【初心者向け】なぜ『フロロが強い』という誤解が生まれたのか?

ラインとフックにはうるさいショーカラです。釣りを始めたばかりの入門者の頃に最も誤解していることのうちの一つに、「ナイロンより フロロ が 強い 」という誤解があります。

今の釣り業界の宣伝広告の風潮から考えれば、入門者が誤解するのも理解できます。これに関してはメディアの宣伝方法にも問題があると思っています。

ただ、そもそもなぜこんな誤った伝えられ方をしてるのか…と考えると、ちょっとよくわからないところもあります。

それくらいフロロは「強さの象徴」のように説明されます。

このページでは、フロロ最強説が生まれた背景をご紹介します。

もともとの釣り糸は?

現在はほぼレジャーとして考えられている『釣り』ですが、もともと『釣り』というの人類が日常生活を送るうえで切っても切れない作業として発展してきました。

想像するのは難しくないですが『釣り』はもともと『漁』の原始的な形態です。

そのため、縄文時代にはすでに動物の骨を使って現在の釣り針の原型になるものが作られていました(歴史の教科書で見たことあるかもしれません)。

じゃあ釣り糸は…といえば、出土されたものがほぼないそうです。

でも、釣り針を使うなら当然に釣り糸も必要になります。

なので、現在では、「釣り糸」は植物のツルを使ったり植物の繊維を縒ったものを使っていたため、長い年月をかけて分解されてしまって残っていないと考えられているそうです。

ナイロンラインの登場

ナイロンラインの登場

人類史においては古代から長らく植物や蚕糸を撚った撚糸が主流でしたが、1930年代になってアメリカでポリアミド繊維を用いた単繊維(モノフィラメント)ラインが開発されました。

これがナイロンラインの誕生です。

ナイロンラインは製造コストが安価で伸縮性も良く、非常に扱いやすかったため、1940~50年代にはルアーフィッシング業界にライン革命をもたらしたそうです。

もちろん、僕は当時の状況には立ち会っていませんが、昔はこういう面白い話(興味深い話)が釣り雑誌にけっこう載っていました。

ショーカラ
最近の釣り雑誌はほぼ商品やメーカーの宣伝で埋め尽くされていますね

ナイロンラインの弱点

古代から使われていた撚糸に対してライン革命を起こしたナイロンモノフィラメントですが、ナイロンが登場した当時からナイロンの弱点として次のようなことが指摘されていました。

傷に弱い(耐摩耗性能が低い)
吸水する
紫外線により劣化する

特に(古くから存在するルアーフィッシングである)バスフィッシングは、ストラクチャーを釣るスタイルということもあって、ナイロンラインの耐摩耗性の弱さはネックになっていたそうです。

フロロカーボンの登場

フロロカーボンの登場

ナイロンが耐摩耗性の向上に尽力している最中、1970年代の日本において、ナイロン以外の素材のモノフィラメントラインが誕生しました。

これが新素材フロロカーボンです。

ポリフッ化ビニリデンという素材を用いて世界で初めてクレハがフロロカーボンの釣糸『シーガー』を開発・リリースしました。

現在でも「フロロカーボンといえばクレハ!」といわれていますが、このような歴史に由来します。

ショーカラ
奥様たちにはクレハといえばクレハカットの『クレラップ』の方が馴染みがあるかもしれませんが、釣り人にとってはクレハ=フロロです

フロロカーボンはナイロンと違ってラインの表面に傷がつきにくく、耐摩耗性に非常に優れたラインとして世の中に登場しました。

当時を知る釣具屋の店長の話によれば、1970年代後半ぐらいには『強いライン=フロロ』という図式が出来あがっていたそうです。

フロロカーボンは耐摩耗性・吸水性というナイロンラインの弱点を克服するラインとして1970年代に登場し、現在に至るまで『擦れに強いラインの象徴』として釣り業界に君臨しています。

フロロカーボンの用途

現在ではルアーフィッシングのメインラインとしても幅広く使われているフロロですが、素材の価格がナイロンより高価というデメリットがあります。

そのため、餌釣りでは今でもメインラインに安価で扱いやすいナイロンを使用して、魚に近い場所(ハリス・リーダー)にはフロロカーボンを使用するというのが基本中の基本です。

ナイロンの進化と不遇

極・耐摩耗性の実現

世界に初めて登場した当時は、安価で扱いやすいため、釣り業界に革命を起こしたナイロンライン。

しかし、当時のナイロンラインの耐摩耗性は問題視されるレベルだったようで、各メーカーはナイロンラインの耐摩耗性を向上させることに尽力しました。

ところが、1970年代になって彗星のごとく現れたフロロカーボンという新素材がモノフィラメントラインの耐摩耗性の認識を一変させるものであったため、フロロカーボンは『擦れに強いラインの象徴』としてその地位を確固たるものにしました。

