってことです。
そもそもフッキングにおいてはパワーを伝えるという行為は自分が思っているほど簡単ではありません。
それに加えて、ドラグまでユルユルということになると、ロッドを硬くしようがロッドを短くしようが、ドラグが滑ってしまってパワーは伝わりません。
つまり
ということ。
ドラグゆるゆるアングラーのロジックでは「バイトを弾かない=魚が乗る」ってことかもしれませんが、そこはイコールではありません(笑
ドラグ設定が緩いと、バイトを弾く弾かないという問題とは別次元の、そもそもフッキングしにくい(魚が乗りにくい)という問題が起こってしまいます。
アタリを弾く理由の本質
ここからは個人的な考えです。
シーバスのアタリを弾く理由がいくつも考えられるとして、僕がどの理由を中心に考えているかといえば
ルアーが魚の口に入っていない
ってことです。
これも昔からよく語られることですが、シーバスのような吸い込み系の捕食方法のフィッシュイーターの場合、ルアーのトリプルフックが邪魔をしてシーバスの口の中までルアーが入りにくいそうです。
シーバスが本物のベイトフィッシュを捕食するときは、ベイトを吸い込んでしまえば口の中にスッポリ入ります。別にベイトに針が付いているわけではないの。
でも、ルアーを捕食したときは、口の中にルアーがスッポリ入る前にトリプルフックが口の周りに引っ掛かってルアーが口の中に入りません(あるいは入りにくい)。
だから釣れた魚をみると、ほとんどは口の外側にルアーが掛かっています。
バイブレーションのような小さいルアーであれば丸のみされることも多いです。
でもミノーやシンペンなんかだと9cm、7cmクラスのルアーでもシーバスの口の外側に掛かることが圧倒的に多いです。
圧倒的に多いです(二度目)。
これは何も、一度口の中に収められたルアーがアワセとともに口の外側に飛び出てきて口の外側に掛かっているのではありません。
多くの場合、シーバスがルアーを吸い込んだときに初めから口の中に入ってないと考えられます。
なので、シーバスの食い気があったとしても、基本的にルアーはシーバスの口の中に入りにくいものなのです。
ドラグ設定の考え方
そこで、最初に戻ってドラグの設定方法を考えます。
まず、釣りにおいてロッドをあおるフッキングは自分の想像しているほどは力が伝わりません。
ロッドは曲がるし、たとえ低伸度のPEであってもラインは伸びます。
アワセたときにロッドをあおることのできるロッドの移動距離(幅)を考えれば、60cmって決して小さくはありません。
30m先でフッキングすれば1m近く(90cm前後)もPEは伸びるのです。
30m先でフッキングすることは決して珍しくはないので、アワセた瞬間はPEであっても1m程度は伸びると考えておいた方が良いでしょう。
なので、フッキングでしっかり力を伝えるためにはドラグは少し強めに設定します。
力が伝わりにくいはずのフッキングにおいてドラグが「ズズ~ッ」って出るようでは、ドラグ設定が弱いです。
じゃあ、食い気のない魚のアタリをどうやって拾ったらいいか?ってことが次に問題になります。
基本的にはそれは無視していいというのが僕の考えです。
というのも、食い気があろうがなかろうが魚の口にルアーがスッポリ入るのって難しいんです。
魚の口にスッポリとルアーを収めるのには運が必要です。
運が関係する次元の問題なので、(開き直って最初から)
ルアーは魚の口の周りに当たってしまう可能性が高い
ということを前提に対処します。
つまり、「食い気がない」とか「魚がじゃれてくるだけ」とか「魚が小さい」という理由でアワセてもノラないという問題は、基本的には無視するようにしています。
そういう状況では初めからフッキングしにくいものだと思っています。
最後に、途中でドラグ設定を弄ることはないのか?ということも問題になります。
これについては、僕の場合、魚を寄せてくるまではドラグ設定はそのままです。
取り込みにタモを使う必要があるときは、足元まで魚を寄せたあとにほんの少しだけドラグを緩めます。
タモ入れにもたつくくともあるし、タモ入れにもたついている間に足元で急に魚が走ることもあります。
そういう状況でも魚の動きに柔軟に対応できるように足元まで魚を寄せたあとに少しドラグを緩めます。
適切なドラグセッティングでしっかりとフッキング!
どこから広まったのかわかりませんが、シーバス業界では
アタリを弾くときはドラグをユルユルにする
という都市伝説があります。
だからドラグを緩くするんだ。
という理屈ですが…
基本的にはドラグが緩いとフッキングできません。
鬼アワセしたとしても、フッキングの力というのはアングラーが思っているほど魚には伝わりません。
エギングみたいにバラシの少ない釣りにおいて、シャクった瞬間にイカが乗ったときの身切れを防ぐためにドラグを緩く設定するのは理由があります。
でもシーバスフィッシングはエギングとは違います。
わりとしっかりフッキングしてもバレるときはバレるのがシーバスフィッシングです。
なので、かえってフッキングが甘くなるような(ユルユル)設定はほとんど意味はありません。
力が伝わりにくいフッキングにおいてドラグが出るように設定してしまうと、魚を弾く・弾かないという問題ではなく、『フッキングできない(しにくい)』という別の問題が生まれます。
しかも、アタリを弾く大きな理由の一つとして「そもそも魚の口にルアーが入りにくい」ことが挙げられることも考慮すると、小さいアタリを弾くことにそれほど神経質になる必要はありません。
きちんとアワセの力が伝わるようにドラグを設定して、掛けられる魚をしっかりとフッキングできるように心がけましょう。