一方、耐摩耗性の向上を目指したナイロンも、技術の進歩により極端に耐摩耗性能の高いラインが登場します。

それがVEPシリーズ(バリバス)やGT-Rシリーズ(サンヨーナイロン)です。

これらのラインは、(サンドペーパーの上をただ擦るだけの)簡易な実験を行った結果、フロロカーボンの耐摩耗性をはるかに上回るパフォーマンスを発揮しました。

条件や実験方法が異なれば違った結果になる可能性はありますが…

少なくともこれらのナイロンは「擦れに弱い」という印象はまったくなく、どちらかといえば(フロロとの比較は抜きにして)「擦れにとてつもなく強い」という印象を与えるラインたちでした。

関連記事

メインラインとしてもショックリーダーとしても使用されるナイロンとフロロカーボンの2種類のライン。どちらも優れたラインなので適材適所で使用するのがベストですが、現在のメディアの趨勢によれば、擦れ(スレ)・根ズレに関してはほとんどの場合に[…]

ナイロンの不遇

問題は、これほど擦れに強いナイロンがあるにもかかわらず、なぜ今でも「ナイロンは擦れに弱い」とか「フロロの方が擦れに強い」と言われるのか?

これにはいろんな要因があるかもしれませんが、僕が感じているのは主に2つ。

1つは「フロロ=強い」という長年築き上げてきた地位(印象)。

フロロカーボンが初めて世に登場した半世紀前は、実際にフロロカーボンはナイロンよりはるかに強い素材でした。

その頃のフロロカーボンに対するイメージが50年経っても釣り業界に根強く残っていることが挙げられます。

もう1つは新素材ではないこと。

フロロが世に登場したときは「ナイロンより強い新素材」という売り文句によって釣り業界に大きなインパクトを与えました。

世界的に初登場の素材であったため、その衝撃は大きかったものと思われます。

でも、ナイロンの場合、いくら極端に耐摩耗性能の高いナイロンが登場したところで、あくまで「ナイロン」です。

フロロの登場によってもともと「ナイロン=弱い」というイメージが定着してしまっていたため、耐摩耗性に強いナイロンが登場したところで「ようやくナイロンもフロロに近づいた?」程度の認識しかされません。

「ナイロン=弱い」というイメージが定着してしまっているうえに、まったく目新しさのない素材であるため、まさかフロロの耐摩耗性を大きく上回るナイロンラインがあるなんてなかなか想像できなかったのかもしれませんね。

ショーカラ
ザックリいえば
「ナイロンはフロロの耐摩耗性は超えたけど、フロロ=強いというイメージを超えられていない」
といった感じ

これこそが、ナイロンが置かれた不遇であり、いまでも残るフロロ最強説という(今となっては)誤解を生み出して要因と考えています。

どちらも耐摩耗性は十分

このウェブサイトでも何度か記事にしているとおり、現在のナイロンの耐摩耗性能はフロロと比べてもまったく遜色ありません。

それどころか、耐摩耗ショックリーダーVEPGT-Rのような耐摩耗処理がしてあるナイロンラインの耐摩耗性能は強烈で、ペーパーで擦り切ろうと思ってもこちらが擦り切る作業が面倒になるくらい圧倒的な耐摩耗性能を有しています。

他方で、VEPGT-Rほどの耐摩耗性能ではないナイロンは、耐摩耗性能そのものはフロロと遜色ないですが、ラインの表面が傷つきやすいのでラインの傷に抵抗が引っ掛かって不意に呆気なくラインが切れることがあります。

フロロカーボンはといえば、VEPやGT-Rほどの耐摩耗性能はありませんが、安定した耐摩耗性能を発揮します。耐摩耗処理のないナイロンのように傷口に引っ掛かって不意に呆気なく切れるということはありません。

それぞれのラインに耐摩耗性能の違いはあるにしても、どちらも充分に強いといえます。

耐摩耗性以外の特性で使い分ける

確かに40~50年前はナイロンの耐摩耗性能は低く、フロロカーボンの耐摩耗性は高かったといえます。

その点では40~50年前は『フロロは強い』というのは誤解でもなんでもありません。

そのとおりでした。

でも、それも今となっては半世紀前の昔話です。

現在のフィッシングシーンにおいて、いまのナイロンの耐摩耗性能がフロロより弱くて困るってことはまず考えられません。

ナイロンの耐摩耗性能が不安だからフロロを使うっていう人は、おそらく40~50年前のナイロンを使っている釣り人です。

いまのナイロンとフロロを耐摩耗性能や根ズレ対策で使い分ける意味はほとんどありません。

でも、ナイロンとフロロでは耐摩耗性以外の特性の違いは今でも存在しています。

しなやか・扱いやすい
伸びやすい
比重が軽い
太い・硬い・張りがある
ナイロンより伸びにくい
比重が重い
あまり吸水しない
水中で見えにくい

このような特性の違いに着目して使い分ける方が賢明な使い分けといえるでしょう。

昔話を否定する必要はまったくありませんが、昔話は昔話として聞いておけばOKです。

ショーカラ
よろしければ↓コチラもどうぞ